夢の中の

文字数 1,057文字

 田舎町の夜明け前の無人駅は、薄暗い蛍光灯の光に照らされていた。誰もいないホームはひっそりと静まり返り、時折吹き抜ける風の音と雨音が、かすかに聞こえてくるぐらいだった。
 夜勤明けの俺は、始発電車を待っていた。雨に濡れた髪を風に揺らめかせながら、暗いホームをじっと見つめていた。

 突然、背後から声が聞こえた。
「和樹?」
 振り返ると、そこには信じられない人物が立っていた。それは、幼馴染の健太だった。

「健太?! なんでこんな所に…?」
 俺は、驚きと喜びを隠せない声で叫んだ。

 健太は、照れくさそうに笑った。
「実は…酔って公園の東屋(あずまや)のベンチで寝ていたら、悪夢にうなされてしまって…目が覚めたら、こんな時間になってて…」

 健太は、夢の内容を語り始めた。夢の中で、彼は怪物に追いかけられていた。逃げ惑う健太の前に、突如現れたヒーローが、怪物を倒してくれたという。

「でも、そのヒーローの顔がよく見えなくて…もしかして…」
 健太は、真剣な顔で俺を見つめた。

 その瞬間、轟音が響き渡り、始発電車が入ってきた。

「もう、こんな時間だ。帰ろう」
 俺は、健太の手を握った。
 健太は、うなずき、俺の手を握り返した。


 俺たちは、始発電車に乗り込んだ。車内はガラガラで、俺たち以外に数人の乗客がいるだけだった。

「ところで、そのヒーローはどんな格好をしていたんだい?」
 俺は、健太に尋ねた。
「うーん…赤いスーツを着ていて、頭には奇妙な形のヘルメットを被っていた…」
 健太は、記憶を辿りながら詳細に答えた。

 その話を聞きながら、俺はあることに気が付いた。

「もしかして…そのヒーローって、…俺?」
 俺は、恐る恐る健太に尋ねた。
 健太は、目を丸くして俺を見つめた。
「えっ?! なんで…?」

 俺は、健太に昨日見た夢の内容を語り始めた。夢の中で、俺は未来から来たタイムトラベラーにもらった力で、健太を助けるヒーローになっていた。

「もしかして…あの夢は、未来の記憶だったのかな?」
 俺は、信じられない気持ちで語った。
 健太は、俺の話を聞き終えると、静かにこう言った。
「…そうかもしれないね」

 電車は駅に到着した。

「ありがとう…和樹。君は、僕のヒーローだよ。未来のことだとしても、今礼を言うよ」
 健太は、優しい声で言った。
 俺は、健太の言葉を聞き、照れながらも嬉しかった。

 雨上がりのまだ暗い早朝、俺たちは駅を出た。駅前のファミレスの看板が眩しく輝いていた。
 あの奇妙な夢は、未来への希望の予兆だったのだろうか? それとも…。
 

 完


(使用AI:Copilot)


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