第31話 令和三十年九月二十七日(日)東京

文字数 563文字

九月二十七日(日)
東京は最高気温、38度を記録した。ここ十数年、秋という気候はない。
地球温暖化の原因は二酸化炭素ではないという説も定期的に唱えられるが、だからといって「原因はこれだからこうすれば温暖化は食い止められます」との提案はない。「温暖化したり、寒冷化したりするんだよなぁ。地球だもの。」という主張なのかどうか分からないスローガンで都知事選に出馬した候補者がいたことも記憶に新しい。
が、とにかく十一月に入るまでは暑い。そして、急に冬になる。

熱帯夜ともいうべき、夕方6時過ぎ。
曽呂利新左衛門は玉露亭に楽屋入りした。

動画制作会社のカメラが入っている。曽呂利新左衛門・慈水二人会の独占放映権は、サブスクリプション動画サービスの入札制で落札された。

楽屋入りする曽呂利新左衛門にカメラが寄る。
後ろからキャリーバッグを引いている弟子はカメラをできるだけ意識しないようにと思うあまり、ガチガチになっている。

「新左衛門師匠おはようございます。」

先に楽屋入りしている慈水が挨拶にくる。

「慈水さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします。」

音声スタッフがモップのように大きなマイクを構えて、カメラに入らないよう、空中から集音する。

楽屋前の通路を二人がクロスする。

通路の両側には、この二人会を勉強しにきた若手達がぎっちりと並んでいる。
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