10 ソフィアの後を追って

文字数 2,584文字

もしかして、その上下関係を見た目で判別できるようにするために、ソウルウェポンが消されるようになっているんじゃないかな。


俺の予想だけど。

たぶん、私も何となくそういうような気がする。



ソウルウェポンを失ったら、戦っていた相手の剣に変えられてしまうから、とても今までのように戦うことなんかできない。

負けた剣士は、戦いたくても戦えないことになるわ。


逆に言うと、私やオルティスのようにソウルウェポンを持っていれば、今のところ最強ということになりそうね。

リオンとトライブが続けてそう言う中で、ソフィアはかすかに首を横に振った。
トライブ、そう考えたらソウルウェポンって別の意味を持ってそうな気がする。
ソフィアは、どう思ってるの?

あくまでも、このゲームの生き残りかそうじゃないか、ということを判別しているだけかも知れない。


私にこの刀、不釣り合いでしょ。

まぁ、ソフィアみたいな表情をした女が持つような刀じゃないよな。
リオンがかすかに笑いながら言うと、ソフィアはやや顔をしかめながらも言葉を続けた。

まぁ、私だって不釣り合いだと思っているの。


リオンがそう思うくらいなんだから、私は「ソードレジェンド」から脱落したって、どの剣士からも思われている。

ソフィアの言ってたほうが、正しいのかも知れないわね……。


じゃあ、リオンは一番その力を使いこなしてきた剣、ライトニングセイバーを持っているから、この世界にまだ生き残ってるってことになるわ。

俺の口から言わない限り、俺の剣がソウルウェポンじゃないって気が付かないだろうし。


そう考えると、俺は狙われるけど、そんな相手を次々と倒していけばライトニングセイバーが一番強い剣って証明できるんだよな。

なるほど……。


それなら、私たちの中ではリオンの持っている剣が最強ということにしておこうか。

それは、私が許さない。
急転した話を食い止めるように、トライブは慌ててソフィアの言葉に口を挟んだ。

さっきもそうだけど、トライブって案外負けず嫌いってところあるよな。


俺に負けても、すぐ次の勝負のことを考えるし。

私は、その気持ちを、強くなるための心の支えにしてるだけよ。

たとえ負けたとしても、次に負けなきゃいいんだし。

いつにも増して、前向きなこと言ってるね、トライブ。
ソフィアの言葉に3人とも軽く笑うと、すぐにリオンが真顔になってトライブに告げた。

それにしても、俺たちこの後どうしようか。


と言っても、トライブの話を聞いてる限り、オルティスを探すしかなくなるようだけど。

間違いなく、そうね。


私たち3人の他には、「ゲームマスター」とオルティスしかこの世界で見かけてないんだし。

案外、まだまだ剣士を呼んでいたりして。

そうなったら、剣士たちでこのあたりいっぱいになりそうだけど。

それか、このゲームの中でミッションを与えられたり可能性だってあるよな……。


例えば、オルティスを見つけるためには、何かミッションの一つ二つクリアしなきゃいけないとか、そんな展開が待っているかも。

それは、考えられなくないかも知れない。

トライブはそう言いつつも、森を見渡した。

念のため、足下も確かめたが、トライブの周囲にはミッションが始まるような予兆は何一つ見当たらなかった。

俺たちがそう言うと、ミッションが始まらないという、騎士団ではよくある法則だな。これは。

正夢の逆のこと言ってるのね。


私は、どちらかというと正夢にしてしまうほうかしら……。

トライブが、かすかに笑いながらそう言ったとき、その耳にかすかに地面が崩れるような音が聞こえた。


気が付いたトライブは、すぐにリオンから目を反らし、ソフィアに目線を移そうとした。



立っていた場所に、ソフィアはいなかった。

ソフィア……!
助けてぇーーっ!

ソフィアの立っていた場所だけが、突然穴の空いたような状態になり、ソフィアが声とともにその穴に吸い込まれた。


声が消えていくスピードを考えれば、ほぼ垂直に穴に落とされたとしかトライブには思えなかった。

完全に、誰かがソフィアのところにだけ穴を空けたとしか思えないわね。


私は、ソフィアを助けに行く。

俺も……、行った方がいいよな。

リオンは、別にどっちでもいいわよ。

ライトニングセイバーでオルティスに勝ちたいんでしょ。

今すぐ必要ってわけじゃないし。

さっきまで一緒にいた仲間を見捨てるわけにはいかないさ。

そう言うと、リオンは真っ先に穴の前まで進み、周囲を見渡した。

ちょうどいい具合に、木の陰にロープが隠れていた。


そのロープを手にとって、地面に打ち込んだ杭に巻き付け、穴の中にロープを入れる。


そして、慣れた手つきでロープを上から下まで降りていこうとした。

リオン、結構いろんな冒険の術を知ってるのね。

勿論だとも。


ルーファスを守るためには、こんな危険なミッションだって時にはクリアしなきゃいけないんだし。

トライブも、ロープで降りられるんだろ。

まぁ、多少は……。

トライブがうなずくのを見て、リオンがロープを伝って下に降り始めた。

トライブは、リオンが降りる様子を穴の上からじっと見る。


その時、穴の底からリオンが息を飲込むような音が響いた。

……げ。
リオン、急にどうしたのよ。

頼む、トライブ。


ロープを引っ張り上げてくれ。

全然長さが足りない!

分かった。

トライブは、アルフェイオスをその場に置いて、ロープを両手で強く持った。

そして、力いっぱい引き上げようとした。

リオン、待って……!

いま引き上げる……!

しかし、トライブとリオンの体重差が大きい上に、ロープを引っ張り上げる経験もトライブにはほとんどなかった。

すぐに、トライブの全身に汗がにじみ出た。


そして、次の瞬間、逆にトライブのほうが重力に引っ張られ始め、ついには杭のほうが抜けてしまった。

……っ!

トライブは、ロープを掴んだまま上下逆さまになって穴の下へと落ちていく。

ほぼ重力に逆らうまま、既に落下を始めているリオンの後を追うように落ちるしかなかった。



穴の入口が遠くにかすみかけた時、トライブはリオンの背中と思われるような場所に叩きつけられ、すぐにリオンのほうに目線を移した。

リオン、ごめん!

大丈夫?

ん……、んーっ……。


完全に意識失ってたよ……。

トライブは、リオンの声を聞き、かすかに口元を緩ませた。


だが、ほぼ同時にトライブは、垂れた手で液体のようなものを掴んでいることに気が付いた。

もしかして……、水……?
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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター/剣=アルフェイオス

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳/剣=ストリームエッジ

女剣士で、トライブの最大の親友、かつ最大のライバル。

実力で上回るトライブに追いつき、いつかソードマスターになりたいと強く願っている。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター/剣=ライトニングセイバー

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター/刀=名称不詳

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

ゲームマスター


最強の剣を決するゲーム「ソードレジェンド」を司る謎の男。

剣を持ったときの実力は、計り知れない。

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