念力で残業のペンギン使い

文字数 2,551文字

 私は目を閉じて集中していた。事務所の残業が続き、体力も精神力も限界が近づいていた。そんな中で、上司からはさらに大量の資料作成を命じられていた。「もう無理だ」そう思った次の瞬間、不思議なことが起きた。

 机の上のペンギングッズが、突然動き出したのだ。まるで生き物のようにそれらは踊り始めた。驚きのあまり目を疑ったが、間違いなく私の念力で動いているようだった。

「な、なんてことだ!?」
 ペンギンの置物たちは私の思いのままに踊り出し、ひとつの団体になって体を揺らし始めた。それは見事なパフォーマンスで、私は圧倒されずにはいられなかった。

「すごい……! これが念力か。でも、どうしてペンギンなんだ?」

 そう自問しながらも、光景の虜になっていた。ペンギンたちは次々と新しい動作を見せ、まるでショーを行っているかのようだった。疲れも吹き飛び、ただ瞠目(どうもく)していた。

「く、く、くるっ!」
 小さなペンギンの鳴き声が聞こえた。どうやら私に甘えたいようで、(ほの)かな気まずさを感じつつも、その気持ちに応えざるを得なかった。

「はいはい、かわいいかわいい」
 ペンギンたちを撫でながら、私は考え込んだ。この不思議な体験の意味は何だろうか。そしてこの"能力"はいつまで続くのだろうか。

 ペンギンたちのショーは終わり、彼らは再び置物に戻った。しかし、その不思議な体験は私の心に残り続けていた。
「こんな能力、使い道がわからないな」
 私は溜め息をついた。同時に、上司に大量の資料作成を命じられていたことを思い出した。

「ちょっと待ってくれ。もしかしてこの念力を使えば……!」
 ひらめきが頭をよぎった。早速、机の上のペンギンフィギュアに念を送った。すると奇跡が起きた。フィギュアが次々と資料を作りだし、見事な完成品になっていったのだ。

「わーお! すげえ!」
 思わず声が出た。まさか念力でこんなことができるとは。時間にも追われず、効率的に作業を済ませられるのは夢のようだった。

「よーし、これで残業も解決だ!」

 しかし喜びもつかの間。突然、フィギュアが暴れ出し、資料を無造作に散らかし始めたのだ。

「おっ、おい! 何を……?」
 私は慌ててフィギュアを止めようとしたが遅かった。資料の束はもう二度と直せないほど散らばってしまっていた。

「くそっ! なんでこんなことに……」
 落胆したが、同時に啓発もあった。この念力を扱うのは簡単ではないということだ。しかし、うまく制御できれば、可能性は無限に広がる。

「よし、諦めるか! もう一度集中してやってやる!」
 私はフィギュアに向き直り、再び念を送り込んだ。今度は上手く行くはずだ。この念力を使いこなすまでは、ペンギンとの戦いは終わらない。

 そんな私の姿を、誰かが覗いていた。その人物こそ、私の上司だった。

「おい板倉、何をしているんだ?」
 上司の声に驚き、私はフィギュアから手を離した。
「え、え? な、なんでもありません! ただの気分転換ですよ」
 冷や汗が出る。もし本当のことがばれたら、間違いなく馬鹿者扱いされるだろう。

「ふーん、そうか」
 上司の表情は怪しげだった。しかし気づかれてはいない。
「とにかく早く資料を仕上げろよ。時間はそんなにあるまい」
「は、はい。しっかりやります」

 上司が出ていった後、私は再びフィギュアに集中した。だが先ほどよりも、うまく操れなくなっていた。焦りと緊張のせいか、不器用になってしまっていた。

「おい、もっと落ち着け。落ち着いてな……」
 自分に言い聞かせながら、ゆっくりと腕を動かした。すると今度はフィギュアもなんとか私に合わせて動いてくれるようになった。
 こうして紆余曲折を経ながら、私は徐々に念力を手に入れていった。そして同時に、念力の使いこなし方も分かってきた。

「よーし、このペースならできそうだ」
 私は自信を持ち始めた。そうすることで、フィギュアをさらに自由に動かせるようになり、資料作成はますます早くなっていった。

 しかし、そこで新たな問題が発生した。フィギュアたちは私の集中を乱すかのように、次々と芸当を始めたのだ。

「おいおい、集中しろって言ったじゃないか」
 しかしフィギュアたちは言うことを聞かず、私の机の上でショーを続けた。つられて笑ってしまいそうになる私を、さらなるショーが待っていた。

 その時だった。上司が事務所に戻ってきたのだ。

「おい板倉! どうした、何をしてい……」
 言葉が途切れた。なんと上司の目の前で、ペンギンのフィギュアたちが陽気に踊り狂っているではないか。

「な、な、な、なんだこれは!?」
 上司は目を疑っているようだ。しかし、フィギュアたちのショーは止まるどころか、ますますハイテンションになっていく。
 私は恐る恐る上司の方を見た。するとそこには呆れ顔ではなく、圧倒された表情があった。

「す、すごい……こんなの初めて見た」
 上司はしばらくフィギュアを見つめていたが、やがて私に視線を向けた。
「ま、魔法か何かなのか?」
 私は言葉に詰まった。魔法などあり得ない。だが実際に起きていることは非現実的すぎた。
「い、いえ、これは……」

 言い訳をめぐらせていると、ふと頭に一つの考えが浮かんだ。上手くいけば、この事態をうまく有利に利用できるかもしれない。

「はい、これは私の特技なんです! 念力を使って物を動かす技ですね」
 上司は目を丸くした。私の予想以上に、これを本気で信じてくれたらしい。
「へえ、そうなのか。なかなか凄い特技だな」
「ええ、お陰さまで。これなら資料作成もばっちりですよ」
「ほう、そうか。頼もしいな」
 上司は満足そうに笑った。そしてそのまま出て行ってしまった。

 フィギュアのショーも終わり、私は一人で残された。今にして思えば、この出来事は幸運だったのかもしれない。この"特技"のおかげで、今後は仕事が楽になるだろう。
 同時に、単にフィギュアを動かすだけでなく、さらに高度な念力を手に入れられるかもしれない。その時が来れば、きっと様々な可能性が広がるはずだ。

 私は改めてフィギュアたちを見つめた。そして心の中で、彼らに感謝した。運命の糸が、ここで大きく動き出したのだと。


 (使用AI:Claude 3 Sonnet)


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