第17話 令和の御代に

文字数 2,498文字

総裁、もどってきてー!!
総裁ー!!
総裁ー!!

鉄研のみんなが口々に叫ぶ。


だが、意識を失った総裁は一向に動かない。
総裁……これでわたくしたちの青春は終わってしまうのでしょうか……寂しいですわ。
総裁、ぼくと同じ匂いがするから、きっと一緒にいられると思ったのに!

同じ仕組まれた子供だと思ったのに!!

総裁……帰ってきてください!
みんなのために帰ってきて!
みんなで総裁の体に取り付き、揺さぶって声を上げる。


しかし総裁の体は、ぐったりとして動かない。

これで終わっちゃうなんてやだよー!!
総裁! ひどいよー!!
みんな、それぞれに涙して取り乱している。
総裁! 返事して!! もどってきて!!
うぬ?
私達もおかしくなっちゃった……。聞こえるはずのない声が聞こえる……。
わたくしにもきこえてますわ。わたくしもおかしくなってしまいましたわ。
うぬ? キミタチは何をそんなに大声を出しておるのだ?
?!?!
総裁! なんでー?
なんでもなにもないぞ。ワタクシはちょい用事があったので席を外しておったのだが。
あれっ、じゃあこっちの意識失った総裁は!
はっ! 総裁が2人いる!!
うむ、これはメカ総裁であるのだ。
メカ総裁!?!? ヒドイっ!!
ワタクシの身代わりなり。ワタクシがサバゲーをするときに著者と戯れに作ったキャラなのだが、いまいち有効活用できなかったのだが、こうして活用しておる。

ワタクシは令和改元記念あまつかぜクルーズのあまつかぜの写真を撮るのに忙しかったので、その間メカ総裁に代わりをさせておったのだな。


ええーっ!!
メカ総裁、忙しい時は便利であるのだが、計算をよく間違えるのが困ったところなのだ。
え、じゃあ、力尽きたのは?
それはメカ総裁の方であるな。内臓した電池が切れたのであろう。
なんという……。
ヒドスギル!!
そもそもお金や体力がないのはもとよりのこと。今更それぐらいでワタクシはおかしくなったりはせぬ。おかしくなるならもっと前からおかしくなっておったのだ。
えええー!!

ワタクシは斯様なひ弱ではない。斯様なひ弱では鉄研の僚艦諸君を率いる鉄研総裁など務めは出来ぬぞよ。

みんな唖然として言葉が浮かばない。
じゃあ、著者さんはどうなったのですか?
ようやく詩音が聞いた。
うむ、わが著者は令和になるに当たって平成ロスともいうべき特殊な状態になったのであろう。精神的に弱いからさふいふ特殊状態に陥ったのだ。
精神的に弱いから、って……。

せっかくの陛下に賜った明るい改元であるのになんたるひ弱。それだから様々なチャンスを逃し続けた平成であったのだ。


しかしそれももう終わる。次なる令和の御代でまた心を新たにし励み道を切り開くがよいのだ。

令和まであと30分。平成もあと30分で終わりますね。
というかー。総裁、心配させすぎだよー!!
うむ、しかしおかれた状況がとても厳しいことは変わりないのだ。

それでも、やれることは限られておる。その限られたことを精一杯やるしかないのだ。

これが令和の御代に走り出すわが周遊列車「あまつかぜ2」の姿なり。
国旗掲揚してるんだねー。
記念列車であるからのう。
ちなみにこの「あまつかぜ2」の動力はこうなっておる。
動力台車のトラクションゴムがなくなってますね。
うむ。この「あまつかぜ2」には編成中にモーター車が2両ある。そのうち両方のモーター車にトラクションゴムがあると、モーターの個体性能差で回転数が違い、そのために競合が起きて走行中に編成が座屈してしまうのだ。
前にそうなってましたよね。
それで以前は座屈を起こさないためには、一方の方向にしか走れなかったのだ。それをこの前の動画を撮影した「すみ鉄おうちレイアウト」さんの協力でトラクションゴムのない車輪に履き替えたのだ。

ゴムだけを外すと車輪半径がゴム分痩せてしまい、その分走行速度がまた変わってしまう。

それゆえ、車輪をギアのところで分解し、ゴムがもともと無い車輪を組み合わせたのである。

それがその時の動画なんですね。
さふである。鉄道模型知識を新たにできて、大変有意義な撮影運転であった。
というか。
うぬ?
総裁、私達に心配させすぎですよ、ヒドイっ!!
ほんとそうだよー!!
すごく心配しましたよ!!
ほんとうにそうですわ。総裁がおかしくなったと思ってしまいました。

こんなことなら、わたくしのお小遣いを強制資金注入すればよかったと本気で後悔しておりましたわ!

詩音さんのお金はともかく、私のほうはほんとうに支援するつもりだったんですよ!!
私、私は……!
あれっ、奈々センパイもそうするつもりあったんですか?
えっ!!
だって、センパイ、一番年上ですもんね。
ええっ!!
資金支援、してくれますよね。
ええっ……私、そんなお金ない……この10連休だって地下アイドルとメイド喫茶のバイトでぱんぱんだし!
してくれますよね。
ひえええ! でもお金ない……えうっ、えうっ!!
奈々センパイは涙ぐんでいる。
御波ちゃん、許してあげなよ……奈々パイセンも結局私達と同じ、びんぼーなんだから。ヒドイっ。
ひどいっ……こんな詰めてしかもパイセンなんて!!
もー。ツバメちゃんも御波ちゃんもドSすぎるよー。
まあまあ。ともかく総裁戻ってきたから、がんばるしかないよ。

……というかメカ総裁って一体何だったんだ?

そうですわね。総裁も戻ってきたのは安心いたしましたわ。


著者さんにもしっかりしていただきましょう。しっかり働いてもらって。

ええっ!!
昔から「著者とごまの油は絞れば絞るほどよく出る」といわれるのですわ。
ええっ、そんな言葉無いと思うよ!!
さあ、連休のうちからビシバシ働くのですわ。
そうだよねー。もうこうならないようにがんばるしかないよー。
著者さん、身体も衰えてるみたいなんで、トレーニングメニューも作りましたよ。

しっかりトレーニングして夏に備えてください。

ひいいい!!
うむ、しっかり励むのが良いのだ。ついでにコンビニ行って我々の味わいカルピス買ってこいやなのである!
そんなあ……。
さあ、平成が終わる前に行ってこいや!!
ひええええ!!!
そして、平成最後の夜の雨に、コンビニにむけて駆け出していく著者。


令和の夜明けは、なお遠いのであった。

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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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