19 掴んだ唯一の手がかり

エピソード文字数 2,514文字

リバーサイドタウンの中心部に足を踏み入れた三人の剣士は、ソウルウェポンを持っていそうな剣士を見ていないか手当たり次第に尋ねた。


だが、「オルティスの母親」と称するキャラ以上に有力な手がかりを持っていそうな人はおらず、そもそもどの人もソウルウェポンという言葉が何を意味するか分かっていない様子だった。

トライブ、どうだった?

私は、全然話にならないわ。

ソフィアも、その表情だといい手がかりは見つかっていない……?

ホント、この街で手がかりを見つけるの大変。

あの母親の話を聞いている限り、この街に剣士は現れているはずなのに……。

広場に集まったトライブとソフィアの口から、同時にため息がこぼれる。

すると、ゆっくりとした足取りで戻ってくるリオンが二人の視線に映ってきた。


リオンは、首を横に振りながら二人の女剣士の顔色を伺っている様子だ。

本当にさ……、ここにいるキャラ?っていうの?


「ゲームマスター」によって置かれたキャラ?なのかなって……。

俺、自信なくなってきたよ。

つい1時間も前には、オルティスの母親が「ソードレジェンド」のキャラの一人だと信じて疑わなかったはずのリオンから、深いため息がこぼれる。

リオンが、自信なくなってくるのも分かる気がする。


これだけ人がいるのに、私たちに情報を流そうとしない。

そんなゲームのキャラ、たぶん割合的に多くないような気がするのに……。


もしかしたら、私たちにだけ情報を流さない「キャラ」なのかも知れない。

ソフィアもリオンも……。


そこまで信じられなくなったら、人間は生きていけなくなるじゃない。

手がかりがないのは間違いないけど、一人は絶対に剣士を見たという人がいるはずよ。

たしかに、な……。


トライブの言うとおりだよ。

もしかしたら、俺の聞き方がまずかっただけかも知れないし。

リオン、どういう聞き方を考えたの?

いや、俺は普通にオルティスとかアーディスとか見かけなかったか、って聞こうと思ってるよ。


今のところ、ソウルウェポンを持っていそうな剣士は俺たち以外だと二人しかいないし、ゲームの中で目立つような気がする。


それに、ソフィア。

両方ともこの世界で戦ったことがあるんだろ?

ソフィアが、小さくうなずく。

どちらにも負けていることもあって、その表情はソフィアの脳裏にはっきりと浮かんでくるのだった。

私、外見の特徴とか言って、もう一度説明してみる。


もしソウルウェポンを持ったままこの街に入ったのなら、入口のところであの家に止められることだろうし、意外とそれもあってここでは剣を出していないだけなんじゃない?

それは、間違いなさそうね。


私も、オルティスやアーディスの見た目を説明しながら、もう一度聞いてみるわ。

じゃあ、俺も行くよ。

それから三人の剣士は、リバーサイドタウンで情報を掴んでそうな人々にもう一度尋ねた。

そして、1時間近く経った後、三人は再び広場へと集まった。

言った俺がバカを見たな……。

あの名前でも、全然引っかからなかった。


トライブやソフィアはどうだった?

そうね……。


私も、全くダメだった。

さっきも言ったとか、二回目になると口を閉ざすのも早くなった気がする。


ソフィアは?

トライブがソフィアに顔を向けると、ソフィアはやや恥ずかしそうな表情を浮かべてうつむいていた。


リオンが下からソフィアの顔を覗き込むと、ようやくソフィアは首を持ち上げた。

剣士の情報を持ってる人が、たしかにいた……。

でも、言っていいのか私には分からない。

むしろ、そう言われると聞きたくなるじゃない。

そんな恥ずかしい話なの?

あのね……。


オルティスもアーディスも、この街には来ていない。

それは、トライブもリオンも同じことを言われたと思う。


でも、私が聞いた占い師が、変なこと言ってた。

占い師って時点で、なんかこの話のオチが読めているような気がするけど。


そんなオカルトチックな話じゃなくて?

リオンに尋ねられたソフィアは、何度か首を横に振りながらそれを否定し、しばらく間を置いてから、占い師から伝えられた言葉を二人に伝えた。

黒い影の剣士が、夜のこの街で暴れまくってたみたいなの。


周囲の人は、普通の住民が酒でも酔って暴れたんじゃないかって言ってるけど、その暴れていた人、シルエットのようにしか見えなかったって。

シルエットって、まさか……。

「ゲームマスター」がこの街で剣を持って暴れているとか……。


シルエットと言えば、それしか思いつかないんだけど。

リオンも、そう思ったようね。


でも、一つだけおかしいのよ。

「ゲームマスター」は、そもそも剣を持っていなかったわ。


しかも、私が出会ったときには腰から下が見えなかったような気がするし。

トライブは、「ゲームマスター」に初めて出会ったときのことを思い出し、その表情のまま夜中暴れる姿を想像した。


すぐに、トライブの表情が曇った。

暴れるって言うと、たぶん全身が黒のシルエットに覆われていたと思う。

シルエットだけだと「ゲームマスター」と思って問題ないはずだけど、問題はそこなのかも。

もしそうだとしたら、「ゲームマスター」ってどんなキャラなんだよ、いったい。

少なくとも、単に「ゲームマスター」イコールこの世界の案内役ってわけじゃなさそうね……。


ソフィア、その「ゲームマスター」が暴れたって話、昨日の夜とか言ってた?

毎晩って言ってる。


たぶん、多くの人が寝静まったあたりに、その占い師の家の近くで暴れているっぽいようね。

これは……、俺たちが見張ってた方がいいかも知れない。


「ゲームマスター」が武器を持っているというだけでもおかしいし、どうして夜中に暴れないといけないのか気になってしょうがない。

リオンは、そう言いながら腕を組んだ。


その横で、すぐにトライブも小さくうなずく。

ソフィア、リオン。

今晩、占い師の近くで「ゲームマスター」が何をしているのかを見るわよ。


もしかしたら、それが次の手がかりになるかも知れないし。

そうね。


その占い師と何かしら関係を持っているかも知れないし、それ以上にトライブが言ったことが絡んでくるかも知れない。

三人は、リバーサイドタウン中心部の宿屋に泊まり、交代で占い師の家の近くを見守ることに決めた。

足取りは、何故か軽かった。

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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター/剣=アルフェイオス

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳/剣=ストリームエッジ

女剣士で、トライブの最大の親友、かつ最大のライバル。

実力で上回るトライブに追いつき、いつかソードマスターになりたいと強く願っている。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター/剣=ライトニングセイバー

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター/刀=名称不詳

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

ゲームマスター


最強の剣を決するゲーム「ソードレジェンド」を司る謎の男。

剣を持ったときの実力は、計り知れない。

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