第16話 令和三十年七月二十二日 大阪。
文字数 481文字
無人タクシーでは先ほどから操作座席の吉田がセレクトしたベトナムの音楽、V系ポップが流れている。外はうだるような暑さだが、車内は快適である。
「期限明日やけど、答えでたか?」曽呂利新左衛門が吉田に問う。
吉田は明日までに「落語は社会生活の維持に必要か?」という問いの答えを出さなければならない。
「師匠は何故このような問いをまだ、入門も許されていない自分に聞いているのだろうか?よっぽど師匠の中で何か引っかかる問いなのだろうか?あるいは、師匠ご自身も若い頃この問いに直面し、いまだに答えを探しているのかもしれないな」と吉田は想像した。
しかしそれよりも吉田は昨晩、曽呂利新左衛門と桂文団治の間でどのような会話がなされたかの方が気になっている。吉田はその思いついたことをそのまま曽呂利新左衛門に聞くほど馬鹿ではない。そこはこの一ヶ月も満たない間になんとなく師弟という関係性がわかってきた。
それを分かってなのか曽呂利新左衛門が「昨日、文団治兄さんの家、寿司やったわ。」
「そうでしたか。師匠はお寿司がお好きなんですか?」
「そやな。それで大概向こう行ったら寿司とってくれはるわ。」
「期限明日やけど、答えでたか?」曽呂利新左衛門が吉田に問う。
吉田は明日までに「落語は社会生活の維持に必要か?」という問いの答えを出さなければならない。
「師匠は何故このような問いをまだ、入門も許されていない自分に聞いているのだろうか?よっぽど師匠の中で何か引っかかる問いなのだろうか?あるいは、師匠ご自身も若い頃この問いに直面し、いまだに答えを探しているのかもしれないな」と吉田は想像した。
しかしそれよりも吉田は昨晩、曽呂利新左衛門と桂文団治の間でどのような会話がなされたかの方が気になっている。吉田はその思いついたことをそのまま曽呂利新左衛門に聞くほど馬鹿ではない。そこはこの一ヶ月も満たない間になんとなく師弟という関係性がわかってきた。
それを分かってなのか曽呂利新左衛門が「昨日、文団治兄さんの家、寿司やったわ。」
「そうでしたか。師匠はお寿司がお好きなんですか?」
「そやな。それで大概向こう行ったら寿司とってくれはるわ。」