27 一番頼りになる友達
文字数 2,510文字
リオンとアーディスがリバーサイドタウンのほうに歩いて行くと、その場でリオンに向いていたはずの「ゲームマスター」も、その気配すら消していた。
穏やかな日が包み込む中、そこにはトライブとソフィアだけが残された。
そう言って、トライブはソフィアの目を見た。
それでも、まだソフィアの表情が澄んでいるようには見えなかった。
トライブは一度うなずいてから、ソフィアに尋ねた。
ソフィアのため息が、トライブの耳にはっきりと伝わった。
その吐息をかき消すように、トライブは少しだけその顔を上げた。
トライブはそこまで言うと、その瞳の奥に真夜中の「ゲームマスター」の立ち姿を思い浮かべた。
その時、決して「ゲームマスター」が剣を向けようとしなかった理由を、トライブは懸命に思い出そうとしていた。
数秒後、トライブの脳裏に言葉が浮かんだ。
またいつか、お前と戦わなければならないようだ。
その時まで待ってろ。
その時、ソフィアがトライブを細目で見つめた。
その口は、時折何かを言おうとしては口をつぐみ、つぐんでは何かを言おうとする、落ち着きのないものだった。
そして、思い詰めた後にソフィアがそっと言葉を返した。
ソフィアの声は、時折小さくなっていたが、それでも必死に何かを伝えようとしていた。
トライブの目がソフィアを見つめる中で、ソフィアはかすかにうなずいた。
トライブは、そこで言葉を止めた。
ソフィアに何かを言って欲しい、と声を掛けてもムダだと分かっていた。
それでも彼女は、何度となく剣を交わしているうちに、ソフィアのどう悩んでいるかは表情だけで分かっていた。
だからこそ、ここでトライブはあっさりと話を反らすことはできなかった。
しばらく、ソフィアの目を見続けた。
すると、ソフィアの顔がやや下を向いた。
そう言うと、ソフィアは思わずトライブの胸に飛び込び、一筋の涙をその目からこぼした。
その肌の感触をよく知るトライブが、ソフィアの悩みを強く抱きしめた。
そう言うと、ソフィアはトライブの耳にそっと、ある人物の名前を告げた。
トライブは、その名前を告げられるのとほぼ同時にうなずいた。
その時だった。
ソフィアのやや後ろで、大地から黒い手が伸びてくるのがトライブの目に見えた。
黒い手は徐々に地上に姿を現し、すぐにその頭まではっきりと見えるようになった。
ソフィアは懸命にトライブの後ろに回り込もうとしていた。
だが、ソフィアの体が動いた瞬間、ソフィアは背中から「ゲームマスター」のシルエットに抱きつかれ、そのまま首筋を掴まれてしまった。