ペンギンに導かれし未来

文字数 2,471文字

 朝から頭がぼんやりしている。こんなに頭がボーッとするのは久しぶりだ。残業で疲れたのか、ストレスが溜まっているのか。

「おはよう、朝だよ!」
 ペンギンのプルルが、いつものように私の脇で口笛を吹いている。
「うるさいなぁ...」
 ふと前を見ると、ペンギンが人間の姿に変身していた。びっくり仰天! こんな変な夢を見ているのかと思ったら、目が覚めた。
「変な夢だったな...」
 リビングに出て、いつもの朝食を食べ始める。その時、ペンギンがやって来てパンをひったくった。
「何してるんだ! パンを返せよ!」
 ペンギンはパンをほおばりながら、私を見上げて口笛を吹いている。まさか夢の続きなのか?
「おい、俺についてこい」
 私を指さして、ペンギンが口をきいた。人語を話すペンギンに驚いてしまう。
「え、うん...」
 ペンギンについて行くと、近所の廃棄された実験施設に到着した。そこで初めて、ペンギンが念力を使えるエスパーペンギンで、私に協力を求めていることを知ったのだった。

「じゃあ、俺の力を見せてやる」
 ペンギンは部屋の中にある物を次々と空中に浮かせていく。テーブル、椅子、本棚――。
「すごい! こんな力があるなんて」
 驚く私を尻目に、ペンギンは満足げに口笛を吹き続ける。
「ほら、こういうことができるんだ。この力を使って、世界征服をするつもりなんだ」
「えっ! そんなひどいことしないでくれよ」
「だったらお前に協力してほしいんだ。俺一人じゃ生きるのが難しいんだ」
 ペンギンは私を見つめながら、力を解いて部屋の中の物を元の位置に戻していった。
「分かったよ。僕が力になるから、楽しく暮らせるように頑張ろう」
 ペンギンは喜んで、大きな口笛を吹いた。こうして、ペンギンとの奇妙な共同生活が始まったのだった。

  それからというもの、ペンギンと一緒に過ごす時間が増えていった。
 ペンギンは自分の力を使って、いろいろなことをしてみせるのが好きだ。部屋中を浮遊させたり、私の姿をペンギンに変えたり。
「ほら、こんなこともできるんだぜ」
 鏡の中のペンギン姿の自分に驚く私を見て、ペンギンはくくくと笑う。
「もういいってば! 元に戻してくれ」
 慌てて止めると、ペンギンは「分かったよ」と口笛を吹きながら、私の姿を人間に戻してくれた。

 そのうち、ペンギンの力で遊ぶのが日課になっていった。楽しい時間だった。
 ところが、ある日のこと。私が仕事から帰ってきたら、ペンギンが異様に静かだった。
「どうしたんだい?」
 尋ねると、ペンギンは悲しそうに答えた。
「力が衰えてきた。もうこれまでだ...」
  急速に力を失っていくペンギンを見て、私は胸が痛んだ。
「大丈夫か? 何とかできないかな」
「もうダメだ...。でも最期の力を使って、お前にプレゼントをあげる」
 ペンギンの体が光りだす。その瞬間、私の頭にアイデアがひらめいた。
「このアイデアを形にすれば、世界を変えられる!」
「本当かい? よかった...」
 ペンギンはほっとした表情で微笑む。私はそのアイデアを即座に実行に移した。

 一週間後、世界中で話題になった私の発明品発表の舞台裏で、ペンギンと抱き合い涙を流したことは内緒だ。
「ありがとう、ペンギン。君がいなかったらここまで来れなかった」
「うん...。よかった...」
 そう言って力尽きたペンギンを見つめながら、これからの人生を想像するのだった。

  それから数年後。世界的に有名になった発明家として、私は多忙な日々を送っている。
 ある日のこと。仕事からの帰り道、ふと立ち寄った水族館で、ちょうどアザラシのショーが行われていた。
「お客さんの中からボランティアを募集します!」
 人懐っこいアザラシについ誘われ、私はその場に上がった。するとアザラシは私の顔をじっと見つめた。
「ん? どこかで見たことあるような...」アザラシが人語を話した。
 しゃべるアザラシに驚いたが、同時に懐かしい記憶がよみがえる。あの日のペンギンの姿が目に浮かぶ。
「あのさ、ペンギンって呼ばれてたよね」
 アザラシがそう言った。
「えっ」
 驚いて聞き返すと、アザラシは楽しそうにクルクルと回りながらしゃべり出す。
「前世はペンギンだったんだ。今はアザラシとして海で泳いでる。あの頃優しくしてくれてありがとう!」
 そう言って、アザラシに抱きつかれた。胸がいっぱいになる思いだった。

  アザラシショーが終わり、水族館を後にする。帰り道、ふと立ち止まる。
「まさか、本当に前世があるなんて」
 考え込んでいると、バッグの中からスマートフォンが浮かび上がってきた。
「わかったでしょ。ほら、こういうこともできるんだ」
 驚いて画面を見ると、ペンギンの絵文字が口笛を鳴らしている。
「えっ、まさか! どうして」
「ほらほら、君にはこんなこともできるんだから。残業しないで早く帰ってこいよ」
 慌てて周囲を見回すが、誰もいない。ふと我に返ると、バッグの中のスマホは元の位置にある。

「ふぅ...気のせいか」
 ホッとして歩き出すが、浮かび上がった疑問が頭をよぎる。
「ちょっと待てよ、スマホを浮かせる念力なんて、僕にあるわけないじゃん!」
  立ち止まり、後ろを振り返る。だが誰もいない。
「気のせいだったのか...」と一瞬思ったが、いや違う。あのペンギンの姿は確かに見たはずだ。
 ゆっくりと歩き出しながら、あの日の出来事を振り返る。

 ペンギンとの思い出...。必死だった頃の自分を想い起こす。
 そうか、あの頃から私は念力を使えていたのかもしれない。たぶん自分で気づかずに。
 振り返れば、仕事で行き詰った時、ふと閃いたアイデアを形にできたことが何度もあった。
 あれは全て、ペンギンがくれた力だったのかもしれない。

「ありがとう、ペンギン」
 そうつぶやき、空に向かって微笑んだ。
 あの日以来、念力の力は自分の中に眠っていたのだ。そして必要な時に目覚め、可能性を切り開いてくれる。
 きっとこれからも、ペンギンは自分を見守ってくれている。


(使用AI:Claude 2.1)


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