第56話 総裁、渦中の旅

文字数 2,894文字

いよいよ明日(2020年11月23日)、鉄道模型運転会ですね。コロナ禍でしかもGoTo政策に変更が行われるってときに開催しちゃうんですね。
うむ。それは覚悟の上なり。十分な対策をおこなっての運転会なのだ。これでダメならもう何をやってもダメであろう。そこまで配慮したのだ。
だいじょうぶかなー。でもうちの実家(食堂『サハシ』)もなかなかお店開けられなくておとーさん困ってたし、みんな鬱憤が日々溜まってて爆発寸前だもんねー。爆発しちゃったらどっちにしろひどいことになるよねー。
コロナ感染で死ぬか、コロナ禍の経済苦で自殺して死ぬかのキワキワで生きていくことを強いられておるのだ。なかなか過酷だが、これも一つの試練であろう。
試練?
21世紀を生きていくにふさわしい人類の叡智を見いだせるか、ということなのだ。21世紀はただでさえ多くの人類の存続に関わる問題が山積しておる。20世紀のままの頭では人類に未来はない。21世紀の頭に切り替える叡智を試されておるのだ。
そうかもしれませんわねえ。
また箱根女子会の話題に戻るぞ。

我ら一行は大涌谷でゴンドラを乗り換え、芦ノ湖湖畔の桃源台を目指しておる。

さすがロープウェイ、高いところをゆきますね。
ひいい、地上の道路は大渋滞ですね、ヒドイっ!
おそらく感染対策で多くの方がマイカー移動を選択したのであろう。マイカーなら雑踏で密になることはないからの。他の感染防止のための物品を携行するにもマイカーは便利であると考えたのだ。
でもこんな大渋滞じゃ……。
公共交通もしっかり対策しておったので、行ってみたら問題なかったのだ。しかしそれは開けてみるまでは誰もわからぬことなり。実に難しいのだ……。
ロープウェイのゴンドラから見る富士山である。
心が澄む感じがするー。さすが霊峰と呼ばれるだけあるねー。
まさしくさふであるのだ。華子はえらいのう。
てへー。ほめらりたー。
おおー、芦ノ湖をめぐる海賊船だ!
桃源台に到着するところだったのだが、実に小回りを機敏に利かせて迅速に入港するのが見えた。なにかそうできる機構があるのか、操船する方の技量がとても高いからなのか。
両方なんじゃないかなあ。
そんなことを拝見しつつ、桃源台に到着したのである。ここでロープウェイは終点なり。
ええっ、ここにえばんげりおんが!
小田急は箱根でエヴァンゲリオンとのコラボキャンペーン実施中であるのだ。小田急アプリも現在、あちこちにエヴァ要素をいれてあるぞ。
あともうすこしでエヴァも終幕ですね。それを盛り上げるための演出なんですね。
さふであろうの。ワタクシにはもうエヴァ劇場版はついていけなくなってしもうたのだが。
僕もTV版26話できっちりエヴァンゲリオンは完結したと思ってます。あれで十分ですよほんと。
もー。ふたりとも歳行ってないのに老害みたいなこと言わないでよ。
エレベーターホールもエヴァ仕様になっておるのだ。
エヴァの世界に没入した感じで楽しいですね。
エヴァのアートワークの秀逸さをあらためて認識したのである。ペロッとこうやってフィルムを貼るだけですっかり劇中の雰囲気であるのだ。
ロープウェイの駅を出るとこんなバスが待っておった。
これもエヴァ仕様になってるんだねー。
雫さんにはこれはバカ受けであった。実に弥栄なり!
それを見つつ、このバスでさらに移動である。
えばんげりおんバスじゃないんですね。残念。
しかしバスの車内放送はエヴァ仕様であった。ミサトさんが「バス、発進!」とコールしてくれるぞ。ちょっと恥ずかしくて「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……」とワタクシが思うてしまったのがヒミツだ……。
エヴァネタも総裁はいちいち古すぎますよ。
これが仙石原なり。たしかに広大なススキの原っぱであるのだ。
ついたのはここである。
美術館ですか。
さふなり。ルネ・ラリック。アール・ヌーヴォーとアールデコ時代をともに活躍したフランスのガラス工芸・宝飾デザイン作家であるのだ。
総裁、意外な趣味あるんですね。総裁もっと男臭い艦船とかミリタリー大好きかと思ってたけど。
うむ、ワタクシの物事を理解したいという気持ちは分野の壁を超え、美術宝飾の世界にも興味が及んでおるぞよ。
そうなのかもしれませんわねえ。
ラリックは工芸・美術宝飾を工業生産して、それらを身につける生活をつくりだしたのだ。香水瓶などは実によくできておる。また自動車の装飾にもガラス工芸を応用し、それが人々のステータスシンボルとなったのだ。発達していく工業に美術宝飾を乗せる手法で文化領域を拡大していった、ということのようである。
わ、クルマのボンネットにガラス細工の人形立ててる! 今のベンツとかロールスのボンネットについてるのにもつながる感じですけど、正直、成金の悪趣味にもとられてしまいそうですね。
その批判はラリックの当時にもあったようだ。陳腐、悪趣味といった手のひら返しの評価があったようだが、思えばそれも産業革命の印刷出版技術の発展で言論が民衆のものになって起きたものかもしれぬ。電書ちゃんもこのラリックの趣味について違和感を持ったようだ。
ありゃ、しょんぼりさせちゃいましたか?
うむ、しかしそこで互いの感性の違いを理解し合い、楽しむのがこういうものを鑑賞する態度として楽しいものだと思うぞ。
そうですわ。違いを楽しむのが成熟した態度ですわねえ。
詩音ちゃんのお家のクルマにも付いてるよね! 詩音ちゃんちのクルマ、ロールスとかの超高級車だから。
ついていたのかもしれませんわ。あまり良くわからないのですが……。それより総裁が作ってくれたグランクラスマークのマグネットシールをクルマに貼っておりますの。普段乗るクルマがそうなると、また楽しく感じられますわ。
グランクラスって……。リムジンに乗るだけで十分じゃないのね。もー。
ラリック美術館の展示エリアはほとんど撮影禁止なので、写真はないのだ。
その入口は撮ってよいとのことで写真にした。
商家の土蔵のような意匠ですわねえ。
美術館の野趣溢れる庭園もなかなかよかったぞ。これも撮影許可であった。

このあと一旦美術館を出て、街を散策したのである。

どうでした?
コロナ禍の影響が如実に出ておった。観光客向けの商店はさまざまに感染対策をしておったが欠品が多く、このコロナ禍での経営の難しさを感じさせた。そんななか、お土産にソーセージを所望した。この旅のあとで家で頂いたのだが、実に美味であった。
経済をまわしたんですね。総裁、自分のお財布で。
こういう時代だからこそ、少しでも人々の生業を応援したくなったのだ。
でも総裁、こうしているのはなにか時間を潰しているように思えるのですが、何をお待ちなのですか?
うむ、詩音くんの推察、もっともであるのだ。それは次回明らかになるぞ。
つづきます。
***CM***
「鉄研でいず!」ボイスドラマ、2話と3話も公開中です。見てね!
ふふふ、鉄研時空に引きずりこめ―!
もー! 毎回ゲストにあんなことしちゃダメですよ! 破天荒にもほどがあります! ヒドイっ!
***CMおわり***


引き続き、チャットノベル「鉄研でいず!」もお楽しみ下さい。


では。

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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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