31 俺のライトニングセイバーは死守する
文字数 2,520文字
薄暗い光に照らされ、茶髪の青年がオルティスを睨み付けるように立つ。
その手にソウルウェポン・ヘヴンジャッジを携え、その剣をまっすぐオルティスに向けた。
オルティスは、トライブに背を向け、一歩ずつリオンに近づく。
その手には、ソウルウェポンの刀と、ライトニングセイバーが握られている。
だが、二刀流で戦おうという意思を見せるオルティスに、リオンはその足を全く引く気配がなかった。
二人を見つめるトライブ、そしてソフィアは、リオンの表情から気迫が見えていた。
一本の剣を使い続けた身としてーートライブで言うアルフェイオスと同じようにーーその剣を手放さないという強い意思が、言葉の隅々に溢れ出ていた。
ついにそのことをオルティスに伝えたリオンの目は、少しだけ勝ち誇ったかのようにトライブたちの目に見えた。
だが、その表情を前にしても、オルティスは笑っていた。
その言葉を言い放った瞬間、リオンもトライブも、ソフィアでさえも、その足を一歩オルティスに近づけた。
誰もが、オルティスを睨み付けていた。
その中で、トライブだけがその足の勢いを止めることなく、オルティスの前に立った。
アルフェイオスを高く持ち上げ、その剣先をオルティスの目に見せる。
そして、通路の中で湧き上がる、トライブの強い声ーー
それは一理あるわ。
それでも、オルティスがその刀を使いこなせているから、私やソフィアに勝てるほどの力を出せたことだって、間違いのないことよ。
逆に、慣れない剣を使い始めたところで……、それまで力を見せつけた剣と同じくらいの実力を出せるまで、ものすごく時間がかかるはずよ。
それがたとえ、オルティスや私のように……、周りから強い剣士と言われている存在であっても!
俺だって、そう思うよ。
オルティス、そのライトニングセイバーは、勝手にお前が使えるもんじゃない。
少なくとも、このゲームではそうなっている。
せめて、この剣を使うべき存在に勝ってから、そんな戯言を口にするんだ。
トライブの持つアルフェイオスと、リオンの持つヘヴンジャッジ。
その二つの刃を同時に見せつけられたオルティスの手から、無意識にライトニングセイバーが落ちていく。
そして、軽い音を立ててライトニングセイバーがリオンの足下に転がった。
ようやくソフィアもトライブに駆け寄って、遠くに去りゆくオルティスを見つめていた。
その二人の前に、リオンが回り込むように立った。
トライブもソフィアも、ほぼ同時にうなずいた。
だが、軽く笑ったはずのリオンの目が鋭くなるのを、トライブは気付いた。
そういうことになるわ。
でも、リオンはそのことを分かっていると思う。
強くなるために、どれだけ習熟したか、計り知れないはずよ。
逆に、オルティスのように自分は強いと言ってるほうが……、本当は脆い存在なのかも知れないわ。
トライブは、その言葉を軽く笑いながら言った。
リオンが苦笑いしながらうなずくのを、じっと見つめるしかなかった。
まぁ、それは薄々気付いていたわ。
五本中二本は、「ゲームマスター」が持っているわけでしょ。
もしオルティスが私たちから二つ、そしてバルムンクを手に入れても、五本揃うことはないわ。
オルティスが変なことをしなければ、だけど。
トライブは、ソフィアの言葉を聞いた瞬間、それが何であるかをすぐに察した。
アルフェイオスを斜め下に向けたまま、その「嫌な予感」が起こった後のことを考えざるを得なかった。