14 ソフィアが襲われた理由
文字数 2,591文字
岩伝いに上へと登っていくトライブの耳に、ソフィアが地面になぎ倒される重苦しい音が響いた。
何度か足を踏み外しそうな、突貫で作り上げた地上までの道を、トライブはソフィアの姿を脳裏に浮かべながら進んでいく。
その下から、リオンもトライブの作った「轍」を使って上がっているようだ。
そして、トライブが地上に生えていると思われる草に手を掛けたとき、その手を力なく握るぬくもりを感じた。
ソフィアの手に力はなく、その手を頼りに最後の道を作ることは不可能だった。
もろい土の上に左手を掛け、トライブは足場もなくぶら下がった状態になる。
右手に持っている剣で土に足場をつけようものなら、そこから崩れ落ちてしまいそうだ。
体をボロボロにしてまで、強敵に何度も打ち勝ってきたプライドが、そこから落ちていくのを許さなかった。
トライブは体が落ちないように左手に力を入れ、同時にアルフェイオスを地上に投げた。
両手の力を頼りに、トライブは一気にその身を持ち上げた。
地上の景色が、彼女の目に飛び込む。
地上で待っていたアルフェイオスと、その横にボロボロの状態で倒れたソフィアの姿があった。ソフィアの腕には、ところどころ傷すら見える。
そして、その横にオルティスが使っている刀が見えてきた。どうやらソフィアの現在の武器、刀が奪われたわけではなさそうだ。
四つん這いになりながら地上に足まで乗せると、トライブはすぐにソフィアのもとに駆け寄った。
そう言って、トライブはソフィアの傷や、やや離れたところにあるオルティスの刀を見た。
どうやら、アーディスの方は戦いたくて戦ったとしか思えなかった。
すると、ちょうどリオンが地上に足をつけ、トライブたちの横に駆け寄ってきた。
デスティニーブレイカーという銃剣を、アーディスは使っている。
もっとも、いつの時代のアーディスがここに呼ばれたのかは分からないから、「オメガピース」のソードマスターだったときに何を使っていたかは知らないけどさ。
考えるしぐさを見せるリオンに、トライブは軽く顔を向ける。
リオンは、ライトニングセイバーを何度か握って、それからソフィアの目を見つめた。
そもそも、アーディスがそんなことする人間だと思えないんだ、俺には。
あいつは、騎士団の中でも先頭に立って相手に向かっていく割には、他人のことを気遣う面も目立っていた。
それが、「ゲームマスター」からソウルウェポンじゃないと言われて、たまたま他人の剣を持っていたソフィアに八つ当たりすると思えないんだ。
たしかに、オルティスの刀は見た目もインパクトありそうよ。
ソフィアがそれをソウルウェポンとして使っているのならまだしも、使いにくそうにしていた。
だから、アーディスはその刀が本当はソフィアじゃなくてアーディスのソウルウェポンだと思ったのよ。
リオンがそこまで言うと、トライブとソフィアは同時にうなずく。
リオンの一言で、トライブは薄笑いを浮かべた。
だが、その時、トライブの目にオルティスの刀の先が飛び込んできた。