39 穴に消えたリオン
文字数 2,597文字
リオンは、トライブに言われたとおりに、茂った木の上を覗き込んだ。
枝と枝の間までじっと見つめ、少しだけ首を動かしたとき、突然彼の右手が高く上がった。
今度は、トライブが木の幹を掴み、体を伸ばしながら枝を見つめた。
トライブが思ったとおり、平らになっている部分には、かすかに剣で刺した跡が見えた。
トライブの声に被さるように、上からオルティスの声がはっきりと響いた。
リオンの目が、すぐさまその声に向けられた。
トライブがそう言うと、リオンは木の幹を掴み、ヘヴンジャッジを左手に持ったまま片手で登り始めた。
先程見た平らな部分まで到達すると、そこから先はリオンの靴ほどの幅の枝がオルティスのほうへと伸びており、リオンは一歩ずつオルティスへと近づく。
その時だった。
トライブたちの耳に、誰かが強く地面を踏みしめたような重い音が響き、次の瞬間オルティスのいた枝が大きく揺れた。
トライブとリオンは、オルティスからやや離れたところで、彼に剣の先を向ける。
ほぼ同時に、オルティスも刀、そして五聖剣の一つバルムンクを、やや斜めに傾けて二人を見つめた。
リオンが、オルティスの後を追ってジャンプしようと枝から足を踏み出した。
だが、運悪く、彼の真下にソフィアがストリームエッジを持って立っている。
枝にぶら下がって垂直に降りるしかないようだ。
トライブは、葉に見え隠れするリオンの髪の毛を細い目で見つめながら、やや鋭い口調でこう言った。
だが、ほぼ同時にオルティスの顔も、同じ方向を見つめた。
ソフィアの足が一歩前に出て、オルティスを見つめる。
その時、トライブがアルフェイオスを手前に引き、左手でソフィアの肩を軽く叩いた。
トライブとソフィアがゆっくりとオルティスから離れていくと、代わりにリオンがオルティスの目の前に立った。
すると、逆にオルティスの方が二つの刃を下に向け、軽く笑いながらリオンに近づいた。
オルティスが体の向きを変え、木の横までゆっくりと足を進めた。
彼が足を止めたのは、リオンも調べた穴だった。
すると、オルティスは穴に自ら足を踏み出した。
トライブが軽く口を開けて見守る中、オルティスは決してそのまま下に落ちることはなかった。
一歩ずつ着実に降りている。穴を削るときに階段を作ったのだろうか。
同じように、あっけに取られているリオンに、オルティスは10段ほど下で振り返った。
リオンは、オルティスの後を追って、地下への階段を踏み出した。
やがて、リオンの茶髪がトライブたちの目から見えなくなってしまった。
その時、それまで何一つ話さなかったアーディスが、ゆっくりとトライブの後ろから近づいてきた。
オルティスの奴、相手を指定するようになったか。
ソウルウェポンを失った俺は、このゲームに参加している必要ないような気がするが、違うか。
突然、アーディスの口からこぼれた言葉に、トライブは振り返って、やや目を下に向けた。
アーディスの手には、リオンからコピーで渡されたヘヴンジャッジが握られていた。
トライブは、軽くかみしめた唇をいつほどくか、そのタイミングを考えるのがやっとだった。
その時、ソフィアの手が、トライブの肩を叩いた。
ソフィアの震える唇を見て、トライブはかすかにうなずいた。
そして、何も知らされていないアーディスの目をじっと見つめた。