18 刀を使いこなす者
文字数 2,589文字
トライブの手に、これまで数多くの強敵を打ち倒したアルフェイオス。
対するオルティスの母親の手に、本来オルティスが持ち、使いこなしている刀。
トライブの目が、鋭くなる。
そして――右足が動き出した。
正面に高くアルフェイオスを上げて迫るトライブに、オルティスの母親は足を一歩前に出しただけで、その刀を縦に立てた。
刃の向きが90度違う。これは、オルティスの母親もその場所から攻撃を仕掛ける。
何千回ものバトルを積み重ねてきたトライブには容易に想像できることだった。
だが、トライブがアルフェイオスを振り下ろしかけたとき、オルティスの母親の腕がかすかに動き出す。
そのままアルフェイオスの行く手を封じ、上方に持ち上げていくとトライブが予想していたオルティスの母親が、軽く刀を引いた。
標的を失ったアルフェイオスを、トライブは肩の高さで止めて、相手が引いた刀を横から叩きつけようと腕に力を入れた。
その瞬間、オルティスの母親は刀を高く上げ、一瞬動きを止めたトライブの体に激しく斬りつけようと肩に力を入れた。
すぐにトライブは、オルティスの母親の持った刀が振り下ろす曲線に、アルフェイオスを移動した。
だが、何とか食い止めたところは、トライブの肩にギリギリ触れるか触れないかのところで、形勢はオルティスの母親のほうが圧倒的に有利な状況になった。
トライブの手に、オルティスの母親が持った刀の力があふれ出していく。
懸命にアルフェイオスを握りしめるが、それを押し返すだけの力は、この体勢では厳しそうだ。
オルティスと最初に戦ったとき、刀の持つあまりのパワーと、オルティスの体から繰り出されるスピードに、トライブはなすすべもなく力尽きた。
いま目の前にいる、オルティスの母親は、スピードこそ控えめだが、刀のパワーだけで素早く相手を仕留めようとしている。
勝負を決めたがっているのだった。
オルティスの母親の持った刀が、ついにアルフェイオスを一気にトライブの手前に押しやり、そこから一気に振り下ろされる。
しかし、トライブの手が立ち直るのが、少しだけ早かった。
すんでのところで刀を止めたトライブは、剣を持つ手に一気にパワーを集中させた。
歯を食いしばり、少しずつ、また少しずつ、オルティスの母親の側に刀を押しやっていく。
そして、刀の力を感じなくなりかけた時、「剣の女王」の叫び声がその場を包み込んだ。
トライブの本気の力が刀を芯から捕え、なぎ倒すかのように刀を地面に落としていった。
刀のパワーを携えたオルティスの母親は、全く抵抗できずその場に立ち竦み、やがて下を向いてトライブに歩み寄った。
強いわ……。
このゲームに、こんな強い剣士がいたなんて思わなかった。
あなたも、やっぱりその刀を持ったら、ものすごい力になっていた。
使いこなせてはいたと思う。
でも、あなたにとってその刀はソウルウェポンでも、そして全てを懸ける武器じゃないように私には見える。
もし刀がソウルウェポンだとしたら、あれだけのパワーを持った刀なんだから、そのパワーを信じて最初から攻めてきてたと思うのよ。
言われてみれば、単純なことね……。
そして、あなたの持つソウルウェポンは、本物だった……。
私の意思ね。
そうするしか、ソウルウェポンを消し去ることができないんだもの。
なるほどね……。
でも、そんなこと「ソードレジェンド」でやってはいけない。
むしろ、あなた自身が「ゲームマスター」からソウルウェポンを教えてもらって、一人の剣士として戦うべきだったのかも知れない。
とりあえず、刀をソフィアに返しなさい。
トライブがそう言うと、オルティスの母親は地に落ちたオルティスの刀をソフィアに渡そうと手を伸ばす。
ソフィアの手にそれが渡ると、ひたすら下を向き、まるでこれまでしてきたことを恥じるかのような表情で無言になってしまった。
奥の方で、オルティスという名の子供がじっと見つめていた。
その中で、トライブたちは家を出た。
再び道路に出て、リバーサイドタウンの中心部に向かって歩き出すと、ソフィアがトライブの横に歩み寄る。
すると、そこにリオンが割って入る。
一つのことが解決したような表情を浮かべるソフィアとは対照的に、リオンは浮かない顔をしていた。
というか、もし「ソードレジェンド」が嫌なら、最初から「ゲームマスター」がこの世界にそんな設定を置いていないような気がするんだ。
それに、連れの武器を持って戦うんだろ。
だから、ああ言っておいて、最初からゲームのキャラだって可能性が高いんだ。
みんなどう思う?