15 オルティスの刀は弱かった
文字数 2,510文字
「オメガピース」に入ってからこれまで、何度となくソフィアと剣を交わしてきたトライブの目は、驚きを隠せなかった。
一見筋は通っているように見えるが、勝敗が明らかすぎるゲームをやるようなものだ。
そう。
やっぱり、剣が失われたことをいつまでも嘆いていてはいけないと思うし、結局ソウルウェポンを持っていなくても、この世界じゃ狙われてしまう。
その時、私はこのオルティスの刀で何ができるか、考えてみたの。
トライブは、アルフェイオスの先をソフィアに向ける。
普段は合わせることのない二つの武器が、いま一直線になる。
そして、二人の女剣士の足が、同時に地面を蹴り上げた。
トライブは、アルフェイオスを高く上げ、ソフィアの持つ刀に向けてまっすぐ振り下ろす。
新しい武器を持つソフィアの手がが、しっかりと握られているのが、トライブの目に飛び込む。
刀に、ソフィアの力が付いて来れば、相当のパワーが生まれる。
かつてオルティスと勝負し、激闘の末に打ち勝ったトライブは、かすかにその可能性を信じた。
アルフェイオスに向けて刀を叩きつけようとするソフィアは、力強い叫びとともにその武器を振り上げた。
だが、刀が重いのか、ソフィアの狙っていたスピードにならないまま、振り下ろされたアルフェイオスに逆に力で抑え込まれてしまう。
歯を食いしばって、アルフェイオスを引き離そうとするソフィア。
だが、その刀が自慢できるほどには、破壊力がアルフェイオスに伝わらない。
トライブは、アルフェイオスを刀から軽く話し、その間剣先に一気にパワーを集中させる。
そして、次の攻撃に出ようとしたソフィアの動きを遮るかのように、「剣の女王」の力強い叫びが二人の間に響く。
目をつぶったソフィアの手から、次の瞬間オルティスの刀が勢いよく落ちていく。
刀が落ちる音で、ソフィアはガックリと首を垂れて、二回、三回とその首を横に振る。
それは、私だって言いたいわよ。
空しくて、勝負を決めた瞬間に泣きたくなった。
ソウルウェポンじゃないのはリオンと同じだけど、リオンはずっとその武器で戦い続けたから、あの力が出せたのよ。
やっぱり、親しんだ武器を持たなければ、剣士はパワーを発揮できないのよ。
物陰に隠れてバトルを見てきたリオンが、何度か首を横に振りながら二人の前に立った。
リオンの、やや悩んでいるような表情に、トライブはしばらくしてからうなずいた。
そう言うと、ソフィアは左右を見渡し、戦いの終わったその場所を狙っている次の標的がいないかを確かめた。
オルティスも、それにアーディスもいるような気配ではなかった。
トライブとリオンの手が、同時にソフィアに向けられる。
ソフィアは、両腕を伸ばし、二人の手を力強く握りしめた。
そこまで言うと、トライブもソフィアと同じように左右を見渡し、周囲に敵がいるかどうかを確かめた。
ほぼ同時に、リオンの目も周囲を確かめるような動きをする。
だが、三人の剣士が見渡したところで、三人のほかに剣士はいなかった。
リオンがそう言うと、ソフィアも同時に首を縦に振った。
そして、トライブの右足を合図に、三人の足がなだらかな草原地帯を下り始めた。