43 オルティスvsリオン
文字数 2,514文字
その言葉が言い終わるのが早いか、オルティスの足が地を蹴り、刀とバルムンクでリオンを挟み込みにかかった。
やや遅れて足の動いたリオンは、まず刀に向けてヘヴンジャッジを突き出していく。
リオンとオルティスの中間でぶつかり合った、刀とヘヴンジャッジ。
リオンは、パワーでオルティスの刀を退けていく。
すぐさまオルティスもバルムンクで挟み込むが、一足早くリオンのヘヴンジャッジが刀から跳ね返り、剣の柄すれすれのところに命中させた。
オルティスの両腕が、瞬く間に開いていく。
彼の足が一歩引いたように、リオンには感じられた。
リオンは、ヘヴンジャッジをやや強く握りしめ、アーディス相手に見せたように、その剣先から青白い光を解き放つ。
体勢を立て直すオルティスの真上から、ヘヴンジャッジを一気に振り下ろす。
リオンは、勝負を一気にたたみかけてきた。
振り降ろしかけたヘヴンジャッジの光は、下から突如襲いかかった刃をわずかに押すだけで止まった。
オルティスの両腕から解き放たれる力が、リオンの剣の勢いを吸い取ったかのように増していく。
リオンは、腕をほぼ肩の高さで伸ばしたまま、次の一手を踏み出せずにいた。
少しずつ、リオンの肩に衝撃が伝わってくる。
リオンの足が、再びオルティスに向けて走り出す。
リオンの剣を一気に突き飛ばすことができなかったオルティスが、バルムンクと刀を元に戻すまでの間に、わずかな隙ができていた。
リオンは、動きかけたバルムンクを目掛けてヘヴンジャッジを一気に振り降ろし、続いてオルティスの刀に振りかざした。
だが、リオンの耳がバルムンクの落ちる音を聞いたとき、オルティスが反射的に右によけた。
ちょうどバルムンクを持っていた、彼の右手をかばうかのように、彼は刀を反らしたのだ。
次の瞬間、オルティスが後ろにジャンプし、リオンに細い目を向けたまま膝をついた。
ヘヴンジャッジの青い光がオルティスの顔を照らす中、オルティスは首を横に振った。
オルティスの目が、落ちたバルムンクに向けられた。
次の瞬間、バルムンクが二人の視界から空気の中に溶けていってしまった。
リオンとオルティスの表情が、ほぼ同時ににやけるのを、お互いの目が感じた。
二人とも、七色の剣を見たことがないにも関わらず、その伝説を夢見ているようだった。
そう言って、オルティスはゆっくりと後ろを振り返り、穴の出口へと通ずる階段を一歩、また一歩と足をかけていった。
その5メートルほど後ろで、リオンはオルティスの背を追うように歩き出した。
その気配が感じられたとき、オルティスが何かを思い出したかのように振り返った。
リオンの目が、オルティスの一言で一気に細くなる。
分かりきっていた仮説とは言え、オルティスに告げられた瞬間にその言葉の重みが増すことに、リオンは否応なしに気付くのだった。
そう言って、オルティスは決して笑うことなく、その場を立ち去った。
リオンのヘヴンジャッジから、既に青白い光は消え、まだその力を知らぬ相手に向けて、そのパワーを解き放とうとしていた。