第12話 ご近所の薔薇

文字数 903文字

 薔薇を育ててみようかなと思っています。

 短かった梅雨、いきなり真夏のような暑さ、そして戻り梅雨のような雨。私の町では早朝から雨が降っていた。

『ウソっ⁉︎』

 昨日までカラカラの夏日だったので、裏切られた気がした。早朝ウォーキングする予定だったのに……今日は挿し木用の薔薇をご近所さんに貰いに行く日。何だか出鼻をくじかれた感じ。お昼ごろ取りに行く予定だったので、延期になるかもなぁと思いつつ身支度をした。雨はどんどん強くなり、出掛ける気が失せ、もはや

『延期って言ってくれ〜』

と願ったが律儀にも中止の連絡は来ず、土砂降りになった雨の中、車に乗った。1分ほどで到着。雨の中、庭に出て枝を切ってもらうことが本当に申し訳なく思った。

『いただいたら、長居せずに帰ろう』

そう思いながら、ピンポ〜ン♪

 取り敢えず家の中へと招かれ、お茶をいただく。外は相変わらずの土砂降り。ご近所さんは私が自治会長をしていたときの副会長であり、ハーバリウムの生徒さんでもある。ここまで書けばご想像に難くないと思うが、あっという間に1時間が過ぎた。

 話題の1つは、これから購入しようとしている革財布のこと。革の触り心地に癒され、尚且つカードが16枚も入り、コンパクトな形。ネットで見せてもらいながら、色はどう?大きさはどう?などと談笑。いつもの私と違って凄く、女性らしいやりとりに何だかホッコリした気分。この人の庭に薔薇があるのは、とても自然なことだとしみじみ思った。この癒される空気感を薔薇の枝と共にいただけたら……

 雨は相変わらず降っていて止む気配がない。昼ご飯の時間はとうに過ぎていた。

「ランチに行かない?前言ってたあのお店」

この流れも女子らしい。気になっていた店なので即同意。こちらも車で1分ほど。でも濡れた。車の乗り降りで。食べながら2時間。話題は相続問題。今度はリアルな話が続く。最後はご近所さんの相続された土地の場所まで。私と違い生まれたころから、ずっとこの地に住む人なので、時々町の噂を提供してくれる。

 帰り際にパチンとハサミを1度だけ入れ、蕾も付いた立派な枝をいただいた。

 3分割して挿し木しました。上手く根付くといいなぁ。
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