第22話 新宿ロケハン紀行
文字数 2,748文字
しかしなぜ模型車両、それも自作周遊列車「あまつかぜ2」の車両整備をなさっているのでしょうか。
こうして整備し室内灯などが点灯している模型車両を見ていると、時間がどんどん溶けていくのう……。
わかりますわ。夜汽車の明かりは独特の魅力を持っておりますわ。
思えばここまで作るのにどれだけの年月を使ったのであろうか。
まさに五月晴れであるのう。ここからバスと電車で新宿へ向かうぞよ。
総裁、でもなぜわたくしと総裁だけでこの旅をしているのでしょう? ほかのみんなはどうしたのでしょうか?
それはだな、大勢帯同するには軍資金が足りないのだ。そこでワタクシと詩音くんだけでの取材としたのだ。
でもわたくしたちは運賃も食費もかからない非実在女子高校生ではないのでしょうか……。
うむ、その観点もアリなのだが、今回著者もなかなかしんどいのでいつもの我々8人では無理とのことであったのだ。
……そういうところ、都合がいいと言うかなんというか。
そうこうしておるうちにバスで海老名に着いたのである。
ロマンスカーミュージアムの建設現場をチラリ見ていくぞよ。目下工事中であるのだ。
ミュージアムの他にもいくつも工事中のタワークレーンが目立ちますわ。海老名はまさに開け行く街ですわね。
それでも座れたからありがたいですわ。やはり複々線化効果が出ているのではないかと思いますわ。
取材の対象であるサザンテラスと新宿1号・2号踏切に向かうわけですね。
バスタ新宿も出来て、長く続いていた新宿駅甲州街道口の工事も一段落でしょうか。
だが新宿駅中央自由通路の工事もあるのだ。まだまだ新宿駅の工事は続いておる。
おそらくのう。現代はプライバシーとテロ対策がせめぎあうのだ。こうして人の集まるところには監視カメラを置かざるを得ぬ。
しかしこれは中央・総武緩行線や山手線を乗り越えるためのものであるからのう。まだ見ていかねば例のシマシマの正体は結論付けられぬ。
あら、起伏がなさそうな気が。あのシマシマは何だったのでしょう。
サザンタワーの裾に当たる部分もよくわからなかったからのう。これがそうであるのか。
大きいのにこういうところに意匠があって模型にするには厄介ですわ。
モジュールで一番東側、サザンテラス縁の低い建物はこうなっておったのか……。
Googleの3D航空地図では全く見えませんでしたわね。サザンテラスの上はストリートビューもありませんでしたし。
発見が多いぞ。写真に撮って後で再現の方法を考えるのだ。
やはりこのサザンテラス南端はカフェレストランであったか。
芝生だったなんて……。こんなの見なければわかりようがありませんわ!!
衝撃の事実であったのう……。やはりロケハンに来てよかったのだ。
このカフェレストランも再現しなければいけませんわね。
橋になっていて、その下が階段になっているのですわね。
その橋を渡ったところは階段室。でも工事中のようですわ。
建築物は定期的なメンテナンスが必要であるからのう。作りっぱなしですむ建物などないのだ。
エスカレーターとエレベーターがあるのですわね。ちゃんとバリアフリーになっている。
そして立体地盤の下に線路があるのですわね。立体地盤の底は模型では再現しないとしても理解が進みますわ。
この空き地にはかつて踏切警手の小屋があったのだ。再利用せずに舗装で固めてあるようだ。
そのすぐ脇の雑居ビル。こういうのを再現するのは実に難しいのですわ。細かいディテール山盛りですから。
雑居ビルの後ろに信号施設。こんな感じなのですわね。ドアが小田急のコーポレートカラーに塗られているのですわ。
正式なこの信号小屋の名前はこうなっておるようだ。新宿第2中継所。窓の奥に見えるのは洗剤のボトルであるのう。
職員さんがここにいることもあるのでしょうか。なにか生活の匂いがいたしますわ。
螺旋階段と保存されておる継電箱。グリーンマックスのキュービクルで再現できそうである。
それでも螺旋階段は難易度高そうですわ。わたくしもどう作るか、途方に暮れますわ。
その下り側に跨線橋である。これもグリーンマックス製品を切り継げばなんとかなりそうである。
なかなかただ切り継ぐとイメージが壊れそうなのが怖いところですわね。
そしてこれが新宿2号踏切から見た新宿1号踏切であるのだ。
これを再現するのが目標ですわね。なかなか手強そうですわ。
この画角が目標ですわね。でも皆さんの写真の撮影例と若干違いますわね。なぜでしょうか。
うむ、解けた謎もあるが、新たな謎も生まれてしもうたぞよ。
うぬ? 詩音くん、具合がわるいのではないか? すこし息が乱れておるぞ。
うむう、詩音くんが身体が弱いのは理解しているつもりであったが。ここはどこかで休むこととしよう。
ありがとうございます。でもこの自販機、今どきにしてはかなり薄利多売ですわ。
さふであるな。ずいぶん安いぞ。詩音くん、なにか好きなものを買い給え。
このあと開催されておる大学の学園祭に行こうと思うておったのだが、それはスキップしたほうが良さそうであるの。
謝ることはないぞ。身体が弱いのは責任の及ぶことではない。不可抗力であるのだ。
さふであるな。しばし休憩の後、さらにロケハンをするか。
しかし、切り上げて帰ることもできるが。
詩音は肩を上下させて荒くなってしまった呼吸を整えながら、言った。
休んだらまた再開しましょう。
こんな楽しいこと、途中で切り上げるなんて嫌ですわ。
詩音はそう笑顔を作った。
だが、総裁はそれを心配顔で見つめるのであった。
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