07 告げられた運命
文字数 2,569文字
リオンがトライブのことを全く知らない。
そのことをはっきりと察したトライブは、リオンの前に一歩出て、左の人差し指で彼女の顔を指差した。
リオンがソフィアの手を取り、軽く握手を交わす。
その手が、トライブを相手にしたとき以上に親近感に溢れていることに、トライブはわずかに首をかしげた。
じゃあ、俺も自己紹介するよ。
俺は、リオン・フォクサー。オメガピースのソードマスターというより、ルーファスの街の騎士団長だ。
たぶん、トライブの時代も街の平和は続いていると思うけど、俺たちの頃はモンスター撃退率No.1だったんだからさ!
ソフィアが、思わずリオンに抱きつきそうなしぐさを見せる。
だが、リオンが決して乗り気でないことに気付き、すぐにその体を引っ込めた。
リオンは、ライトニングセイバーを構えるどころか、右手のひらをトライブの顔に近づけ、その動きを止めた。
力の勝負をしようとしないリオンに、トライブは一歩後ろに下がる。
トライブがそう諭すも、リオンはその言葉で首を横に振る。
リオンは、あくまでも剣ではなく体で意思を伝えているようだ。
再び首を横に振るリオンに、トライブはそっとその肩に手を差し伸べる。
そのまま、語り掛けるような声でリオンに告げた。
大丈夫よ。
リオンは、私と戦ったときもライトニングセイバーを力強く使いこなしてきた。
特に、スパークリングフラッシュを放った時に見せる白い光は、邪悪なものを何もかもを切り裂く正義の光ぽい感じに見えたじゃない。
すると、ここでリオンがようやくライトニングセイバーに手を伸ばし、ゆっくりと剣を引き抜いた。
そして、一歩下がった後、トライブの側に真っすぐ向ける。
スパークリングフラッシュを使わなくても、木々の間の光に照らされたリオンの剣は真っ白に輝いていた。
なら、本当に俺の剣がソウルウェポンかどうかを確かめてやるさ!
もし、ライトニングセイバーが本当に俺のソウルウェポンだったら、俺の剣が強いって証明されるわけだからな。
何と言っても、所詮トライブは女剣士だからな。俺が勝つに決まってるさ。
トライブは、アルフェイオスをリオンの持つライトニングセイバーと一直線になるように、鋭く伸ばした。
リオンの表情と、動き出そうとする瞬間を確かめながら、トライブは目を細める。
だが、トライブはわずか数秒後に、はっと息を飲み込んだ。
すぐにアルフェイオスを腰の高さまで下ろし、再びリオンの前に立った。
リオンの表情を見る限り、彼が「ゲームマスター」からそのルールを伝えられていない様子だ。
すると、ソフィアがトライブの真横に立ち、その手に持ったオルティスの刀をリオンに見せた。
そう。ソウルウェポンが、勝負のたびに消えてしまうのよ。
そういうゲームだから、生き残るために勝負するのは仕方ないとは思う。
でも、もしリオンの剣がソウルウェポンだったとしたら、私が勝ったときにリオンは大切な剣を……、ソウルウェポンと証明された瞬間に失ってしまうことになるわ。
リオンは一度うなずいた。
だが、彼はそれでも剣を引っ込めようとはしなかった。
その代わり、一歩ずつ後ろに下がり、ライトニングセイバーを再び力強く握りしめた。