第51話 ママは強い!
文字数 1,024文字
驚きのあまり声も出なかった。だって、あんなに、あんなに必死でがんばってたのに! ご飯も食べないで、寝る時間も削って。それもこれも、二号店店長を勝ち取るためじゃなかったの!?
「へえ。なんで」
訊ねるシェフは冷静だった。
「まあ……佳乃さんと仕事してて、自分の未熟さが身に染みた、つーか。もっと人間的にも成長しないと、ほかのスタッフにも、
こんなことが言える彼は充分すごいと思うけど。っていうか『凄腕ヴアンドゥーズ』ってなんですか!
小野寺くんの言葉を受けてシェフは珍しく男前ににっと笑ってからいつもの顔になって「がはは!」と大きく笑った。
「そうだね。兼定はたしかにまだ青い。つまり未熟だ。実でいうと堅い真緑 だったのがやっと黄緑になってきたところって感じかな」
甘く熟れた紅 色には程遠いよ。と微笑む。
「だけど」
シェフはちらり、と佳乃さんを見てから続けた。
「今日の優勝、それと今のその言葉が言えた時点でもう黄色の兆しが来てると俺は思うよ」
小野寺くんは一瞬反論しようとしてやめたようだった。
「知ってる? 『早生 みかん』ってのは緑や黄色でも案外美味 しく食えるんだよ」
そう言うとシェフは小野寺くんの正面に移動してその目を見つめた。
「二号店の店長は、兼定がやって。大丈夫。今の兼定ならやれる」
「…………はい」
返事を聞くと満足げに頷いて「それにねぇ」と佳乃さんの方を見る。佳乃さんのその手には……あれ。ノンアルコールカクテル?
「ったく、那須くんには今度説教だなあ」
言葉と裏腹にその表情は穏やかだった。
「えっ……、えっ?」
誰よりも先に反応したのは南美ちゃんだった。もちろん私はポカン。
「ふふ、そうなの。二人目妊娠。せっかく復帰したのにまさか一年も働けないなんてね」
え。
え! 妊娠!? ひ、ひあーーー!
そんなわけで佳乃さんはしばらくは軽作業のみの定時上がりに変更。お腹が大きくなったら一時的に販売に回るんだそうです……!
ママは大変だ。そしてママは強い!
「もういろいろ要領もわかったし、今度はすぐ復帰します。旦那にもいろいろ手伝わせますから」
こんなことを堂々と言える頼もしいお母さんになってみたいものです……!
「次は男の子がいいな。私、坊主頭に憧れてんだよね。クリクリ~って撫でまくりたい」
とっても前向きにそう笑う佳乃さんはなんだかとってもかっこよかった。
「へえ。なんで」
訊ねるシェフは冷静だった。
「まあ……佳乃さんと仕事してて、自分の未熟さが身に染みた、つーか。もっと人間的にも成長しないと、ほかのスタッフにも、
凄腕ヴアンドゥーズ
のあんみつにも迷惑かける。今のままの自分じゃまだだめだって思ったんです」こんなことが言える彼は充分すごいと思うけど。っていうか『凄腕ヴアンドゥーズ』ってなんですか!
小野寺くんの言葉を受けてシェフは珍しく男前ににっと笑ってからいつもの顔になって「がはは!」と大きく笑った。
「そうだね。兼定はたしかにまだ青い。つまり未熟だ。実でいうと堅い
甘く熟れた
「だけど」
シェフはちらり、と佳乃さんを見てから続けた。
「今日の優勝、それと今のその言葉が言えた時点でもう黄色の兆しが来てると俺は思うよ」
小野寺くんは一瞬反論しようとしてやめたようだった。
「知ってる? 『
そう言うとシェフは小野寺くんの正面に移動してその目を見つめた。
「二号店の店長は、兼定がやって。大丈夫。今の兼定ならやれる」
「…………はい」
返事を聞くと満足げに頷いて「それにねぇ」と佳乃さんの方を見る。佳乃さんのその手には……あれ。ノンアルコールカクテル?
「ったく、那須くんには今度説教だなあ」
言葉と裏腹にその表情は穏やかだった。
「えっ……、えっ?」
誰よりも先に反応したのは南美ちゃんだった。もちろん私はポカン。
「ふふ、そうなの。二人目妊娠。せっかく復帰したのにまさか一年も働けないなんてね」
え。
え! 妊娠!? ひ、ひあーーー!
そんなわけで佳乃さんはしばらくは軽作業のみの定時上がりに変更。お腹が大きくなったら一時的に販売に回るんだそうです……!
ママは大変だ。そしてママは強い!
「もういろいろ要領もわかったし、今度はすぐ復帰します。旦那にもいろいろ手伝わせますから」
こんなことを堂々と言える頼もしいお母さんになってみたいものです……!
「次は男の子がいいな。私、坊主頭に憧れてんだよね。クリクリ~って撫でまくりたい」
とっても前向きにそう笑う佳乃さんはなんだかとってもかっこよかった。