15 オルティスの刀は弱かった

エピソード文字数 2,510文字

その刀で私と戦うって……、ソフィア、本気で言ってるの?

「オメガピース」に入ってからこれまで、何度となくソフィアと剣を交わしてきたトライブの目は、驚きを隠せなかった。


一見筋は通っているように見えるが、勝敗が明らかすぎるゲームをやるようなものだ。

たぶん、トライブはストリームエッジを持った私のほうが強いって思ってるから……、心配してくれてると思うんだ。

えぇ……。


でも、ソフィアがそう言ったってことは、オルティスの刀を持って戦うことにしたわけでしょ。

そう。


やっぱり、剣が失われたことをいつまでも嘆いていてはいけないと思うし、結局ソウルウェポンを持っていなくても、この世界じゃ狙われてしまう。

その時、私はこのオルティスの刀で何ができるか、考えてみたの。

そういうことなのね。


なら、ソフィア。

いつものように本気でかかってきていいわ。


私も本気でいく。

トライブは、アルフェイオスの先をソフィアに向ける。

普段は合わせることのない二つの武器が、いま一直線になる。


そして、二人の女剣士の足が、同時に地面を蹴り上げた。

アルフェイオスを食い止めるっ!
はあっ!

トライブは、アルフェイオスを高く上げ、ソフィアの持つ刀に向けてまっすぐ振り下ろす。

新しい武器を持つソフィアの手がが、しっかりと握られているのが、トライブの目に飛び込む。


刀に、ソフィアの力が付いて来れば、相当のパワーが生まれる。

かつてオルティスと勝負し、激闘の末に打ち勝ったトライブは、かすかにその可能性を信じた。

せいっ!
はああっ!

アルフェイオスに向けて刀を叩きつけようとするソフィアは、力強い叫びとともにその武器を振り上げた。

だが、刀が重いのか、ソフィアの狙っていたスピードにならないまま、振り下ろされたアルフェイオスに逆に力で抑え込まれてしまう。

破壊力は……、私のほうにあるはず……!

歯を食いしばって、アルフェイオスを引き離そうとするソフィア。

だが、その刀が自慢できるほどには、破壊力がアルフェイオスに伝わらない。

その程度の破壊力しかないわけね。


この勝負、あっけなく終わるわよ!

トライブは、アルフェイオスを刀から軽く話し、その間剣先に一気にパワーを集中させる。


そして、次の攻撃に出ようとしたソフィアの動きを遮るかのように、「剣の女王」の力強い叫びが二人の間に響く。

はあああああっ!
……っ!

目をつぶったソフィアの手から、次の瞬間オルティスの刀が勢いよく落ちていく。


刀が落ちる音で、ソフィアはガックリと首を垂れて、二回、三回とその首を横に振る。

こんなはずじゃ……。

それは、私だって言いたいわよ。

空しくて、勝負を決めた瞬間に泣きたくなった。


ソウルウェポンじゃないのはリオンと同じだけど、リオンはずっとその武器で戦い続けたから、あの力が出せたのよ。


やっぱり、親しんだ武器を持たなければ、剣士はパワーを発揮できないのよ。

やっぱり、剣で戦うことの重みを知っているトライブに、そう言われると思った。


勝負は、早かった……ね。

でも、強くなりたい気持ちまでは間違ってなかったと思う。

俺も、そう思うよ。

遠くで話を聞いてて、そこまでしてトライブに勝負を申し込むソフィアがたくましいと思った。

物陰に隠れてバトルを見てきたリオンが、何度か首を横に振りながら二人の前に立った。

リオンの、やや悩んでいるような表情に、トライブはしばらくしてからうなずいた。

ごめん。私、厳しいことを言ったかも知れない……。


ソフィアや……、リオンが現実を受け入れようとしているのに、不慣れな武器で戦うソフィアの気持ちに気付かなかった……。

謝ることじゃないと思う。

それが、常に本気で戦い続けてきたトライブの信念なんだし。


私とトライブの差は、たぶんそのストイックさだと思う。

ありがとう、ソフィア。



でも、これだけは聞かせて。

いつかは、ストリームエッジを取り返したいでしょ?

今のところ、当然。


勝手にこの世界から消え去ることなんて、ないはずなんだから。

きっと、この世界の誰かが持っているような気がする。

そう言うと、ソフィアは左右を見渡し、戦いの終わったその場所を狙っている次の標的がいないかを確かめた。


オルティスも、それにアーディスもいるような気配ではなかった。

分かった。


ソフィアがそう思っているなら、探し続けるわよ。

このゲームの中に眠る、ソフィアの本当の剣を。

俺も、手伝ってやるよ。

自分の「ソウルウェポン」を見つけるのも重要だけど、このままじゃソフィアがかわいそうだよ。

トライブとリオンの手が、同時にソフィアに向けられる。

ソフィアは、両腕を伸ばし、二人の手を力強く握りしめた。

ありがとう。

私、これから足手まといになっちゃうかも知れないけど……、なるべく迷惑かけないようにこの世界で生きていこうと思う。

分かったわ。

そこまで言うと、トライブもソフィアと同じように左右を見渡し、周囲に敵がいるかどうかを確かめた。

ほぼ同時に、リオンの目も周囲を確かめるような動きをする。


だが、三人の剣士が見渡したところで、三人のほかに剣士はいなかった。

せっかくいい場面なのに、手がかりなしってところだな。


普通は、こういう場面を狙って、新しいことが始まりそうな気もするんだけどな。

そうね。

なかなか、現実にはうまくいかないわ。


でも、「ソードレジェンド」の世界の全体像だって、まだ掴めていない。

フィールドの端から端まで歩けば、きっと手掛かりはついてくるわ。

トライブは、そこまで言うと首をやや斜めに傾け、遠くに見える森を指差した。

距離的にも、あそこが私たちが落ちる前にいた森ね。

川が下流に下っていくことを考えたら、「ゲームマスター」はこの川の下流に行かせたいと思っているような気がする。

じゃあ、低いほうに進んで、やがて土の下から水が出てくるところに進めばいいってわけか。


次の手掛かりになるか分からないけど、トライブの言う通り下流を目指したほうがいいな。

リオンがそう言うと、ソフィアも同時に首を縦に振った。

そして、トライブの右足を合図に、三人の足がなだらかな草原地帯を下り始めた。

「ゲームマスター」は、剣士たちに何をさせようとしているのかしら……。


絶対、この展開は裏に何かある……。

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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター/剣=アルフェイオス

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳/剣=ストリームエッジ

女剣士で、トライブの最大の親友、かつ最大のライバル。

実力で上回るトライブに追いつき、いつかソードマスターになりたいと強く願っている。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター/剣=ライトニングセイバー

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター/刀=名称不詳

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

ゲームマスター


最強の剣を決するゲーム「ソードレジェンド」を司る謎の男。

剣を持ったときの実力は、計り知れない。

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