第5話 ハートブレイクワン
文字数 3,902文字
著者の体の具合がイマイチでワタクシ、メーワクしておるのだ。
うむ、ひどいのだ……。持病が3つもあって朝・昼・晩・寝前と薬が山盛りなのだ……。
著者さんそんな年齢いってないのにそんなにボロボロなんですか。
普段から原稿うち、お勤めも基本デスクワーク、そして通勤は自動車であるからのう。どうやっても体にいいわけないのだ。
著者の家の周りはナニゲに車が多くて危ないからのう。だいたい著者、高校時代自転車通学してて、走りながらライトをつけようと発電機を蹴ってその足が車輪のスポークにハマり前輪ロック、車体ごと一回転して腕を骨折、病院に運び込まれたりしておったからのう。
その自転車通学で浮かせたバス代でを模型代と本代にしておったからのう。うっ、なぜワタクシをそんな目で見るのだツバメ君。それをやっておったのは著者であるのだ。ワタクシではないぞ。
しかし、著者もその先輩を次々と失ってきておるからのう。
恩師・山田正弘先生も亡くなっておる。高齢であったががんであった。スリムな体はヨガの賜物だったらしいのだが今思えばがんのせいだったかもしれぬ。
著者の商業からの撤退の頃であった。ずいぶん心配をかけてしもうていたらしい。
読者さんのために解説すると、山田先生ってウルトラQっていう特撮作品や中学生日記、七人の刑事といったドラマの脚本家だった方です。日本脚本家協会総代だった。海外の映画賞も受賞してます。「シオシオのパー」なんて言葉を作ったり、カネゴンやプースカの生みの親でもあるんですよ。総裁に言われて私調べました。
うむ。著者が説明しないから我々が説明に追われるのだ。しっかりせよ著者。
そうですよねえ。あと中里融司先生は今の著者ぐらいの歳で亡くなったんですよね……。
架空戦記やSFの先輩であった。推理作家協会では推理の書けない著者に「ぼくも推理書けないけど全然平気!」と声をかけてくれた優しい先生であった。著者は先生とその仲間と上野のインド料理店で宴をしたことをよく覚えておる。絨毯の上にインドのマハラジャの衣装を着ての宴で、最後に水タバコが出るという素敵な宴であった。
そのときその席の人に「ナンはソ連兵と同じでいくらでも出てきますよ! 恐ろしいですよ!」と言われたそうですね。でも著者無謀だからふつーに食べちゃって食べ過ぎに陥って轟沈しかかっていたという。ヒドイっ。
でも素敵な宴であることは変わらぬ。先生の丸い笑顔と声は素敵であったのだ。しかし、病で突然亡くなったのだ。やはりいつのまにか加齢の中で体に無理が来ておったのだろう。
同じように倒れた先輩女性SF作家もおる。素晴らしいSFを書いていたが倒れたあとの作品がすごく悲しみに満ちていて、それもまた心配であった。
あと、もっと辛い亡くなり方をした先輩がいましたね…。大河ドラマのシナリオ書いた先生も。
さふである。推理作家協会のパーティーの乾杯の音頭のとき、つらいことを漏らしていたので、あれ?と思っていたら…。あんな大先生でもつらいのだから我が著者が辛くないワケがないのだ。我が著者は軟弱なり!!
ひいい。でもそうですね……。もうひとりの先生は誹謗中傷と戦い続けていた先生でした。84年ゴジラの制作ブレーンとして活躍なさっていたのに。
84年ゴジラは本来ならシン・ゴジラと同じ路線になるはずだった。いやもっとすごい作品になったかもしれないのだ。でもそうは行かなかった……。
あの頃の映画界は火星人を出すと映画会社の重役に「火星人出すならタコ型だろ?」と言われてそれに屈するしかなかった。特撮邦画の低落が進んでいく一方であったのはやむなしであった。
スーパーXも出さないシャープな作品になるかもだったんですよね。スーパーXはそれはそれでかっこいいですけど。
あとなぜか支援戦闘機三菱F-1がゴジラに機銃攻撃して反撃されてましたね。そんなのしなきゃいいのに……。そんんな無理するより帰還して再装備したほうが良かったかも。
いろいろと惜しい作品であったが、でもそれはそれで著者は幼心に感心して観た映画であるのだ。84年ゴジラ。
ああ。その先生が亡くなった日である。我が著者は勝手に「桃砧忌」と名付けて先生に報告をしておるのだ。思いをついでがんばっております、と。なにしろ架空戦記ブームで浮かれている中、先生は戦闘シーンは書きたくないと思っていても強いられて、そこで自衛官の家の夫婦喧嘩のシーンを延々と書いたという反骨の人でもあったのだ。その思いは引き継ぐべきであろう。
物書きの死は、みんな無念であったと思うぞ。もっともっと、とならざるを得ないのも物書きであるからの。それゆえに傷つきやすいのだ。体も、心も。
つらいですよね。あれ、でもさっきからみんな全然いないけど、どうしたんだろう?
そのとき、ワイワイ言う声が部室の外から近づいてきた。
何やってるんですか総裁とツバメちゃん。二人で何話してたの?
みんなで「ケムリクサ」の最終話を見てきたのですわ。素晴らしいアニメでした。
構築したあの世界のルールをしっかり守り整合させながらカタルシスと希望に満ちたエンディング。伏線もきっちり改善した、構成にまで教科書になりそうな素晴らしさでしたね。
カオルくんがそういうのだからよほどきっちりしておったのであるな。
たぶん論理世界だったんだよ―。あの世界はきっと巨大なデータベースだったの。そしてりんたちはアプリケーションで、ケムリクサは論理コード、水はその世界全体の新陳代謝のようなアルゴリズムで保守するためのトークンなんだよ―。
うむ。華子はバカにされやすいのだが、それは人徳であって、その実熱血かつ聡明な子であるのだ。
そうのかな。あ、奈々センパイも見に行ったんですね。
そうでーす。みんなで観るために私のプロジェクターで上映したんですよー。
うっ、センパイ、そんな高いプロジェクタ、どうしたんですか?
これ、ウサミン星から持ってきたんです! ミンミンウーサミン!
デレマス、アイドルマスターシンデレラガールズの安部菜々さんの下位互換なのであろうの。
またビミョーに古いアニメネタなんですね、ひどいっ。
まあ、我々も初期はそうやってキャラ作りされておったからのう。詩音くんはアイドルマスター初代の三浦あずさ、ミエくんはその依代の好きなガールズアンドパンツァーの秋山優花里を参考にしておったらしい。カオルくんはエヴァンゲリオンの渚カヲル。
そしてツバメ君もアイドルマスターの如月千早なのだが。
でもほとんど皆キャラ造形としては原型をとどめてはおらぬからのう。千早は「ひどいっ」などと言わぬからの。
でも胸の72センチだけ引き継いじゃったんです……ヒドイっ。
そこでフと思うのだが、ワタクシと華子は何のキャラを参考に参考にしたのかわからぬのだ。
……そういえばそうですね。華子の食堂の手伝いで声の大きいのはサッカーアニメにあったネタかもと思いますけど。
ふむ。ワタクシは、どこからきて、どこにいて、どこに行くのであろうか?
あ、あはは。そうよね! それに出展する模型のチェックもしないと!
思いの外深いところにえぐりこんでしまいましたわ……。
いい物語のための優れたキャラ設計にはそういうことも必要なんじゃないかな!
キャラのそれぞれもともと持っている課題、でしょうか?
御波ちゃんが混乱するなんて。でも私も混乱しそう……ひどいっ!
ぼくにもむずかしいー! 現実と虚構が入れ子になりすぎてぐちゃぐちゃだようー!
ひいい! 『処分』ではなく『整理』です!! ケムリクサの『処分』思い出して怖くなっちゃったじゃないですか! ヒドイっ!
なにやってるんですかー、みんな楽しそうに。オンエア間に合わなかった……。
うっ、また非常識に精細な『ケムリクサ』のりなさんたちのフィギュア……。ミエさんこれ作ってたんですか?
くしゃみしたら全部吹っ飛ばしちゃって二度と出てこなくなる大きさだよねー、これー。
いつ見てもミエさんは度外れて器用なのですわ。感心いたしますわ。
うむ。そこで思うておるのだが、我々の今年の展示のテーマを決めねばならぬの。
著者も回復したからの。
というわけで、今年の展示のテーマは!
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