第17話 令和の御代に
文字数 2,498文字
鉄研のみんなが口々に叫ぶ。
だが、意識を失った総裁は一向に動かない。
総裁……これでわたくしたちの青春は終わってしまうのでしょうか……寂しいですわ。
総裁、ぼくと同じ匂いがするから、きっと一緒にいられると思ったのに!
同じ仕組まれた子供だと思ったのに!!
みんなで総裁の体に取り付き、揺さぶって声を上げる。
しかし総裁の体は、ぐったりとして動かない。
私達もおかしくなっちゃった……。聞こえるはずのない声が聞こえる……。
わたくしにもきこえてますわ。わたくしもおかしくなってしまいましたわ。
うぬ? キミタチは何をそんなに大声を出しておるのだ?
なんでもなにもないぞ。ワタクシはちょい用事があったので席を外しておったのだが。
ワタクシの身代わりなり。ワタクシがサバゲーをするときに著者と戯れに作ったキャラなのだが、いまいち有効活用できなかったのだが、こうして活用しておる。
ワタクシは令和改元記念あまつかぜクルーズのあまつかぜの写真を撮るのに忙しかったので、その間メカ総裁に代わりをさせておったのだな。
メカ総裁、忙しい時は便利であるのだが、計算をよく間違えるのが困ったところなのだ。
それはメカ総裁の方であるな。内臓した電池が切れたのであろう。
そもそもお金や体力がないのはもとよりのこと。今更それぐらいでワタクシはおかしくなったりはせぬ。おかしくなるならもっと前からおかしくなっておったのだ。
ワタクシは斯様なひ弱ではない。斯様なひ弱では鉄研の僚艦諸君を率いる鉄研総裁など務めは出来ぬぞよ。
うむ、わが著者は令和になるに当たって平成ロスともいうべき特殊な状態になったのであろう。精神的に弱いからさふいふ特殊状態に陥ったのだ。
せっかくの陛下に賜った明るい改元であるのになんたるひ弱。それだから様々なチャンスを逃し続けた平成であったのだ。
しかしそれももう終わる。次なる令和の御代でまた心を新たにし励み道を切り開くがよいのだ。
令和まであと30分。平成もあと30分で終わりますね。
うむ、しかしおかれた状況がとても厳しいことは変わりないのだ。
それでも、やれることは限られておる。その限られたことを精一杯やるしかないのだ。
これが令和の御代に走り出すわが周遊列車「あまつかぜ2」の姿なり。
ちなみにこの「あまつかぜ2」の動力はこうなっておる。
うむ。この「あまつかぜ2」には編成中にモーター車が2両ある。そのうち両方のモーター車にトラクションゴムがあると、モーターの個体性能差で回転数が違い、そのために競合が起きて走行中に編成が座屈してしまうのだ。
それで以前は座屈を起こさないためには、一方の方向にしか走れなかったのだ。それをこの前の動画を撮影した「すみ鉄おうちレイアウト」さんの協力でトラクションゴムのない車輪に履き替えたのだ。
ゴムだけを外すと車輪半径がゴム分痩せてしまい、その分走行速度がまた変わってしまう。
それゆえ、車輪をギアのところで分解し、ゴムがもともと無い車輪を組み合わせたのである。
さふである。鉄道模型知識を新たにできて、大変有意義な撮影運転であった。
ほんとうにそうですわ。総裁がおかしくなったと思ってしまいました。
こんなことなら、わたくしのお小遣いを強制資金注入すればよかったと本気で後悔しておりましたわ!
詩音さんのお金はともかく、私のほうはほんとうに支援するつもりだったんですよ!!
あれっ、奈々センパイもそうするつもりあったんですか?
ええっ……私、そんなお金ない……この10連休だって地下アイドルとメイド喫茶のバイトでぱんぱんだし!
御波ちゃん、許してあげなよ……奈々パイセンも結局私達と同じ、びんぼーなんだから。ヒドイっ。
まあまあ。ともかく総裁戻ってきたから、がんばるしかないよ。
……というかメカ総裁って一体何だったんだ?
そうですわね。総裁も戻ってきたのは安心いたしましたわ。
著者さんにもしっかりしていただきましょう。しっかり働いてもらって。
昔から「著者とごまの油は絞れば絞るほどよく出る」といわれるのですわ。
そうだよねー。もうこうならないようにがんばるしかないよー。
著者さん、身体も衰えてるみたいなんで、トレーニングメニューも作りましたよ。
しっかりトレーニングして夏に備えてください。
うむ、しっかり励むのが良いのだ。ついでにコンビニ行って我々の味わいカルピス買ってこいやなのである!
そして、平成最後の夜の雨に、コンビニにむけて駆け出していく著者。
令和の夜明けは、なお遠いのであった。
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