09 リオンの冒険する意味
文字数 2,529文字
トライブは、リオンの前で立ち止まり、アルフェイオスを持たない左手をそっと差し出した。
リオンの手が、反射的にトライブと結ばれる。
私だって、今まで何度も自分の剣を失ってしまった。
私の中で一番使いやすいと思っていた剣が簡単に折られてしまったり、時には私と全く合わないことだってあったのよ。
そのような経験を重ねて、私の今の剣、アルフェイオスがあるのよ。
俺だって、そうだよ……。
ずっと、サルコスっていう人のところで修行して、自分に合う剣を探し求めてきた。
でも、この剣は……、その結果見つけたはずのものなんだと思うんだ。
今更、他の剣がソウルウェポンだったとか、信じたくない。
リオンは、軽く首を横に振る。
彼の視線の先には、認められなかったライトニングセイバーと、おそらく認められているであろうアルフェイオスが交互に映っていた。
ジェンタウルス……。
私もこの剣を前に一度出会ったけど、全く勝てなかった。
ソードマスターになったら倒したいと思っていたけど、それから全く目撃情報がなくて、今すごくもどかしい気持ちでいっぱいよ。
リオンの剣が、そんな強敵を2体倒したなんてすごいじゃない。
トライブは、かすかにうなずきながら、リオンの表情を伺った。
だが、彼の表情は倒した強敵を思い出す方向には向かうことなく、受けたショックへと戻っていこうという目に変わっていた。
トライブは、リオンの目をじっと見つめていた。
力では勝てなかった相手にもかかわらず、傍から見ればリオンに勝ったような光景だった。
リオンは、軽く握りしめていたはずのトライブの左手を、いつしか力強く握っていた。その茶色い髪が、森の中を通り抜ける風に、かすかにそよいでいた。
そこに、それまで二人の会話に耳を傾けていたソフィアが、そっと口を挟む。
リオンの持っているライトニングセイバーが、ソウルウェポンだとしても、そうじゃなかったとしても……、リオンはこの剣で最強の剣を目指せばいいような気がする。
つまり、ライトニングセイバーで「ソードレジェンド」の世界を制するのよ。
リオンが、思わず手を打って息を飲み込もうとした。
トライブも、ほぼ同時に軽くうなずき、リオンの目を見つめる。
ソフィアは、そこまで言うと左右を見渡した。
まるで何かを探しているかのように。
リオンが、何かを思い出したかのように息を飲み込み、彼自身のソウルウェポンとしては認められていないライトニングセイバーを、その目の前に近づけた。
少し首をかしげたリオンが、トライブの目にはこれまでと別人のように見えた。