第31話 最低時給の牢獄

文字数 3,032文字

そして七夕ミーティングのあと、ワタクシは著者を連れて東京へ赴くのである。
例の軍資金回復作戦、ついに発動ですね。
さふなり。
海老名に降り立つのだ。
ロマンスカーミュージアムの建設現場の脇を通っていく。
着々と工事が進んでますね。ひどいっ。
そして横浜経由で目的地に向かう。
時間的には通勤時間じゃないからラクですね。
そして目的地近くにつく。
どこなのかなー。
それはあえて秘すのだ。

ともあれその新しい著者のお仕事の研修が始まったのだ。

こんな都会で研修? なんだろう。
うむ、それも今は言えぬのだ。
でも研修はうまく行ったのですか?
ともかく頑張るしかないのだ。

しかし、カリキュラムには無事ついていけたようである。

そしてともあれ1日目が終わって、著者はその会社の人と立ち飲み屋で飲んだのである。

普段こういう文化に触れないだけに。とても興味深かったのだ。

そうかんがえると著者さん、割と楽しい人生だよねー。
当人がまったくそう思えておらぬのがどうにもよくないのだが。
総裁はお飲みにならなかったのですわね。
ワタクシは非実在女子高校生であるからの。その間だまって待っておったのだ。
あら、残念ですわねえ。
ノンアルコールでも飲めればと思うたが、とはいえオッサン同士の飲み会にワタクシがいてもどうにもならぬのだ。
というかぼくたちが未成年だってこと忘れちゃダメだよー。KENZENな鉄道趣味啓蒙がまた迷子になってるよ―。
そしてそののち、宿の共有スペースでちょいいろいろしておるのだ。
宿? 泊まったんですか?
家とここを往復すると時間もお金も労力もかかりすぎるからのう。
この宿であるのだ。
あ、この寝台列車みたいな宿って、「トレインホステル北斗星」ですね! 2年前のJAMのときのベースキャンプにしてた!
さふであるのだ。平日価格はめちゃ安いのだ。カプセルホテルよりも安くて良いぞ。
実に風情があって楽しいぞ。
このランプはたしか寝台特急「北斗星」で使っていたものであるのだ。これで夜がふけていくのを過ごすのは実に優雅で素敵なひとときなり。
そして朝を迎え、研修2日めである。
研修まで少し時間があったのでホテル喫茶部で飲食しながら研修の予習復習をするのだ。
こんなことして割に合う仕事って、どんなのだろう? ひどいっ。
時給高いのかなあ。
それはまだ言えぬのだ。
一番安いサンドイッチを頼んだらこれであった。
なんてゼータク! ひどいっ!
なにかの素材に使えそうなので撮影したのである。おいちかったぞよ。
それで、研修はこれからも続くのですか?
新しい仕事は在宅で夜中などにもやる仕事なり。時給も悪くないぞよ。研修は9月すぎまで掛かりそうであるのだが、その研修も以降は在宅でできるとのこと。
じゃあ、テツ活動する時間が作れますね。
さふなり。シフト制で軍資金を得ながら活動時間も確保できそうなり。
ようやく軍資金問題に出口が見えそうですね。
ありがたい縁の賜物なり。がんばるしかないぞよ、著者。
そして2日間の出社研修を終えて帰路についた。


著者はこの新しい仕事に関わることで、ようやく仕事というものの実感めいたものを感じたらしい。

これまでどんなに頑張っても最低時給でしか働けなかったからの。

初めてまともな仕事につけた。

そのことに、思わず涙しそうだったのだ。

最低時給ってそういうもんですよね。

ほんとうはそうじゃないのに、最低時給の仕事は人間の尊厳を最低にしてしまう。

でも公的機関を含めて、そうやって人間を搾取しているのにそれを変えることができない。

日本が没落するのは当然の帰結であろうの。

とくに年金制度や公的補助を受けている人々を生きがいの仕事につけるやり方は、やりがい搾取の上にとんでもない労働力ダンピングになってしまう。

こんな状態ではみなが貧困にあえぐ羽目になるのは当然なり。

そうですわねえ。でもそれを解決する方法が見当たりませんわ。
まさに無間地獄……ひいいい。
それでも世を嘆いても軍資金はふえぬ。

しかしこうして著者に仕事が見つかった。これはここから反攻の開始であるのだ。

そうですね!!
われわれ「鉄研でいず!」の漫画も、5話全てがランクインしたぞ。
最後はドンケツの500位だったけど……でも、嬉しいですね。
そしてJAM出展キット、場内配置図とIDカードが封書で届いた。いよいよJAMの出展が迫ってきたのだ。
わたしたちはA01ですね。わ、壁際だ!
いわゆる壁際サークル、ということでしょうか。
コミケでは壁際サークルというのは意味があるのだが、いまのところそれはわからないことであった。
壁際希望、って申し込んでたからそのとおりなのかなあ。
そして我々の出展ポスターも作ったのだ。
ヒロインズミート……。「けものフレンズ」に「ケムリクサ」に「ガルパン」にわれわれ「鉄研でいず!」まで混ぜ込んで。
ミーハーネタに我々も混ぜ込む「コバンザメ作戦」である!
作戦である! じゃないですよ! ひどいっ!
でも、現実的に、こうするほかないですわねえ。
現実に、我らがアニメになったりする可能性はゼロだ。

商業出版に戻れる可能性もゼロだ。

そして我々が世の中に残る可能性もゼロだ。

世の中には成功した作品があり、成功した作者がいる。

しかし、残念ながら、それは我々ではないのだ。

かなしいですわねえ。人生の限界が見えてしまうなんて。
ゆえ、別の方法を探すしかない。

それが「パンの仕事」「花の仕事」を分ける生き方である。

食べていくための仕事と、自分の人生の実現のための仕事を分けるんですね。
このことはあの水戸岡鋭治先生もおっしゃっていたことでもあるのだ。
えっ、あんな売れっ子鉄道デザイナーの先生でも? 本当ですか? にわかには信じがたいなあ。
そうなり。先生もさまざまな辛酸をなめてそういう境地に達したのであろう。うむ。
先生ですらそうなら、わたしたちがそうなのは当然ですね。ひどいっ。
そういうことを身に付け、ながく活動を継続する方法を見つけるのもまた「テツ道」であろうの。
でもそういえば、ここまでのわたしたちの冒険、これまでとちがって少し悲壮感が薄いかも。

ここまでめちゃくちゃ悲壮な話でしたよね。

さふであろうの。展示が終わったらもう文字通り死んでもいい、いや死ぬべきだとまで思いつめておったからの。

生きていることがなにかの間違いであるかのように自らを痛めつけておった。

ひいい、そんなのダメですよ!
何度も印旛日本医大駅を最後の地としようと思うておったらしい。我が著者は。
具体的にそこまで決めちゃダメ―!
鉄道は安楽死のための装置じゃないですよ。
そこまで思いつめておった。しかし、こうして研修をはじめて、ようやくその窮地の出口が見えたのかもしれぬ。

努力すれば最悪を回避できる可能性がある。それがどれだけ嬉しいことか。それを思い知ったのだな。

良かったですよ……こんな鉄分のオーバードーズしてる人が最後に鉄道で死ぬなんて、まったく洒落になりませんよ。
うむ。いろいろと問題はあれど、仕事は人間をいい方向に向けてくれるものであるな。
そうですそうです。
というわけで、少し多大な流血が止まる見込みができた。

一筋の光明が見えた。それはここまでないことであったのだ。

ゆえ、いよいよ反攻! といきたいところであるが、それでもまだまだ課題があるのだ。

それって。
うむ、それが出展リハーサルで明らかになるのだ。
やっとそこにもどりましたね。
次回はリハーサルである。tomyさん大活躍であるのだ。チェキラ!である!
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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