ディメンションの彼方

文字数 1,379文字

 私は16歳で名前はリョウ。そう、決して変わった名前ではない。ただ、私の住む世界は、あなたがたの知る地球とはかなり異なる場所なのだ。
 太陽の光が血のように濃い朱色をしているのがまず特徴的だ。そしてこの世界の大気組成は、あなたがたの世界とはまるで違う。ひょっとしたら、最初に目にした時は恐ろしく感じるかもしれない。
 だが私はもうこの空気に慣れっこだ。口から皮膜が出て呼吸をするシステムが当たり前になっているのだから。

「リョウ、今日の研究室はどうするんだ?」
 隣りの友人タクミが、パイプから出た声で尋ねてくる。
「ああ、今から行くよ。準備は済んでる?」
「そりゃあもちろんさ」
 タクミは視聴覚で話しかけてきた。
 このように、私たちの日常の会話は目に見えない通信回線を通して行われる。外の空間では直接会話できないのだ。

 そうか、そうだったな。私たちは地球から最も遠く離れた、とある恒星系の惑星に住んでいるのだった。昔、私たちの先祖は地球を出てこの星に移住することを決意したらしい。それは長い旅を経てのことだったに違いない。
 今の私たちにもその記憶は残されているが、きっと当時の人間には想像もつかなかったであろう自然環境と対峙しなければならなかった。それでも、先人たちは大変な困難を乗り越え、新たな生命体へと進化を遂げることに成功した。
 そうして数千年の時を経て、私たちの住む世界は、目に見えない優れた知的生命体の手によって守られてきた。その感謝の念を忘れてはならない。

「よしリョウ、行くぞ!」
 タクミの方から先に研究室に向けてエネルギーを放った。私もそれに続いて意識を研究室の方に移動させる。ここでは、全ての動作が純粋な思考活動によって行われるのだ。
 物理学、化学、そして生命科学。私たちはありとあらゆる学術分野を極限まで突き詰める。そのためには、時に過酷な精神状態に陥らなければならない。
「おい、リョウ! この論理式を見ろ!」
 タクミの意識が私のそれに反応を及ぼす。私もそれに応じるようにデータを収集・分析し始める。 
 いつの間にか私は、全身が電子の流れそのものになっていた。粒子と波動が行きつ戻りつするその衝撃に、身体は揺らされる。
 そうか、私はここで実験をしているのだ。この世界の自然法則を解き明かすためにはこうするしかない。

「うぉっ、今のはすごかったな!」
 タクミの意識の一部が歓声をあげていた。
「でも、この変動はさらに続くぜ!」
 次なる試行に向け、私たちの意識はパラレルに分岐する。別の時空を体験するというわけだ。
 私は遥か彼方の光を感じ取っていく。その奥にある不可思議な存在の気配が、今にも意識を呑み込もうとしている。
「どうした! リョウ! 意識が乱れているぞ!」
 タクミが私を呼び戻そうとする。
 しかし私はこのまま進化への過程を体験し続けていく。そこに新たな真理が見えてくるのが分かったのだ。

 タクミの声が遠のいていく。私の意識は、やがて驚異の世界へと到達する。その地平には、一つの巨大な星雲が広がっていた。あれは宇宙の起源そのものなのだ。私の意識がそこへと溶け込んでいく。やがて自らの存在すら希薄になり、宇宙と一体化する。
 この世界の全てを知り尽くす時が来た。そう感じた私は、星雲の中へと飛び込んでいった。


(使用AI:Claude 3 Sonnet)


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