28 「ゲームマスター」、剣を抜く!
文字数 2,632文字
「ゲームマスター」に掴まれたソフィアは、体を左右に揺らしながら何とかその手から逃れようとしていた。
だが、力ずくで持ち上げた「ゲームマスター」の手は、簡単に離してはくれなかった。
そう言うなり、「ゲームマスター」はソフィアを地面に突き飛ばし、すぐに右手から紫色の光を放った。
その手には、エクスリボルバーがしっかりと握られていた。
トライブが「ゲームマスター」の剣の動きをじっと見つめる中、ソフィアはストリームエッジを正面から突き出し、「ゲームマスター」の剣の動きを食い止めようとした。
だが、振り下ろされた剣のパワーに圧倒され、ソフィアの足が一歩ずつ後ろに下がっていく。
反撃しようにも、「ゲームマスター」が次々と剣を叩きつけ、その度にソフィアの手に力が入らなくなっていく。
何回かに渡って正面から攻撃し続けた「ゲームマスター」の剣が、再び真上に上がった。
次の動きを考える余裕擦らないソフィアも、何とか剣の動きだけはその目で追うことができたが、それがせいぜいだった。
振り下ろされたエクスリボルバーが、ソフィアの右肩を切り裂き、ソフィアはストリームエッジを持ったまま地面に叩きつけられた。
「ゲームマスター」の足が、ソフィアを上から踏みつけようとしていた。
そのすぐ後には、鋭くとがったエクスリボルバーが、ソフィアの心臓にまっすぐ向いている。
トライブの足が、ついにソフィアに向けて飛び出した。
そして、その手に持ったアルフェイオスで、振り下ろそうとしたエクスリボルバーに激しく叩きつけた。
トライブは、やや目を細くして「ゲームマスター」にまっすぐアルフェイオスを向けた。
「クィーン・オブ・ソード」の輝きが、いま黒きシルエットに向けて解き放たれようとしている。
ソフィアがようやく体を起こし、トライブと「ゲームマスター」から身を離し、向き合う二人をじっと見た。
同時に、「ゲームマスター」の足が軽々しく地を蹴った。
ソフィアのときと同じように、「ゲームマスター」はエクスリボルバーを振り降ろしながらトライブに迫る。
それを見て、トライブもアルフェイオスを持ち上げ、やや高いところで相手の剣にぶつけようとした。
両者の剣が、トライブの目ほどの高さで激しくぶつかった。
アルフェイオスが下に回り込んでいるが、そこでトライブは剣を持つ手に力を入れ、それ以上下げるのを食い止めた。
そして、一瞬エクスリボルバーから力が抜けたとき、トライブはアルフェイオスを一気に上げ、エクスリボルバーをトライブの右に反らした。
トライブは、少し手前に引かれたエクスリボルバーに、アルフェイオスを強く叩きつけた。
今度は正面でぶつかる。その時には、「ゲームマスター」も体勢を立て直し、迫ってきたアルフェイオスを懸命に食い止める。
そして、すぐに「ゲームマスター」の側から剣の打ち合いに持ち込んでいく。
体の重心を限りなく前に傾けながら、「ゲームマスター」の剣がトライブのアルフェイオスを次々と叩きつけにかかった。
トライブの手に、「ゲームマスター」のパワーがじわじわと伝わる。
トライブは、足を引かないように重心をかけるが、体が徐々に反っていくのを感じずにはいられなかった。
エクスリボルバーの動きを何とか止めるのが精一杯のトライブは、ここで体を右に反らし、その隙にアルフェイオスを持つ手に力を入れた。
そして、「ゲームマスター」が体の向きを変えた瞬間、その正面に向けられたエクスリボルバーに向かって、アルフェイオスを鋭く叩きつけた。
エクスリボルバーに芯をぶつけた。
力強く叫ぶ女王の感覚は、勝利への確信に変わった。
だが、相手が叩き落としたような音は――なかった。
地面に向かってエクスリボルバーが傾いただけで、「ゲームマスター」が肩で激しく呼吸をしながら、その手で懸命にこらえていたのだった。
ソフィアが立ち上がろうとしたとき、「ゲームマスター」はその姿を光の中に消した。
そのシルエットが消えていくのを、トライブとソフィアは、ただ目で追い続けるしかなかった。