10 ソフィアの後を追って
文字数 2,584文字
たぶん、私も何となくそういうような気がする。
ソウルウェポンを失ったら、戦っていた相手の剣に変えられてしまうから、とても今までのように戦うことなんかできない。
負けた剣士は、戦いたくても戦えないことになるわ。
逆に言うと、私やオルティスのようにソウルウェポンを持っていれば、今のところ最強ということになりそうね。
トライブはそう言いつつも、森を見渡した。
念のため、足下も確かめたが、トライブの周囲にはミッションが始まるような予兆は何一つ見当たらなかった。
トライブが、かすかに笑いながらそう言ったとき、その耳にかすかに地面が崩れるような音が聞こえた。
気が付いたトライブは、すぐにリオンから目を反らし、ソフィアに目線を移そうとした。
立っていた場所に、ソフィアはいなかった。
ソフィアの立っていた場所だけが、突然穴の空いたような状態になり、ソフィアが声とともにその穴に吸い込まれた。
声が消えていくスピードを考えれば、ほぼ垂直に穴に落とされたとしかトライブには思えなかった。
そう言うと、リオンは真っ先に穴の前まで進み、周囲を見渡した。
ちょうどいい具合に、木の陰にロープが隠れていた。
そのロープを手にとって、地面に打ち込んだ杭に巻き付け、穴の中にロープを入れる。
そして、慣れた手つきでロープを上から下まで降りていこうとした。
トライブがうなずくのを見て、リオンがロープを伝って下に降り始めた。
トライブは、リオンが降りる様子を穴の上からじっと見る。
その時、穴の底からリオンが息を飲込むような音が響いた。
トライブは、アルフェイオスをその場に置いて、ロープを両手で強く持った。
そして、力いっぱい引き上げようとした。
しかし、トライブとリオンの体重差が大きい上に、ロープを引っ張り上げる経験もトライブにはほとんどなかった。
すぐに、トライブの全身に汗がにじみ出た。
そして、次の瞬間、逆にトライブのほうが重力に引っ張られ始め、ついには杭のほうが抜けてしまった。
トライブは、ロープを掴んだまま上下逆さまになって穴の下へと落ちていく。
ほぼ重力に逆らうまま、既に落下を始めているリオンの後を追うように落ちるしかなかった。
穴の入口が遠くにかすみかけた時、トライブはリオンの背中と思われるような場所に叩きつけられ、すぐにリオンのほうに目線を移した。
トライブは、リオンの声を聞き、かすかに口元を緩ませた。
だが、ほぼ同時にトライブは、垂れた手で液体のようなものを掴んでいることに気が付いた。