21 剣士たちの無益な争い

エピソード文字数 2,646文字

リオン、ソフィア、起きて。
「ゲームマスター」を見失ったトライブは、考える仕草をしながら宿に戻ると、そのまま電気を全部付け、眠っていた二人を起こした。

も……、もう時間?


まだ2時じゃない。トライブ、起こさないでよ。

ソフィア。もう、占い師の家には行かなくていいわ。

その代わり、非常にまずい話を二人に言わなきゃいけないのよ。

まずい話……だって?


夢でも見てるのか、トライブは。

生あくびをしかけたリオンは、トライブの目を見つめようとするが、ほとんどピントが合わない。

その中で、トライブはリオンの脳が目覚めるのを待った。


そして、リオンのあくびが止まると、ようやく口を開いた。

ソフィア。リオン。


私は、「ゲームマスター」を取り逃したわ。

また、トライブの前で消えてしまったの?

そうよ。


まぁ、それくらいなら最初から予想はできていた。

でも、言わなきゃいけないのは、そんな話じゃない。



ソフィア。

「ゲームマスター」が、ストリームエッジを持っていたわ。

うそ……。
お、おい……!ソフィア!

本来の持ち主が、トライブを見つめたまま後ろにふらつきかける。

すぐ横にいたリオンが、ソフィアの背中を押し、何とか床に倒れることは避けられた。


ソフィアの口は、何かに怯えているかのように震えていた。

ソフィア、ホントごめん。

ストリームエッジ持ってたの分かってて、私は何もできなかった……。


せめて、剣だけでも取り返したかった。

だから、「ゲームマスター」に必死に説得したの。それだけは分かって。

いいのよ……。


ストリームエッジが「ゲームマスター」のところにあるって分かっただけでも、大きな進歩だと思うし、私にとって当面の目標は、このオルティスの刀で「ゲームマスター」に打ち勝つことになるわ。

それは間違いないわ。

だから、私も協力する。


今度こそ、「ゲームマスター」からストリームエッジを返してもらうわ。

トライブがそう言うと、リオンはやや浮かない表情を二人に見せる。

そして、一歩前に出て、考えるしぐさを見せながら口を開いた。

なぁ。


どうして、「ゲームマスター」が剣をそんなに離したがらないんだろう。

最初会ったときは剣なんて持っていなかったし、そもそも「ゲームマスター」が中立の立場だったら、剣なんて持っている意味ないじゃん。

リオン。


「ゲームマスター」は、自分が中立的な立場だとはこれっぽっちも思ってないわ。

ソフィアの剣を変えてしまうのはルールだと思っていたけど、その剣を自分のものとして持っているんだもの。

私も、そう思う。


もしかして、「ゲームマスター」はトライブの前で自分の野望とか口にしてない?

えぇ、してたわよ。


最強の剣を持ちたい。

俺は剣士に対する憎しみとともに動いている。


そのような、支配者じみたことを、私の前で言ってたのよ。

だから、「ゲームマスター」はこのゲームの審判なんかじゃない。

トライブが淡々とそう言うにつれ、ソフィアが何度か首を横に振って歯ぎしりを見せる。

それって、私たちを利用しているだけじゃない。

最強の剣を決めるだけ決めて……、あとはその剣を「ゲームマスター」が持つようにすればいいってことでしょ。

俺も、そう思うよ。


なぁ、トライブ。

今のところ、「ゲームマスター」のところに行った剣はどれくらいあるんだよ。

ソフィアの剣だけよ。


たぶん、まだソウルウェポンどうしで戦っていないわ。

だから、今のうちにソフィアのところにストリームエッジを戻さないと、この先もっと大変になる。

そこまで言って、トライブは何かを思い出したように首をひねった。
トライブ、どうしたのよ。

ソフィア、私、何かがおかしいことに気付いたのよ。

おかしいことって?

ソフィアが首をかしげながら、トライブの表情を伺う。

その中で、トライブはそっとソフィアに告げた。

最強の剣が決まらない限り、このゲームは終わらない。

最強の剣が決まる前には、最悪の場合それ以外の全ての剣が、「ゲームマスター」のところに行ってしまうのよ。


ソフィアのことだけを考えていたけど、実際はそれだけじゃない。

ソウルウェポンを持つ全員に関わることよ。

でもさ……、トライブ。


今のところソウルウェポンを持っているのは、トライブだけじゃん。

リオン。


ソウルウェポンを持つ何人もの剣士が、この街を訪れたって、あの親が言ってたじゃない。

それだけでも、私たちのライバルは、もしかしたら山のようにいるかも知れない。


ソウルウェポンがあの親に焼き払われたら、ルール上「ゲームマスター」のところには剣が渡らない。

今は、そこで何とか留まっているだけって思った方がいいわ。

俺たちの現実は、かなり厳しいな。

特に、一番狙われやすいトライブは。

そう言ってため息をつこうとするリオンを止めるように、トライブはすぐに言葉を返した。

私は、こんな現実でも弱音なんて吐いてられないわよ。


この世界に来た以上、アルフェイオスを最強の剣だと思いたい。

でも……、同時にこの世界の無益な争いに終止符を打たなきゃいけないの。


そのためには、私たちが中心になって、ソウルウェポンを持つ剣士どうして戦わないようにさせないといけない。

戦えば戦うほど、最後のボスになる「ゲームマスター」は、もっと強くなるわ。

でも、最強の剣を決めなきゃいけないんだろ……?


ソウルウェポンを持つ者どうしで戦いは避けられないよ。

そうね……。

リオンの言うとおり、戦わなければこのゲームは先に進まない……。

トライブは、そこまで言って行き詰まった。


深く考えたつもりだったが、そもそものゲームの主題をトライブは見失っていた。

トライブ。


こんなこと言っちゃ悪いけど、私の剣を見て、感情的になってない?

いつものトライブなら、もう少し芯の入った言葉を返せそうな気がするけど……。

そうかも知れない。


なんか、いい方法がないのよ。

この世界の現実を受け入れる以外に。

だったら、大きな目標を立てないで、すぐにでもできるような目標を決めた方がいいと思う。

ソフィアはそう言うと、トライブにそっと手を出してうなずいた。

私は、たった一つだけ目標を立てる。

それはストリームエッジを、「ゲームマスター」から戻してもらうことよ。


これでもう一度、私はこの世界で戦えるし、世界の秩序を守るために協力できる。

そうね。


他の剣士たちの行方が分からない以上、今のところ、私たちにはそれしか道はないのかも知れない。

そう言うと、トライブは明日の晩もこの街で見張るとだけ他の二人に言い残し、その場を締めた。

その間も、トライブは常に何かを考えているようなしぐさを見せていた。

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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター/剣=アルフェイオス

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳/剣=ストリームエッジ

女剣士で、トライブの最大の親友、かつ最大のライバル。

実力で上回るトライブに追いつき、いつかソードマスターになりたいと強く願っている。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター/剣=ライトニングセイバー

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター/刀=名称不詳

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

ゲームマスター


最強の剣を決するゲーム「ソードレジェンド」を司る謎の男。

剣を持ったときの実力は、計り知れない。

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