第4話 鉄研、アニメと春の昼下がり

文字数 3,111文字

JAMの出展申請書類は3通。エントリー申請、各種申請、そしてID申請の3つ。
早速出展費の足し算が一箇所間違ってましたね。
うっ。でも見つかって良かった。また「さんすう」を間違えておった。
あとカーペットの申請、あのカーペットってグレーのテーブル天面に敷くカーペットですよ。タイルカーペットはN先生のときに手配してもらったやつです。もー。
うう、確かめてもらえてよかったのだ。あのままならJAM会場で頓死するところであった……。
まあ、でも訂正できれば良しですよ。
で、ミエさんなに作ってるんですか?
アニメ「ケムリクサ」に出てくる電車とそのキャラクターたちです!
これ、1/150ですよね……また非常識に細かい。しかもまたアニメネタ。
やっぱりアニメ好きですから!
わかりますわかります! でも私忙しくてアニメもなかなか見られないなあ……。
ワタクシはアニメを見る習慣がなかなかつかなくてのう……。「ケムリクサ」も「けものフレンズ2」もしっかり見られておらぬ。
だから総裁、アニメネタテレビネタがいつも少し古いんですよね。
思えばワタクシのこれもアニメネタにインスパイアされて作ったものであるのう。
でも結局オリジナルですよね。ヒドイっ。
ひどくないよー。総裁のイマジネーションの模型、楽しいじゃない。
でもややウケにとどまっておるのだ……。
そんなこというなら私の「ケムリクサ電車」、せっかくアニメに寄せてるのにこれもややウケですよ。自走しないのは先に作られちゃったから……。
そんなにウケとか気にしてるんですか。
やはり作る上ではウケたほうがウケないよりは楽しいからの。それも人間だから仕方がねいのだ。
志で模型やってるはずなのに、やっぱりウケが気になっちゃうんですね。
そりゃそうですよ! ステージに立って歓声を浴びることの幸せは他に代えがたいですもの。だから私も地下アイドルまだ続けてたわけだし!
地下アイドルでもアイドルのうちですもんね。
思えばJAM出展で鉄道模型を展示して歓声を浴びるのも同じ感覚なのかもしれぬのう。
あたりまえです総裁。人に見てもらえるってことは強い承認を受けることです。無価値な自分かもしれないけど、承認しあうことで価値を得る。プルーフ・オブ・ワークで価値が守られる仮想通貨の仕組みに似てる。相互承認は社会の基本です。
センパイ突然そんな難しいことを。さすがセンパイですわ。
センパイはワタクシも知らぬことを多く知っておる。ワタクシも多く学ばねばならぬのだ。テツ道の成就のために。
えっ、そんなふうに? 特に教えることなんてないですよ~。総裁のほうがいろんなことやってるし。
そうですよねえ。鉄道だけじゃなくて艦船とかの話までやってて。ヒドイっ。
うむ、事にあたってワタクシも「ケムリクサ」をAmazonプライムビデオで見ておるのだが、アニメを見るというのは案外つかれるのう……。
あのアニメ、見てて考えることが多いですよね。よくできているけど。
「ケムリクサ」は真面目に見ればものすごく謎が多くてヘトヘトになりますわ。そういうところも含んで「ケムリクサ」は文学というべきものなのですわ。
それよりJAM出展の申請書類ちゃんと作ってます? また足し算間違えたら大変ですよ。
うっ、そうであった。
去年使った腰布、私が預かってますから長さ測って確認しますね。
よろしくなり。
さすがセンパイだねー。総裁が轟沈して判断ポンコツになってせっかくの資材処分しちゃうところを保管してくれたんだねー。
センパイの参戦はとてもありがたいのだ。センパイは密かに冷静沈着であるからのう。
密かに、って。
そんな事ないですよ〜。
しかしアニメをちょい見てからだと実にミエくんの1/150のフィギュアがアニメによく似ていると感心するものなり。
ミエさんの工作、それにしても非常識に細かいですよね。ヒドイッ。
ひどくないよー。
しかし「ケムリクサ」、深読みするとかなり恐ろしそうな話であるのう。
やっぱり総裁もそう思います? 私も観ててそれが気になりました。
やはり文学であるのう。そして優れて批評的な作品であるな。
総裁たち、そういうこと感じるんですね。すごーい。
しばらくのち。
うっ、8話、みんな最後笑ってた、って……。
自己犠牲とか信頼とか、いろいろ感じさせられてしまいますわ。
世界観自身も批評的だったけど、あの無機質なはずのボット、シロにここまで感情移入させてしまう。まさしくアニメ……。
命を吹き込むアニメの本質に触れるなんて。ヒドイッ。
ツバメちゃんこれもひどくないよー。
エビコー鉄研の皆さん揃ってみんな泣いてる。ほんと純情なんですね!
センパイはどうなのだ?
うーん、よくわかんないけど、OKかな!
奈々センパイ……なんですかそれ……。
深読みはやっぱり深読みですよ、ってことで。
うむ、そうかもしれんのう。奥が深い。
……それの方がよくわかんない……。
さすがセンパイである!
力強く言ってもわかんないものはわかんないです!
それにしても、「残念な世界」とか、ササるところがいっぱいですね。「ケムリクサ」。
うむむむ。それのおかげでさっぱり申請書の作業が進まぬぞ。
わー! 間に合うんですか!?
うむ、まだ締め切りには1ヶ月余裕があるぞよ。
そういえば電源は5アンペアで足りますか?
100Vで5Aといえば500wですね。
パワーパック1.2Aが高架線と地上複々線で6台並ぶから、足りなさそう!ヒドイッ!
でもパワーパックの1.2Aは出力14Vでしょ。1.2×14で16.8w。10台で168wだよ。
あれっ、全然間に合うっぽい……ヒドイっ!
電気工事士の資格持ってる山岸技研さんにも確認しました。安心ですね。電気OK!
うむ、山岸技研さんとは奈々センパイの追兎電鉄とワタクシ北急電鉄と3社で組んでBトレ自動運転レイアウトを出展した時の電装品担当の方なのだ。
じゃあ、バッチリですね!
助かるのう。
ほんとそうですね……。
「ケムリクサ」10話、フラグ山盛りである……。
なんだか、私たちのJAM出展の冒険にも通ずるとこがありそうですね。私たち、どんな今年の8月を迎えるんでしょう。ヒドイっ。
ひどくはなかろう……。
フラグ、せつないー。
うっ、すっかりエビコー鉄研「ケムリクサ」鑑賞会となってしまった!
すっかりアニメを楽しんじゃいましたね。
このまま「けものフレンズ2」も一気に見てしまおうかとぞ思いけるのだな!
だーかーら!申請書!
まあいいじゃない。まだ1ヶ月あるし!
そうだよー!
「じゃじゃっとやる」シーン、なんか妙ですね! ほんとOK♡、って感じです!
センパイそれ言っちゃうなんてー。
えろーいと言わなかっただけOKです!
結局言っちゃってるもんなー奈々パイセン。ヒドイっ。
パイセン呼ばないでください!
まあこれで11話まで見てしもうたぞ。残るは最終話だけであるぞ。
なんか食べたり飲んだりしながら残り見ません?
うむう、ポテチと味わいカルピスが欲しくなるぞよ。
誰が買いにいくのー?
それは決まっておるだろう。パシリといえば著者であるの。
ええっ、ホント?
ええい、とっととコンビニにひとっ走り行って来いやなのである!
また私たちのこと書いて小銭稼ぐんなら、おやつぐらい買ってきてほしいわよね。
著者さんをそんなパシリ扱い、なんて。
センパイ、なにか問題でも?
ううん、OK! 電波でOK!
センパイまでひどいっ。でも私、スティックようかんもほしいな♡
ひ、ひどいよ! みんなで!
さあ、とっとと行って来い!
ひいいいい!
うわー、後ろ姿で語るなー! ひいいいい!(すっかりアニメに熱中している)
というわけで、2019年3月の昼下がり、エビコーのみんなは今日も平常運転なのでした。
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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