46 このゲームに残る必要性
文字数 2,516文字
それは、このゲームにおいて、この剣に運命を感じたからさ。
ヘヴンジャッジがソウルウェポンである以上、俺はこの剣で戦って、行けるところまでいかないと。
そう思ったんだ。
でも、俺の希望は剣とともに打ち砕かれた。
トライブは、リオンの言葉に低い声で相づちを打つだけだった。
ソフィアの顔が、ほんの少しだけトライブに向けられるのを、彼女の目は感じた。
そう言って、リオンは目線をトライブから反らそうとした。
その時、これまで黙って様子を見ていたアーディスが、リオンに小さく声を掛けた。
俺も一緒に行って……、いいかな……。
こんなあっけなく離ればなれになるの、なんだかなと思うんだが。
俺の中では、リオンが最強だと思うけどな……。
慣れ親しんだ剣というのが真実であれば、慣れ親しんだ仲間というのも、また真実じゃないかと思う。
この場にいる剣士たちの中で、リオンの言葉の意味合いを知っているのは、トライブだけだった。
それでも、トライブすら何も言おうとしなかった。
そのまま、何も言うことなく、何の武器も持たずに立ち去っていくリオンに、トライブとソフィア、それにアーディスがその後ろ姿を見つめる。
二人の目線の先から、リオンの緑色のマントが完全に消え、小さな木の葉が風に舞う中で彼の存在は消えていった。
ソフィアが気が付くと、アーディスが彼女の横に立ち、横目でその表情を見つめていた。
俺は、リオンが守ってくれるって信じてたけどな。
いまリオンに付いて行ったところで、慣れ親しんだわけじゃないヘヴンジャッジで自分の身を守るしかないんだし。
アーディスは、コピーのヘヴンジャッジに手をかけたが、その手は力なく柄から落ちていった。
それから、彼は小さく首を左右に振った。
アーディス。
私たちが、あなたを守るわ。
どう考えたって、逆恨みでアーディスをこの世界に連れ込んだ、アッシュが悪いはず。
フォローをしなかったというのを差し引いても、この世界に連れ込んでまであなたを恨み続けるなんて、あり得ないのだから。
そう言うと、ソフィアは木に向かって静かに歩き出した。
そして、立てかけられたストリームエッジを掴んで、一度しまった本物のストリームエッジと見比べた。
二人がほぼ同時にうなずき、続いてソフィアの足が森の中へと消えていった。
一歩、また一歩と遠くなっていくソフィアを、トライブは暖かく見守っている。
その様子を、後ろから見たアーディスが、トライブにだけ聞こえるように小さな声で呟いた。
トライブは、やっぱり年齢の割に大人なのかも知れない……。
ソフィアも……。
トライブとアーディスだけが残されたその場に、二人の髪を軽く揺らす風が吹き抜けていった。
その風は、普段より強く感じられた。