第8話 下の子の料理

文字数 827文字

 2泊3日の帰省なんてあっと言う間です。

 下の子が帰京した。初日は早朝に着いて、しばらく転職した会社のことや日常のことをアレコレと(せき)を切ったようにお喋り。話し終えると電池が切れたように昼寝していた。20代後半。社会人として数年経つが、まだまだ幼く思うのはこんなときだ。

 社会人になりたてのころは、ひとり暮らしが初めて、しかも勤務地が新宿、さらに仕事の一環として国家試験を取らなければいけない、という多くの環境の変化をこなさなければならなかった。帰宅時間が終電になったり、休みがまともに貰えなかったり……。それでも2年ほど経つと、仕事内容は相変わらずハードだったが、気持ちにゆとりが出来たのか帰省毎に

「何か、美味しいもの作るわ」

とレシピを検索しては、手の込んだ晩御飯を作ってくれるようになった。普段は全く自炊をしない。疲れてそれどころではないのと、キッチン用品が揃っていないのが理由だと言った。

 下の子が料理をするようになったのは、大学生のころ。サークルに入っていなかったので、授業が終わったら寄り道もそこそこに家に帰ってきていた。スマホ片手にゴロゴロする日もあったが、あるときからお菓子作りにハマり、流行りの物や珍しい物を作っては食べさせてくれた。大学を卒業し、入社するまでの期間はキッチンに立つことが多かった。もう、このころには晩御飯の御菜(おかず)になるようなメニューを作るようになっていた。一生懸命作る姿は『今まで、ありがとう』と言ってくれたようにも見えた。もちろん面と向かって言われたことは無いが。

 今回は初日に韓国料理のキンパとヤンニョムチキン、チーズボール。2日目はタラのムニエルと蓮根チップをアクセントにした数種の野菜のグリーンサラダ、トマトのリゾット。いずれももちろん美味しかった。料理を作るのが好きだとは思うが、それだけでは無い気がしてならない。今回も凄く癒された気持ちで舌鼓を打った。

 帰りは昼間のバスでした。海老名辺りは大渋滞だったそうです。
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