12 「ゲームマスター」の人物像
文字数 2,593文字
リオンの言葉に、思わず顔の向きを変えたトライブは、上から差し込む光を頼りに彼の表情を伺った。
リオンは、しばらく上を見ていたが、上にいる人物が見えなくなったのか、顔をトライブに向けた。
たぶんね。俺の間違いかも知れないけど……、「青い旗の騎士団」のアーディスだったかも知れないんだ。
ただ、下にいると反射して見えないし、俺が見ても上から光が差し込んでて、はっきりと顔を見ることができなかったんだ。
でも、言い方が「ゲームマスター」ぽくなかったような気がする。
アルフェイオスを上から投げ込まれたシチュエーションを、トライブはもう一度頭の中で組み立てていた。そして、そこに立っていた人物が「ゲームマスター」だった場合とそうでなかった場合を同時に考えながら、リオンの表情を伺った。
えぇ。
もしリオンの言うとおり、アルフェイオスを落としたのがリオンの知り合いだったとしたら、「ゲームマスター」がものすごく残酷な人ってことになりそうよ。
ソウルウェポンが私の手から離れたのに、「ゲームマスター」が何もしないっていうことになる。
リオンは、トライブの推理に腕を組み、一度地面を見つめた後で再びトライブに顔を向けた。
トライブは、一度首を横に振り、それまで考えていた「幻想」を捨てようとした。
ソフィアが流れていった水路の奥へと体を向けながら、リオンにそっと告げる。
そう言うと、トライブは暗い通路を水の流れていく方向に歩き出した。
靴の中に水が入らないように気を付けながら歩くものの、穴から離れていくにつれて壁すら見えなくなり、数十メートル歩いたところでトライブはその足に水をはっきりと感じた。
そう言うと、トライブは後ろを振り返り、リオンの表情を伺った。
リオンも、そう言いながら足に水を被っており時折足下を気にしているようだった。
すると、リオンはライトニングセイバーを前にかざして、それを力いっぱい握ろうとした。
リオンは、トライブの前に立ってライトニングセイバーを白く輝かせた。
つい先程、トライブが太刀打ちできなかった強い力が、いまトライブたちの行く先を点す光となって、道を作っていた。
普通に考えれば、そうなんじゃない?
だって、穴が空いていたところは、もともと土の一部が崩れ落ちたんだし、この水路の流れが急じゃなくなったところに溜まってくると思うよ。
それに、川の流れが急じゃなくなったら、水路を削り取るような力もなくなるから、それだけでも通路が狭くなるってことさ。
リオンは、二人の頭すれすれのところにある天井を指差す。
その説明を聞きながら、トライブは少しだけ首をかしげた。
その時だった。
トライブとリオンの肌に、天井から小さな砂粒のようなものが落ちてくるのが分かった。
上よ。
地上に出ようと這い上がっているんだけど、少しだけ差し込む光のところでどうすることもできないのよ……。
そう言うと、トライブとリオンは足場を見つけ、岩と岩の間をよじ登り始めた。
ソフィアの言うとおり、たしかに小さな光が上から差し込んではいたが、その光からソフィアの姿を見つけることはできなかった。
だが、声だけはする。
その声を頼りに、二人はソフィアのところに一段ずつ近づいていった。