第9話 リサーチする鉄研!

文字数 3,909文字

元号発表されますねー!
うむ。この情報が瞬時に地球上を駆け巡る21世紀の時代に斯様な雅なものがいまだに存在し運用されているというのは、なかなか面白いものであるぞ。わが国として今後も残していきたい伝統であるぞよ。
でも元号年数の計算の実装、少しめんどいですよ。西暦に揃えてしまったほうが合理的ですよ。
そう言うカオルちゃんだって将棋してるじゃないー。もうAIに勝てないのにー。
ぼくはAIから将棋最強の座を奪うのも目標なんです! それとこれとは別!
ふむ。経済合理性だけではまだ裁量できない事項であるのう。
そうかなあ。ヒドイっ。
あ、官房長官さん、会見室に入ってきましたよ!
ここまで予定通りだったけど少し遅れましたね。
おおー!
新元号は「令和」ですか。万葉集が典拠とはまたとても雅で素敵ですわ。そのもとはまた漢籍なんて、シルクロードの終点である日本らしい文化・歴史も感じさせますわ。
ふむ。そうであるのう。
総裁何やってるんですか?
JAMコンベンションへの出展申込書類を整えておった。これは出展内容を示す添付写真であるのだ。
バリバリに合成しててヒドイっ!
少々やりすぎるぐらいにやらねばならぬと思うてのう。

今年は東ホールではなく西ホール開催であるからの。もしかすると出展枠の争奪になるやもしれぬのだ。

東ホール使えないのですわね……オリンピックの準備で。
さふなり。今年から毎回ビッグサイトで開催されておった各イベントは軒並み移転開催を迫られておるからのう。
オリンピック、ちょっと影響大きすぎるよねー。
しかしあの祭典を待ち望んでおるアスリートの方々もおるのだ。きっとその気持は我々と通ずる点があるのではないかと拝察するぞ。我々もわがままを言わず、彼らに協力せねばならぬ。独善は厳に戒めねばならぬのだ。


そうかなあ。あれ、あちこちおかしな点があるけど……。
確かに疑念を抱かせられるような不明朗な部分はいくつもある。はじめ経済効果があるとうまい話だったのにいつのまにかとんでもない出費になっておる。無責任な運営体制にも疑念が浮かぶ。とはいえもう損切のために返上できぬ開催なのだから、それを少しでも正しつつ完遂するほかないのだ。
損切りが下手なのはいかにも日本らしいですよね。ヒドイっ。
さふであるのう……。
結構派手ですね……。
これが羊頭狗肉とならぬよう、出展物を頑張らねばならぬ。
ほんと、そうですよね。
諸君も出展書類の確認をお願いするのだ。念には念を入れたいのだ。
りょうかいー。
奈々センパイも確認オネガイシマスなのだ。
はい! 見ましたよ―。オッケー、って感じです!
センパイは何度もJAMコンベンションに出展しておるからのう。たよりになるのだ。
じゃあ、書類確認終わりました。これで送信ですね。
うむ。では送信ボタンポチッとな。
それ総裁古すぎるよ―。いつのアニメなんですか―!
それにエラーで帰ってきちゃいましたよ。
うぐう、送信した写真が1枚8MBにもなっておった!
エラーメール見るとそれでメールサーバが拒否したっぽいですね。
写真、縮小作業をせねばならぬか……。
その間に私達は「けものフレンズ2」見ちゃいましょう。アマゾンプライムで見られるし。
私はもう11話まで見てますので……。
さすがけものフレンズネタの模型いっぱい作ってるだけあって、ミエさんはやいなあ。
私達も今年の出展、「ケムリクサ」と「けものフレンズ2」が深く関わってくるので見ておかないと。ヒドイっ。
ひどくないですよ。それ。
そういいながらまたポテチと紅茶用意してたりね。
たーのしー! だからいいんだとおもうよー。
というかミエくんの「見てますので……」の「……」は何故であろうか。
え、それは。
はいそこー、言いにくそうなとこすぐに詰めないー。ドSの御波ちゃんじゃないんだからー。
私ドSじゃないわよ! ひっどーい!
まあ、アニメ見ましょうよ。
では私のプロジェクターで上映しますよ―。HDMIオッケー、電波でオッケー!
その間に写真を縮小して送信しておくのだ。ワタクシもこれは見ておきたいからのう。
ー6話を見おえてー
お話がおおきく動き始めましたね。
全12話の折返しだからですね。
俄然面白くなってきた! ひどいっ!
ー9話を見てー
イエイヌさん可哀想! 一人で待ちづづけるなんて! それを置き去りにするみんなもヒドイっ!
たしかにひどいかもー。「おうちにおかえり」って、いくらイエイヌさんの望んだ言葉だとしても、もうちょっとなんとかなんなかったのかなー。
そうかなあ。私はそうは思わなかったなー。イエイヌさんつれてくってのは無理だもの。これからこういう事があるたびに仲間増やしたら大変だし、イエイヌさんも、ついていくっておうち棄てるのはそれはそれで辛くない?

そもそも無責任な関わり方するのはもっと残酷だわ。

それに本当に可哀想なことにしたのはキュルルさんではなく、イエイヌさんをのこしてどこかへ行ってしまったもとの飼い主さんたちですわ。生き物を飼うこととは、その最後まで責任をもつことですわ。
でもネットはそれで荒れ狂ってたんだね。キュルルが性格悪いとか残酷だとか、けものフレンズでこんな話しないでほしいとか。
ふむ。
私もこのことに少し引っかかりました……。
総裁は?
ふむり。これはこれで、この先を見るべきであろうの。
この先? なんか心配だなー。ヒドイっ。
ー11話を見てー
わー、謎多いままもう12話、最終話突入だようー!
でもイエイヌさんのこと、最終話で生きてくるんじゃないかなあ。
わたくしもそうおもいますわ。ここまで伏線になってきていたものを並べると、ぽっかりと穴が空いているように感じます。そこにイエイヌさんの話が入りそうな感じですわ。どういう形で入るかはわからないのですが。
そうなのかなー。
ともあれ最終話を見なくては結論は出せぬであろうの。
ー最終第12話ー
なんかいろいろ積み残したままED曲に入っちゃいましたよ。
でも普通にいい話になったと思うなー。旅は続く、って感じで。
まあ、最後まで見るのだ。
ED曲が終わった……あら、イエイヌさんがおうちで一人で手紙を読んでいるシーンがきましたわ。
イエイヌさん嬉しそうだなあ。これはこれでよかったのかも。ひどいっ。
ちょっとまって! そのイエイヌさんの見てる絵!
えっ?
人間の飼育員さんが描かれてる!!
あー、ほんとだー!
これ、まさか……。まさかとは思うんだけど。
どうしたのだ御波くん。
このイエイヌさんって、もしかするとこの「けもフレ2」の監督さんや制作陣だったんじゃない?
うっ、なんと!
望まないことでパークをあとにせざるをえなかった前の飼い主。

それでもパークの家を守り続けるイエイヌさん。

思い入れのあまりで生まれたビーストと戦うイエイヌさん。

しかしそのビーストは最後、セルリアンとの戦いでセルリアンを殲滅してくれる。

そしてその冒険を家を守りながら振り返るイエイヌさん。

帰ってこないとわかる前の飼い主を待ち続ける。でもそれは寂しいけど決して不幸ではない。

だって、前の飼い主も思いを残し、つらい思いでわかれたのをイエイヌも十分知っているから。


……こうなるとぴったりじゃない?

うっ、可哀想なイエイヌを攻撃していたのはほかならぬ、思い入れのあまり暴走していたファンだった、なんて。ヒドイっ。
でもそのファンのおかげでサーバルちゃんたちは救われる。ビーストさんを決着させなかったのも理解できる!

そしてすべてはゲームに引き継がれる。

いろいろな謎を積み残したのは、2の監督として1の監督をすこしも否定したくなかったから。

うむう。そういう解釈も可能かもしれぬのう……。
御波さんのイマジネーション能力、とてつもないですわ……。

でもこれが正解かは決定できないですわね。

だけどたしかにそうするときれいに全部整って見える。

そもそも「けものフレンズ2」はギャグ・コメディのアニメになってる。

その路線では前作「けものフレンズ」では収めきれないだろうし。

だから、「けものフレンズ」を否定しないで、その可能性を広げるためにはこうするしかなかった。

アニメとして「けものフレンズ2」はこれが最適解なんですよ、きっと。

私、この「けものフレンズ2」の途中のわちゃわちゃしたコメディ、それはそれで楽しかったもの!

そもそもそういう作品だったんだよ。「けものフレンズ」って!

ふむ……たしかにこの「けものフレンズ2」、まさに騒動の中で「火中の栗」そのもの。

それをあえて拾う監督はそう考えて作り込んだのかもしれぬ。

「けものフレンズ2」も、「ケムリクサ」と同様、素晴らしい監督の創造性が生かされた作品、傑作と認識することが可能であるかもしれぬのう。

そう考えてみるとすごく腑に落ちて痛快ですね! さすが!
でもすっかりアニメ鑑賞の話になっちゃいましたね。この話。
それは今年の出展のテーマに係るリサーチであるからのう。

「東京」というテーマと、ミエくんの模型のアニメネタの間に整合性を考えるには、アニメの解釈も絶対に必要であろうからの。

でも、みんなそうやって熱意持ってアニメ見てるってすごい!

ほんと、オッケー、って感じです!

我々の出展に核心的に関わることであるからのう……ワタクシも普段はアニメを見る時間がないのだが、せめてこれぐらいはリサーチせねばならぬ。


しかしリサーチした結果をどう展示に活かすべきか、ワタクシにもまだ全て見えてはおらぬのだ。

そうですわねえ。アニメネタを「秋葉原」に寄せるとしても、前回作った超立体モジュールとどう合わせるか、工夫が必要ですわねえ。
うむ。そんななか、実はとあるものを発注したのだ。それについては次回やるぞよ。
つづきますー!
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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