第35話 灼熱の新宿サザンテラス

文字数 3,177文字

そしてついに8月4日。依代の著者の日程も余裕がもう物理的になくなった。
万事休すじゃないですか―!
生煮えのままJAMへビルに赤灯をつけて発送するか、それとも……。
というわけでお勤めの終わった著者をしてバスで夕方から出発するのである。8月5日。
ぎりぎりじゃないですかひどいっ!
ギリギリでも実施することにしたのだ。最終ロケハンである!
これに飛び乗って新宿を目指す。うまくいけばこの時間からのロケでも2時間以上の時間は新宿で使えるはずなのだ。
列車は新宿へ急ぐ。しかし、ボギー車は揺れるのだ。お勤め帰りの著者の体力はレッドゾーンに近づいておる。
そして新宿到着である。
すっかり真っ暗になってますわ。
しかも肌を刺すかのような猛暑の夜である。
サザンタワーの赤灯が見えた。低い位置は点灯しておらぬ。
JR病院がビルの間から見える。真っ暗である。屋上に赤灯は点いていない。
こちらからも確認。真っ暗である。
結論が出ましたわね。JR病院の屋上灯は無し。サザンタワーは高い位置の赤灯のみ点灯。4個LEDつければ完成ですわ。
またディテールも確認した。サザンタワーのロゴ看板は発光したり照らされるものではないのだ。
これも再現容易ですね。
またアンテナマストも見た。これは作らざるを得ないのだ。
特徴的ですもんね。これ。
しかし、ここでロケハンは打ち切らざるを得なくなった。小田急の信号所のフェンスの形状を間違えていたこともわかったのであるがどうにもならぬ。そして滞在してもっと取材しようにも著者の体力は灼熱の熱帯夜でガンガン削られておった!


ゆえ、帰りの列車の特急券を変更して早く帰宅することにしたのだ。

そんなんで大丈夫かな―。JAM本番が心配だなー。
大きな不安材料がまた見つかってしもうたのだ。
それでも工作は進めねばならぬ。ビルにチップLEDを植えるのに、ワタクシはこのようにプラ棒の先に一旦チップを固定してから、ビルにあけた穴に棒ごと押し込んで設置しておる。形のイモい3ミリ砲弾LEDは使いたくないのだ。
こだわりですねー。でも破損しやすくなりませんか?
それもまた不安材料となった……。
あっという間に2灯点灯化である。
はやーい!
去年すでにやっておるからのう。
そして綿棒の軸でアンテナマストも作成である。
威容を見上げるのである。
あまりの緊迫にプライバシーを掘るのも忘れてしまいますわ。
掘っちゃダメだようー!
どんどんできてきましたね!
さらに最終ロケハンで気づいた道路フェンスなどもつくりこむのだ。
こまかいなあ。ひどいっ!
こんなかんじになった。
あっ、向こうにネコがいる!
怪獣映画のようですわ。すっかり。
まってらっしゃるのですね。お利口なおとなしいネコさんですわねえ。
しかし一緒にいてくれた茶トラのネコ・ちあきはもういないのだ。
そういえばそうでしたねえ。
彼は体が衰えても、何度も自分の力で立ちあがろうとした。ぼく、まだげんきだよ、というかのように。肝臓の数値は完全にもうよくならないという数字であったのに。かれは諦めなかった。それを見るのはつらかったが、それが命の意味、尊厳なのだと思わされたのだ。
ちあきちゃんの思いもこめて、がんばらなくてはなりませんわね。
いろんな思いをもっていくのだ。JAMに。
そうですわね。そういう意味でもJAMコンベンションは、年に一度のお祭なのですわ。きっと。
ミエさんもそうやって思いを連れて行く相手がいるんですね。
はい。忙しさに忘れそうになっていましたけど、私の大事な人の思いを胸に、JAMコンベンションに行くことになりました。
今年は搬入日からですね、参加は。
ええ。いつかこうなると思っていたけれど、思いの外早くこうなってしまいました。
悔いのないJAMコンベンションにしなければなりませんね。
そうですね。
そして8月8日。搬入便出発まで4日となった。
こんな玩具を手に入れた。
スマートスピーカーじゃないですかこれ。
なかなかこれと対話するのは楽しいぞ。
もうすっかりおじいちゃんみたいになってますね。
これで84年ゴジラを見ながらさらに作り込み作業である。
これ、著者さんの弟さんの思い出の映画なんですよね。
さふなり。なぜかみなそういうものが集まってしまうのだ。
搬入する工具をこうやって整理しておった。
耐久レースのピットクルーの仕事道具みたいですね。
84年ゴジラの自衛隊レーザー車である。実に渋くてかっこいいのだ!
ワタクシの現代装甲列車AT-Zもかくありたいと思うのだ。
ここがルーツだったのですね。ステキですわ。
ええのうええのう。

鉄道模型は自由だから何をやっても良い、か。確かに自由であろう。しかし自由だから自由でいい、というもので良いのか。果たしてその鉄道模型で何がしたいのか。ただ自由だから自由に、となると、だからどうなの?ということになりかねないのではないか。

鉄道模型は自由である。しかし、それが何かを誰かに向けて表現するためのものでなければ、ちょいと虚しくはないか?と思う。まあどうやっても模型は詰まる所ごっこ遊びであり虚しいものではある。とはいえ、にもかかわらず、そこに何かを表現したいという意思があることは重要であると思うぞよ。

しかしワタクシもまだ何かを表現できておるレベルにはないので大変恐縮ではあるのだが、一つの思いを込めてそのために尽力した模型は、きっと人の心を打つのだ、と思って非力ながら頑張っておるのだ。

こんな駄文を書いたりもした。
そして戦いの終わりが近くなってきた。
迷いに迷った病院の屋上も作り込んだ。
そして8月9日。
JITBOX発送直前ですね。もうやれることはないんですか?
うむ、ビミョウに時間ができてしまったのだ。そこでミエくんが箱根登山線の旧式車の鉄コレを持っておるということで、展示台を作ることとしたのだ。風祭駅モジュールを支援する感じにしたいのだ。
実際「えれんなCAFE107」というのが作られて保存された登山電車が展示されますものね。
そこで工作用紙でサクサクと作っていくのだ。
2時間ほどでこうなった。
めちゃくちゃ速くてひどいっ!
接着剤と形状の安定を待つ間に。
これを昼餉としたのだ。
やっぱりこういう疲れたときはかつどんだねー。カツ分が疲労にしみるよねー。
そしてペーパー製の構体にサーフェイサーを吹いたのだ。
そしてエアブラシでアクリルのホワイトを吹いた。買い置きしていた缶スプレーのインシグニアホワイトが見つからなかったのだ。
そして盛大に塗装に失敗するのだ。
ひいい。どうしてこうなっちゃったんですか!
サーフェイサーとアクリルのホワイトが材質的に合わなかったらしい。もうこうなってはこれ以上塗ってもどうにもならぬ。かといってペーパー模型なので塗装を落とすこともできぬ。
どうするんですか、ここまでやって。
ワタクシがここでアドバイスを求めたとある人は「サーフェイサーを使うほうが悪い。私ならサーフェイサーなどつかわない。はじめから作り直すしかない」といっておった。
なんのアドバイスにもなってませんね。そんなことできたらそもそもアドバイスなんか求めませんよ。
まあ人を頼ってやるとこのざまであるのだ。
そこでこうしたのだ。失敗した塗装面を印刷したパターン紙でフタしたのである。
塗装しただけ時間の無駄でしたね……。
まさにそうであった……ワタクシに塗装が縁遠くなるわけである。
これで完成ですね!
展示に添える一品が増えたのだ。
そして競泳水着鉄研も残るはカオルくんだけとなったのだ。
なんでぼくなんですか。意味がわかりませんよ。
でもなんとなくそういうのわかるなあ。
そうよねえ。ひどいっ。
変な納得してないでください!
というわけで8月11日、箱詰め完了。次の日はJAMへ発送するJITBOXの出発の日であるのだ。
とうとうこの日が来るんですね。
つづくのである!
つづきます!
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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