オマケ おしえて☆小野寺くん

文字数 3,670文字

 作中の用語やパティシエの仕事について小野寺くんに聞いてみようと思います! 助手は私、あんみつが務めまーす!



第1章の即興ケーキでシロップを使ったのはどうしてですか?

「は? 香り付けとパサつき防止、それ以外ないっしょ。わかるだろ普通に」

「……優しく答えてくださいね」



パサつき防止なら水ではだめなんですか?

「だめに決まってる。あほなのこいつ」

「や、優しく理由を!」

「水じゃ甘さがボヤけるだろーが。早い話が不味(まず)くなるわけ。それでもわからんなら自分でスポンジケーキ買ってきて試せば?」



第2章、公園で言っていた「安物の苺」とはなんですか?

「アメリカ産の苺のこと」

「はい、あんみつが補足しますね。
一般的に国産の苺は冬から春にしか市場に出回りませんが、ケーキ店や工場など一部の需要のあるところには夏から秋にも国産の『夏苺』というものが出荷されています。ただやはり高価なのです。そこでケーキ店によっては安価なアメリカ苺を採用しているお店も多くあります。ただこのアメリカ苺は実が大きすぎたり硬かったり、土などの汚れもあったりとなかなかワイルドでケーキの飾りとして扱うには手間が……」

「長い。飽きた。次」

「む……頑張って勉強したのに」
「次」



切ったケーキの端っこは廃棄するんですか?

「俺はもらって晩メシにしてる」
「体こわしますよ」



朝は何時に出勤ですか?

「店によるけどうちの場合は厨房は8時までに、売り場は9時までに出社。実際は厨房はシェフより前じゃないとだめだから6時とかには。繁忙日は4時や5時。そのへんは察する感じ」

「明確な決まりがないから慣れるまでは怖いよね。不安なら周りに確認すべし」



製菓衛生師免許がないとパティシエにはなれないですか?

「なれるだろ。自分で調べろ」

「優しくっ!」



どうしたらヴァンドゥーズやパティシエになれますか?

「は? だから自分で」
「専門学校に行くか、直接お店に就職するのでもパティシエと言えるそうです! 募集は求人誌よりも店舗にある張り紙などを探す方が確実で、クリスマスを見据えた秋頃が狙い目です」



クリスマスは特別手当とかはあるんですか?

「ない。甘えんな」

「お、お店によってはあるかも? 手当は無理でも労いの気持ちは溢れてると思いますっ」

「気持ち? ないだろ、あんなこき使っといてそんなもん」

「しーっ、しーっ!」



職業病的な言動はありますか?

「ケーキは分解して食う」
「一箇所ずつ味を確かめたいんだそうです」

「イートインでもドリンクは水」
「お金ないからね」

↑実際それで業界人か判別できたりします。



どうしたらたくさんスイーツを食べても太りませんか?

「ランニングと筋トレ」
「え、そんなことしてるの!? いつ?」

「深夜と早朝」
「う……見習います」



製菓専門学校の男女比率は?

「だから自分で調べろよ」
「女子7:男子3くらいだそうです!」



パティシエ男子はモテますか?

「しらん」
「人によります!」



人による、とは?

「ええと……まずですね、パティシエ男子にはプラス要素/マイナス要素/付加とありまして、こんな具合に」

〈プラス要素〉
熱い夢を持つ、聞こえがいい
=モテ要素

〈マイナス要素〉
休みが少ない、土日祝出勤、安月給
=モテない要素

〈付加〉
①もともと男前タイプ
②助けてあげたくなるタイプ

「この〈付加〉部分を持つかどうか、またそれが相手に求められているか、ということでモテ度が変わると思うんです。どうでしょうか」

「なにマジメに答えてんの。つーかモテたいだけならやめた方がいいよ」



どうしたらお店を開業できますか?

「金さえあればできんでしょ」
「お店が続くかはあなた次第!」

免許取得または講習の受講、届け出などは当然必要となります!



第5章で言っていた「テンパリング」と「ブルーム」とはなんですか?

「テンパリングはチョコレートの温度調整。溶かしたチョコの温度を設定温度まで上げ下げしてチョコの油分を整える作業のこと。これをやることで風味や口溶けが良くなるし固めた時に美しく艶が出る。逆にこれが上手く出来てないとブルームの原因になる。ブルームについてはあんみつが説明したいそうです」

「な!? ええと、チョコが白く硬くなっちゃうやつ、です!」

「語彙力()
「む……じゃあなんて言えばいいのさ」

「検索してみれば」
「教えてくれないんだ!?
「ラクすんな」
「……」

【シュガーブルーム】
チョコレートの組織が崩れて砂糖などの結晶が表面に出てくる現象

「……え、あの白いのって砂糖なんだ? じゃあ無糖のチョコレートにはブルームは出ないってこと?」

「……」
「ね?」
「……」
「ちがうんだ?」
「……」
「……調べます。

……ファットブルーム?」
「そう」

「ええと、待ってね。ファットブルームとは……」

「固まった油分のこと。シュガーブルームとファットブルームの違いは浮き出た成分が砂糖か油かってこと。どっちも原因は急激な温度変化で、シュガーブルームは結露が、ファットブルームは高温が原因と言われてる。食べても害はないけど口溶け、風味ともに格段に落ちる」

「結局いいとこ持ってくんじゃん」
「悔しかったら勉強しろ」
「くう」



〈シャンティ・フレーズ〉の『シャンティ』『フレーズ』それぞれの意味は?

「あんみつ、どうぞ」
「試さないでくれる!?
「これぞヴァンドゥーズの出番だろうが」

「……まあね。……ええと、『シャンティ』はホイップクリームの意味で、『フレーズ』は苺。どちらもフランス語です。当店シェフのいちばんの自信作がイチゴショートで、それを意味するフランス語ということでこの名が付けられています」

「厳密に言うとイチゴショートは日本生まれだからフランスにはないんだけどね」
「えっ、そうなんだ?」
「ばーか」
「くうっ」



モンブランの由来は?

「これもあんみつだろ」
「さては飽きたんでしょ小野寺くん」
「ははん、知らねーの」
「む! 知ってるもん! 由来は『山』。山を模して作られたケーキで、栗という意味は実はないのです」

「じゃあなんで栗のケーキなんだ?」
「え、なんで?」
「おい」
「ぐ……なんでですか」

「まず『モンブラン』はフランス語で『白い山』。フランスでは『Mont Blanc(モンブラン) aux() marrons(マロン)』と呼ばれていて、起源は栗を使った家庭菓子だったらしい。だから栗を使用した理由は手頃な材料だったとかそんなところと予想されるけど、明確ではない。甘露煮を使った黄色のマロンクリームや細い絞りは日本特有で和菓子っぽさも混ざって進化してきた。ちなみに『マロン』がフランス語だってのは案外知らない人が多い。じゃあ英語では?」

「えっ」
「英語で『栗』は」
「ナ……ナッツ? ニードルナッツ!」
「チェストナッツ」
「……ほほー」



チーズケーキの上のツヤツヤはなに?

「あんずジャムとナパージュ。なにこの質問」

「案外聞かれるよ? 『なにかわかんないけど美味しいのよね』って」

「はあ」

ナパージュとは艶出し等に用いられるジャム状または液状のゼリーのこと。製菓材料店などで購入可能です!



最終章でシェフが言っていた洋菓子コンテストとはなんですか?

「国内外で開催される製菓の技術を競うコンテストのこと。有名なのはフランス・リヨンの〈クープ・ドュ・モンド・デュラ・パティスリー〉。代表三名ずつのチーム戦で氷細工部門、チョコレート細工部門、アメ細工部門で構成されてて、それらの合計点で総合順位を決定。制限時間は10時間。近年は日本人の活躍も見られて注目されてる。でもシェフが言うのはたぶんここまでのじゃなくて、国内のコンテストのことかな。有名なのは〈西日本洋菓子コンテスト〉や〈全国洋菓子技術コンテスト〉。ほかにも各地でいろんなコンテストが開催されていて──」

「ご、ごめんなさい、文字数の都合上ここまでになります!」



英会話に手話……。勉強が嫌いでもヴァンドゥーズになれますか?

「はい、あんみつがお答えします! 私も勉強苦手です! でも頑張ってます! 何事も気持ちが大切。気持ちはやる気に、やる気は力に! だからきっと大丈夫です!」

「勢いだけだな」



製菓専門学校の入試はなにが出る?

「学校によるけど、一般常識、小論文、面接ってのが一般的。心配しなくても結構本気のバカが多いから普通に高校通えてたら大丈夫と思う」

「え、本気のバカ、とは?」

「小学校で習うような漢字が書けないやつとかも受かってたから」
「まあ」



小野寺くんの苦手なことは?

「そうじ、洗濯、料理」

「よくひとり暮らしできてるね。ていうか料理? お菓子は作れるのに?」

「製菓と調理は別モノ。書道と水墨画みたいなもん」

「たまに変な喩えするよね」



では仕事で苦手なことは?

「接客」
「え! うそ!?

「特にマダムとの世間話」
「まあ、そうか……」
「一年間ほんとよく頑張ったと思う」
「うんうん、頑張ったねえ」



最後にパティシエまたはヴァンドゥーズを夢見る若者へひとこと!

「やめとけば?」
「ぜ、ぜひ夢を叶えてくださいっ! 応援してますからね!」



〈オマケ 完〉

 第2章へつづきます!

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