時計の針は知っていた

文字数 1,364文字

 僕は16歳の普通の高校生だった。名前は慎也。日常はいつも通りの学校生活、友達との雑談、テストの緊張感に包まれている。しかし、ある日の放課後を境に、僕の日常は突如として変わり始めた。

「慎也、これ見てよ。古い時計だけど、なんか変だよね」
 一週間前に転校してきて友達になったばかりの春人が、校舎裏で拾ったという時計を差し出した。それは古びた懐中時計で、針が反対向きに動いていた。
「おかしいな、壊れてるのかな?」
 僕は首を傾げながら時計を覗き込んだ。
「時計の針を進めてみようよ」
 春人は意味ありげに微笑んだ。
 その表情を少し不思議に思いながらも、僕は針を進めた。

 すると、突然目の前が真っ白になった。気がつくと、僕は見知らぬ部屋にいた。壁には古い時代の懐かしいポスターが貼ってあり、布団が乱雑に敷かれていた。そして驚いたことに、そこにはもう一人の「僕」がいた。鏡を見るような奇妙な感覚に襲われる。そしてもう一人の僕の手には、僕のと同じ古びた懐中時計が握られていた。
「お、おい、お前は誰だ?」
 もう一人の僕が問いかけてきた。声は震えている。
「僕は...慎也。でも、お前も慎也だよね?」
 僕は困惑しながら答えた。
「そうだよ。じゃあ、お前も未来から来たのか?」
 彼は驚愕の表情を浮かべた。

 会話を交わすうちに、僕たちは時計の力で時間を超えたことを理解した。しかし、どうやって元の時間に戻るのか、その方法はわからない。時計の針はもはや動かない。
「どうしよう...」
 僕は焦りを隠せなかった。
「大丈夫、何とかなるさ」
 もう一人の僕は意外にも冷静だった。
 僕たちは部屋中を探し回り、時計にまつわる手掛かりを探した。そして、古い日記を見つけた。日記には僕の字で、時計の秘密と時間を跳躍するリスクが記されていた。
「これだ!」
 僕は叫んだ。
「時計の針を同時に動かせば、元の時間に戻れるかもしれない!」
「じゃあ、やるしかないね」
 もう一人の僕は決意した表情で頷いた。
 僕たちは時計を握りしめ、針を同時に動かす準備をした。息を合わせ、針を進める。すると、再び周囲が白く光り輝き始めた。

 気が付くと、僕は再び校舎裏に立っていた。春人が心配そうな顔をして僕を見ている。
「大丈夫? 一瞬目の前から消えたけど...」
 春人が問いかけてきた。
「ああ、大丈夫だよ。でも、あの時計は...」
 僕が尋ねると、春人は手をズボンのポケットに突っ込みながら、首を横に振った。
「なくなっちゃったみたいだね。でも、おかげで面白い体験ができたんだろ?」
 僕は苦笑いを浮かべながら、春人の言葉に頷いた。

(実験は成功したようだね...)
 春人が小声で独り言のようにそう呟いた。
「え? 実験って?」
「あ、いや、なんでもないよ」
 春人はなんとなくごまかすように、曖昧な笑みを浮かべた。それが少しだけ気になったが、その後、僕たちはいつもの日常へと戻っていった。

 それからというもの、僕はこの時以上に奇妙で不思議な数々の体験をすることになった。それはどうやら、春人の実験と称する行為によるものだと気が付いたのは、もっとずっと後のことだった。
 そして春人という存在が何者であるのか、その目的がなんであるのか、それを明かされた時の衝撃は、今でも忘れられない...。


(使用AI:GPT-4 Boost)


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