23 預けられた強き剣

エピソード文字数 2,529文字

ソフィア……、ストリームエッジが戻ってきてる……。

ソフィアが宿屋に戻ってくると同時に起きたトライブは、ソフィアの右手に持ったストリームエッジを見て、思わず一歩引いた。


ソフィアは、右手にストリームエッジを、そして左手にオルティスの刀と、二つの武器を同時に持ち、涼しげな表情で立っていた。

私にも、何が起こったのか分からない。

でも、「ゲームマスター」があっさりと私を許してくれたのは間違いないこと。


剣が二本になったのは予想外だったけど……。

そこは、素直に喜んでいいことだと思うわよ。


オルティスの刀は大きいから、鞘に入らないって問題はたしかにあるわね。

朝になったら、この刀売る……?


トライブもこの刀に苦しんだんだから、結構な高値で売れそうだと思う。

とは言っても、コピーよ。


本物は、まだオルティスが持っているだろうし。

本物か偽物か、武器屋には分からないような気がするけど……。


もし見た目で本物かどうか分かっていたら、今までソウルウェポンを持つ者同士のバトルがほとんど起きていないというのが、信じられなくなる。

そうソフィアが言うと、ほぼ同時に二人は笑った。

その声で、ベッドで横になっていたリオンも目を覚ました。

おはよ……。


何かあったのか……。また「ゲームマスター」が現れたんじゃないだろうな。

剣が戻ってきたの。
戻ってきた……って、えーーっ!?

ベッドから立ち上がりかけたリオンは、ソフィアの剣に二種類の武器を持っているのを見た瞬間、思わず腰を抜かしてベッドに座り込んだ。


その体は震えていた。

ていうかソフィア、二刀流行けるのか……?

さすがに、二つは扱えない。


だから、今トライブと武器屋に売るって話をしてたの。

もちろん、売ることになるのは私の使い慣れない武器のほうだけど。

コピーは、誰にだって使いづらいと思う。

リオンもそう思うでしょ。

それはどうかな……。
リオンは、壁に立てかけてあるライトニングセイバーを指差し、それからその前に近づき、剣の柄を軽く叩いた。

たまにはさ、冒険もしてみないか?


俺は、オルティスの刀を使いたい。

どうせ、ライトニングセイバーは俺のソウルウェポンじゃないし、あの刀だって使いこなせればかなりの破壊力になると思うんだ。

いいの、それで……?


たしかに、オルティスの刀はかなりの破壊力があるけど、刀の力を使えるのはオルティスだけだと思う。

リオンがそこまで言うなら止めはしないけど、ライトニングセイバーはどうするの。

この街に置いておくよ。


売るんじゃなくて、預けるのさ。

この「ソードレジェンド」が終わるまで。

リオンがそう言った瞬間、ソフィアが手を叩き、驚いた表情を見せる。

預けるって、いい方法だと思う。


私たちは「オメガピース」を拠点にしているから、武器を店に預けるなんて滅多なことでもないとしないけど、この世界はそんな常識なんか通用しない。


というか、リオンがこの刀を振り回す姿を見てみたい。

ソフィア。

本音は見てみたいということなのね。

ま、まぁね……。


預けておけば、ライトニングセイバーはなくならないし、万一リオンが武器を失ったとしても、リバーサイドタウンに戻ってくれば慣れ親しんだ剣でもう一度復活できる。

まさに、ソフィアの言うとおりだよ。

せっかく二つ武器があるんだったら、両方失うリスクは避けた方がいい。


な、俺は朝になったらこのライトニングセイバーを預けるよ。

まぁ、そこまでリオンが言うんだったらいいわ……。

2対1になったいま、トライブは二人に何も言うことはできなかった。

決してそれ以上止めたり、不安そうな表情を見せたりすることなく、リオンの考えに従うことにした。



結果として、それが物語をより複雑なことにしてしまったのは、この時の三人には決して分かることのない展開だったのだが――。



翌朝。


リオンが真っ先に武器屋に行き、ライトニングセイバーを預けて戻ってきた。

その手には、オルティスがその力を見せつけてきた刀がしっかりと握られていた。

リオン、こうして見ると似合うじゃない。
ま、まぁね。

俺、今だから言えるけど、昔から大剣に憧れてたんだよ。


俺がこれ使って、より強くなれるか知りたかったって言うのもある。

そうね。


私の周りでも、そういう動機で武器を変えるっていう剣士はいるわ。

いるんだ。

なるほどね。

トライブがそう言う中で、リオンは宿の外でオルティスの刀を軽く素振りし出した。


ライトニングセイバーを持つときよりも、武器を持つリオンの手に力がこもっているようだった。

そこに、ソフィアがストリームエッジを手にリオンのほうに近づいてきた。

リオン。


なかなか似合ってるじゃない。

オルティスよりも、ずっとその刀がさまになっているように見える。

ソフィアも、本当の剣を持った方が似合ってる。


この刀は、なかなか女性には扱いにくい。

トライブも、女性用の剣を選んだんじゃないの?

私は、あまりそんなの意識しなかったわ。

アルフェイオスだって、強い剣を持ちたくて、五聖剣で誰も持ち主がいない剣を見つけたの。


持ちやすいと思ったのは、その剣を手にした後のことよ。

でも、トライブが重い剣を持ったら、今のパワーはないと思う。


トライブは偶然だけど、いいパートナーを見つけたと思うけど。

それは間違ってないわね。
トライブとソフィアは、ほぼ同時に薄笑いを浮かべた。

普段から合わせている、お互いの剣をその目にはっきりと映しながら。



だが、その二人をリオンが羨ましそうに見ていることに、すぐトライブは気が付いた。

とくに、トライブの持つアルフェイオスをじっと見つめていた。

トライブさぁ……。


なんか、遠い昔に聞いたことのある言葉を、俺聞いたような気がするんだ。

リオン。


なんか気になったの?

五聖剣。


俺、たしかライトニングセイバーを持つときにこんな言葉を聞いたような気がするんだ。

でも、この言葉を俺はそんないいニュアンスで教わっていない……。

私はたしか、かなり前に五人の剣豪に捧げるための強い剣として作られたとか聞いたけど、リオンはそう教えてもらわなかったんだ。
うん。


少なくとも、俺にとっては忌まわしい記憶としか教えてもらわなかったんだよ。

リオン。


その話、気になるわ。

もしよかったら、詳しく教えて。

トライブは、静かな声でリオンに尋ねた。
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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター/剣=アルフェイオス

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳/剣=ストリームエッジ

女剣士で、トライブの最大の親友、かつ最大のライバル。

実力で上回るトライブに追いつき、いつかソードマスターになりたいと強く願っている。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター/剣=ライトニングセイバー

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター/刀=名称不詳

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

ゲームマスター


最強の剣を決するゲーム「ソードレジェンド」を司る謎の男。

剣を持ったときの実力は、計り知れない。

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