29 二人を追って
文字数 2,577文字
トライブとソフィアは、先にリバーサイドタウンに向かったリオンとアーディスを追いかけた。
来た道をとんぼ返りすることとなるが、その道のりは二人が思っているほど近くはなかった。
なだらかな坂を下り、川に沿うように歩くが、リバーサイドタウンの入口が遠くにしか見えてこない。
それどころか、リオンやアーディスの背中も見えてこないのだった。
そして、想定していた以上の時間が過ぎた後に、トライブとソフィアがリバーサイドタウンに戻った。
ソフィアは、数日前に街の人々から情報を聞いたときのことを思いだした。
だが、武器が並んでいるような店を見た記憶はなかった。
二人は、とりあえず店が建ち並ぶメインストリートの看板を一軒一軒見た。
だが、武器を扱ってそうな店は見当たらない。
そう言いながらも、トライブはメインストリートをUターンしようとした。
だが、トライブは次の一歩を踏み出したとき、何か異変に気が付き、その場所を右のつま先で軽く叩いた。
その剣の実力で、何度もトレジャーハントを成功させているトライブの勘が、いま足下に広がっている世界を指差した。
タイルは2メートル四方で、もしその下に穴が空いているとしたら、人が一人入ってしまいそうなところだった。
すぐにソフィアもトライブの横に立ち、二人で同時にタイルを持ち上げた。
トライブたちがタイルを持ち上げると、そこには地下への隠し階段があった。
しかも、階段の先には少しだけ灯りが点っている。
何かがある。
トライブはそう思うしかなかった。
そう言うと、トライブはその足を隠し階段のステップに乗せた。
手すりのない階段を、数段上の階段に手を掛けながら降りていった。
その後をソフィアも付いていく。
30段ほどある階段を下りきったとき、トライブは思わず息を止めた。
二人の前には、かすかなランプの光とともに、だだっ広い通路が広がっていた。
通路と言うより、水路かトンネルか、明らかに人の手によって作られた世界だ。
トライブとソフィアは、広い通路を進んでいった。
だが、次第に二人は自分たちの足音しか聞こえないことに気付いた。
タイルがああなっていたということは、少なくともそこからは入ってないわね。
でも、こんな人工的な通路なんだし、もしかしたら全然違うところから入った可能性はある。
幸い、この通路は今のところ分かれ道がないわけだし、進めるところまで行った方がいいかも知れない。
二人は、ランプの灯りだけを頼りに、通路を奥に進んでいく。
そして数百メートル歩いたとき、トライブは天井から響いてきた音に足を止めた。
トライブは少しだけ目を細め、剣の音が聞こえてきた方向に歩き出す。
通路の奥、おそらくこの場所から数百メートルは離れていないところのように、トライブには思えた。
そして、角を曲がったところでトライブは遠くを指差した。
トライブは、飛び出したはずの角に身を寄せ、オルティスと思われる青年に気付かれないように右の人差し指を向けた。
その後ろから、ソフィアも顔を覗かせ、すぐに息を飲み込んだ。
トライブは、体を角に潜めたまま、オルティスの動きを見つめる。
すると、オルティスは壁を軽く叩き、その硬さを確かめているようだった。
しかも、壁のブロック一つ一つでそれをやっている。
トライブの姿が仮に見えたところで、すぐにやってくるような様子ではなかった。
だが、しばらくしてオルティスの手が止まった。
一つのブロックが奥に動いたのだった。
トライブは、思わず後ろに重心を傾けた。
オルティスの手に握られていたのは、白く輝くライトニングセイバーだったのだ。