第4話 小春日 - 金盞花(きんせんかさく)

文字数 407文字

 幹にくるり、銀兵衛は慣れた手つきで(こも)を巻き、縄をかける。長兵衛がもう一本縄を結ぶ。金兵衛が縄目を整え、余りを切り落とす。半日ほどすると、街道の松並木には冬支度が整った。
 お疲れさん。あとは旅籠でゆるりとしようではないか。金兵衛が二人に(ねぎら)いの言葉をかけてくれる。
 本日は堅苦しい客人もありませんし、どうぞこちらへ。宿の主人は、十二畳はあろうかという部屋へ三人を通してくれる。湯殿も準備させております、ごゆっくり。

 金兵衛は湯殿へ、長兵衛は饅頭屋へ。
 銀兵衛は床の間の前に座して、みている。
 掛け軸ではなく、描かれた花そのものをみている。
 水仙、またの名を金盞銀台(きんせんぎんだい)
 大家の金兵衛さんは、素性もわからぬわたしを住まわせて、一番弟子にしてくだされて。そして銀兵衛の名まで。
 金の盃を支えることのできる銀台に、わたしも、なりたい。

 饅頭の包みを片手に長兵衛が襖を開けると、小春日が水仙を包み込んだ。

 <了・連作短編続く>
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