第52話 ボイスドラマ公開後の世界
文字数 3,088文字
それで、ボイスドラマ公開でなにか変わりました? 起死回生の作戦って言ってたけど。
変わりはしない。変わるわけもない。
全く期待しなかったといえば嘘になるが、変化はほとんどないのだ。
えええっ、あんなにお金使ってそうなんですか。ひどいっ。
弱小ユーチューブチャンネルの自主制作ボイスドラマ程度で何かが変わるわけもないのだ。
起死回生には程遠い。それどころか、アクセス解析では再生回数もなかなか増えない。
「無名地獄」とはそういうことなのだ。
頑張りと成果にはなんの相関もないのだ。
どんなに頑張ろうとも、結果は約束されるものではない。
とくに「無名地獄」では、のう。
力不足で無名地獄におちるとはそういうことなのだ。
我が著者はそこからはいあがる大切なただ一度のチャンスを、自分の力不足と鬱で無にしてしもうた。
近道のように若くデビューしたからなのだ。
デビューさせてくださった方にも申し訳ないのだが、今からではどうにもならぬ。
さふなり。滑舌の限りを尽くしてあの読むだけでも困難な長台詞をばっちり演技として決めてくださっておる。
このままではドラマ「半沢直樹」の堺雅人に肉薄するレベルになってしまうぞよ。
まさに声優さんの努力、あっぱれなり。それだけでも聴く価値はあるぞよ。
趣味に走りすぎたというのも一つであろうの。鉄研という題材自身で視聴者を激しく選んでしまうからの。
そうなのだ。鉄研の他のネタでやることに意義がないからの。
プロの作家は設定を作って書いて、それが当たらなければ他の設定をまた作って書いて、なのだ。
つまり、一度作った話に執着していてはヒットにも出会えず、プロ作家として続けることもできないのだ。
遺憾ながら、我が著者は「鉄研でいず!」に入れ込み過ぎであるのだ。
わが「鉄研」がウケないとわかった時点で別の話を書くべきであるのだ。
それがウケる作家になる可能性につながる。
でも、それではわたくしたち「鉄研」のみんなとは、もういっしょにいられないのでは。
甘い! 作家としてウケて生きていくには、斯様な別れに怖気づくなどありえぬ!
キャラに、世界に執着してどうする!
そんなことでは作家としてウケる可能性は自らゼロにしているも同然ぞ!
いつまでも甘えて執着しておってはどうにもならぬのだ。
でも、ってことは、著者さんはウケることよりも、私達鉄研を選んじゃったの?
ひどくはないのだ。ワタクシは我が著者の覚悟の甘さに腹が立ってならぬのだ。
作家として生きたいのかそうでないのか、どっちかにしろというのだ。
どっちつかずでは迷惑を撒き散らすだけであるぞと。
そんな……総裁、せっかく著者さんがこれだけ、成功もなげうって、ぼくらのこと愛してくれてるのに。
もう年端も行かぬ子供ではないのだ。
ワタクシにすがり甘えるのは見苦しいというておるのだ!
でも、それはそれで、総裁の著者さんへの愛かもしれませんわね。
わたしたち鉄研よりも、作家としての成功を選べ、という。
総裁素直じゃないな―。なんでそんな意地はってるのー?
ワタクシは意地など断じて、絶対にはってはおらぬ!!
ええい、イライラするのだ。著者よ、そこになおれ! 鉄研制裁してくれる!
総裁、おちついてください。著者さんに苛立つのも程々にしないと。
でもそんなに「鉄研でいず!」ボイスドラマ、成績が悪いのですか?
これを見よ! これがボイスドラマのアクセス解析であるのだ。
初速も出なければ、そのあとの伸びもいまいちであるのだ。
これではお願いした声優さんに申し訳が立たぬ!
でも、もともとのこのゾーンもなんか低くないかなー。
前はもっと見てもらえてたようなー。
これだけたって100再生台とか、変だなー。前はすぐ200とか300とかいってたのにー。
それもワタクシは気にしておった。
突然折れるように再生回数が伸びなくなったのだ。何かが起きておるのかもしれぬ。
でも総裁。このアクセス解析はなんのためでしょう?
そもそもわたくしたちがYouTubeや鉄道研究をするのはなんのためでしょう?
もう一度それを思い返してみては?
わたくしたちは生活をかけてYouTubeをやるYouTuberでしたか?
人気がないと野垂れ死ぬしかない芸能人や人気作家でしたか?
そもそも、なぜこんな指標表示があるのでしょう?
おかしくはありませんか?
前よりも視聴回数が増えなければ、アクセス解析画面で「なぜ増えなかったかわかってますか?」と聞いてくるYouTube運営。
そもそも、なぜ視聴回数を増やす必要があるのでしょうか?
第一に、楽しい動画をもっと見てほしい、ということと、視聴回数を増やすことは本当に同じことなのでしょうか?
「なぜ増えなかったか考えておいてください」なんてなったら、本田圭佑選手の缶コーヒーじゃんけんの煽りのセリフですよね。
そもそも、なんでYouTube運営にそんな煽られ追い立てられて動画作んなきゃいけないでしょうね。
別に生活かかってるわけでもないし、生活かけられるほどYouTubeは儲けさせてもくれないのに。
御波さんとわたくしは同意見ですわ。
回数を増やせ、もっと見られるように過激なネタをやれ、なんてYouTube運営に言われる筋合いなど、まったくないのですわ。
自分が好きで楽しい動画を、好きな人と共有する。それのどこが悪いのでしょうか。
その結果再生回数も時間も伸びなくても、恥じるように思わされる理由など、一つもございませんわ。
YouTube運営が主催したイベントで、たとえばカップラーメン食べる動画なら、ただ食べるのではなく5キロ食べると結果が変わる、って運営の頼んだ講師さんが言っておった……。
なんですかそれ。そんなのただ炎上ネタになるだけじゃないですか。1年ですぐ忘れられるちょっとまえの三流SEO業者みたいなことをYouTube運営がいいよって推奨してどうするんですか!
そもそもYouTubeの母体のAlphabetはその前のGoogle時代に「邪悪になるな」っていってたじゃないですか!
それはGoogle行動規範の古い版で、いまはそれは削除されてますね。
その代わりにアップデートされた行動規範には「正しいことをしよう!」というのがありますけどね。
でも、YouTubeのカップラーメン5キロ食え、のどこが「正しいこと」なのか、さっぱりわかんない。ひどいっ。
ひどいわよね……。でもYouTubeがその気になれば、もうなんだってできるし、それに乗ってる私達の運命なんてすごく軽いわよね。
デジタル小作人ですね。本当に。代わりなどいくらでもいる、みたいな。プラットフォーマーから見ればそうですよね。
うむう。白熱してきたが、残念ながら時数制限オーバーなのだ。次の話に移動するぞよ。
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