第122話 トラブル発生!?

文字数 1,074文字

 私は別のお客様の接客中、りんごちゃんは箱詰め中でひよりさんがひとりでレジをしていたようだ。

「そんなこと言われても。もうお会計終わっちゃったんで無理ですよ。てか出すの()っそいですよ」

 お客様相手に口を尖らせているのが視界に入る。ひええ、なに言ってるの!? 割引券かな、後からでもやらなきゃダメだよ!

 わかっていてもこちらのお客様を放ってひよりさんの所へ駆けつけるわけにはいかない。私の前に立つご機嫌なマダムはレジでのやり取りは全く耳に入っていないらしく、ご自宅のワンちゃんの話を延々と続ける。どうしよう、と考えながら目の前のマダムに笑顔で相づちを打っていた。

 すると私のすぐ後ろから「ぎぁ!」と小さな悲鳴が。……え。りんごちゃん? ひえ、こちらはどうやらケーキを壊してしまったらしい。

「すぴばせん……」

 んん……。りんごちゃんもひよりさんのことが気になって手元が狂ったのかな。やっとマダムから解放されてショーケースからケーキを取り出していると、りんごちゃんが泣きついてきた。

「あ、あのあの、あんみつさんっ! 最後のひとつだったっぽいんです、ど、ど、どうしたらいいですか!?

「う……。店長に言うしか」
「ひえええ!」

 お助けををを! と見つめられても私にはどうすることもできないよ。

 それよりひよりさんどうなった?

 ば、と振り返るとレジ前には兼定くんがいた。ふー、なんとかセーフだったか。あのままの対応だと絶対にお客様はいい気分じゃない。兼定くんの接客でお客様は満足して帰られたようだった。


「……はー。梅田さんね。『なんとかなる』なんて、舐めたこと言うのやめてください」

 お店が落ち着いてから兼定くんはひよりさんにそう言った。

「お客様とは『その時』だけだから。梅田さんが与えた印象がそのままこの店の印象になんの。例えば美容院行って会計で『最初に言ってくんなかったから割引クーポンとか今更無理だし』って言われたらどう? 自分が悪かったなって素直に思う?」

「は? 感じ悪すぎでしょそのサロン! 無理だとしても言い方っていうかが!」

「いやあんたがやってんのそれだから」

 兼定くんはなんとか苛立ちを抑えた様子で続ける。

「梅田さんがしっかりしてくんないといつまでもあんみつが休めないんです。しんどそうなの、見てわかるっしょ。言われたことはちゃんと聞いて。自己流はやめてください」

 兼定くん……成長したなあ、なんて思っている場合じゃないや。

「んー。……わかった。イケメンに頼まれたら仕方ないね。気をつけまーす」


 そんなストレスも相まってか、その翌週のことだった。

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