07 告げられた運命

文字数 2,569文字

リオンがトライブのことを全く知らない。

そのことをはっきりと察したトライブは、リオンの前に一歩出て、左の人差し指で彼女の顔を指差した。

私は、トライブ・ランスロット。

リオンの8代後のソードマスターで、オメガピースの剣士セクションをまとめているわ。


時空を超えて、少しだけリオンと戦ったこともある。

そっか……。

じゃあ、俺が知らないだけなんだね。


偶然にもこの世界で出会っちゃったけど、よろしく。トライブ。

こちらこそ。


で、あそこにいるのが友達のソフィア。

さっきバトルでソウルウェポンを失ってしまったけど、ソフィアもまた強い剣士の一人だと私は思っている。

よろしく、リオン。

こちらこそ、よろしくな。

リオンがソフィアの手を取り、軽く握手を交わす。

その手が、トライブを相手にしたとき以上に親近感に溢れていることに、トライブはわずかに首をかしげた。

じゃあ、俺も自己紹介するよ。

俺は、リオン・フォクサー。オメガピースのソードマスターというより、ルーファスの街の騎士団長だ。


たぶん、トライブの時代も街の平和は続いていると思うけど、俺たちの頃はモンスター撃退率No.1だったんだからさ!

すごい……。


一つの街を守れる剣士って、なんか素敵ね……。

ソフィアが、思わずリオンに抱きつきそうなしぐさを見せる。

だが、リオンが決して乗り気でないことに気付き、すぐにその体を引っ込めた。

……で、その顔をしているということは、今すぐにでも私の剣と勝負をしたいってことなのよね……。


リオンの挑戦、受けて立つわ。

待ってくれ。


俺は、戦うために剣士を探してたわけじゃない。

リオンは、ライトニングセイバーを構えるどころか、右手のひらをトライブの顔に近づけ、その動きを止めた。


力の勝負をしようとしないリオンに、トライブは一歩後ろに下がる。

リオン。


この世界は、剣の優劣をつける世界。

だから、最強の剣を決めるために、強い剣士どうしが戦わなきゃいけないのよ。

そういうゲームなんだから、仕方がない。

トライブがそう諭すも、リオンはその言葉で首を横に振る。


リオンは、あくまでも剣ではなく体で意思を伝えているようだ。

トライブ……。


俺と戦ったことがあるのなら、俺の使ってきた剣が何かは知ってるよな。

えぇ、知ってるわよ。

ライトニングセイバーでしょ。



今もここにあるわけよね。

そう。


そうなんだけどさ……、このライトニングセイバーが俺のソウルウェポンなのか、自信なくなってしまったんだ。

再び首を横に振るリオンに、トライブはそっとその肩に手を差し伸べる。

そのまま、語り掛けるような声でリオンに告げた。

大丈夫よ。

リオンは、私と戦ったときもライトニングセイバーを力強く使いこなしてきた。


特に、スパークリングフラッシュを放った時に見せる白い光は、邪悪なものを何もかもを切り裂く正義の光ぽい感じに見えたじゃない。

そう言ってくれると嬉しいんだけどさ……。


さっき、「ゲームマスター」から言われたんだ。

ライトニングセイバーは、俺のソウルウェポンじゃないって。

うそ……。


リオン、そんなことってあるの?

強い剣士たちが集まってくるこの世界では、そんなこと100%ないと思っていた。


でも、「ゲームマスター」はそう言ってしまったんだ……。

さらに首を横に振ったリオンに、トライブは少しだけ目を細める。

違うわよ、リオン。


それは、たぶん「ゲームマスター」がリオンの使い続けてきた剣を知らないだけ。

きっと「ゲームマスター」も、全ての時代の剣士のしてきたことを把握しているわけじゃないと思う。

でも、「ゲームマスター」がルールなんだぜ……。


俺のソウルウェポンは他のところにあるっていうのが、このゲームで求められている俺の姿なんだよ。

リオン、それは考えすぎ。


どうしたら、リオンの持っているライトニングセイバーがソウルウェポンと認めてもらえるのかしら……。

リオンも、前向きにそう考えたほうがいいわ。

すると、ここでリオンがようやくライトニングセイバーに手を伸ばし、ゆっくりと剣を引き抜いた。

そして、一歩下がった後、トライブの側に真っすぐ向ける。


スパークリングフラッシュを使わなくても、木々の間の光に照らされたリオンの剣は真っ白に輝いていた。

なら、本当に俺の剣がソウルウェポンかどうかを確かめてやるさ!


もし、ライトニングセイバーが本当に俺のソウルウェポンだったら、俺の剣が強いって証明されるわけだからな。

何と言っても、所詮トライブは女剣士だからな。俺が勝つに決まってるさ。

リオンが……、自分の剣を証明するために戦うわけね。

そう来たか……。


やっぱり、リオンとの勝負は避けられそうになかったのね。

トライブは、アルフェイオスをリオンの持つライトニングセイバーと一直線になるように、鋭く伸ばした。

リオンの表情と、動き出そうとする瞬間を確かめながら、トライブは目を細める。



だが、トライブはわずか数秒後に、はっと息を飲み込んだ。

すぐにアルフェイオスを腰の高さまで下ろし、再びリオンの前に立った。

トライブ……、どうしたんだよ急に。


戦わないのかよ。

リオン。


もしその剣が、リオンのソウルウェポンだったとしたら、私とあなたの間で勝敗をつけるわけにはいかないわよ。

どちらかの剣が、この世界から消えてしまうんだから。

ど、どういうことだよ……。

リオンの表情を見る限り、彼が「ゲームマスター」からそのルールを伝えられていない様子だ。


すると、ソフィアがトライブの真横に立ち、その手に持ったオルティスの刀をリオンに見せた。

リオン。

この世界では、負けたらこうなってしまう。


この刀、私が使ってる武器じゃない。

私を倒した、オルティスという剣士の武器にされてしまうの。

そう。ソウルウェポンが、勝負のたびに消えてしまうのよ。


そういうゲームだから、生き残るために勝負するのは仕方ないとは思う。

でも、もしリオンの剣がソウルウェポンだったとしたら、私が勝ったときにリオンは大切な剣を……、ソウルウェポンと証明された瞬間に失ってしまうことになるわ。

恐ろしい世界だ……。

リオンは一度うなずいた。


だが、彼はそれでも剣を引っ込めようとはしなかった。

その代わり、一歩ずつ後ろに下がり、ライトニングセイバーを再び力強く握りしめた。

リオン……。

やっぱり俺は、それでも証明したいんだ。


俺の持っている剣が、俺の持つべき剣であるかを。

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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター/剣=アルフェイオス

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳/剣=ストリームエッジ

女剣士で、トライブの最大の親友、かつ最大のライバル。

実力で上回るトライブに追いつき、いつかソードマスターになりたいと強く願っている。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター/剣=ライトニングセイバー

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター/刀=名称不詳

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

ゲームマスター


最強の剣を決するゲーム「ソードレジェンド」を司る謎の男。

剣を持ったときの実力は、計り知れない。

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