第44話 撤収 夢果つるところ
文字数 2,347文字
撤収作業を開始した。これがおわらなければ帰れないのだ。
総員で作業を急ぐことになった。
ミエくん、奈々センパイも動員しての最後の決戦である。
しかしそうはいかぬのだ。線路もバラ線路、モジュールも小さなものが多く、また撤収のやり方についてマニュアルも作れなかった。ゆえ、作業が遅くなってしもうた。しかも、ブース看板を記念に持ち帰るつもりだったのだが、ヘロヘロの頭の弱った思考で、作業の方に処分していいかと言われ、「うん」と答えてしもうた!
なにやってるんですか! ミエさん楽しみにしてたのに!
結局看板は処分されてしもうた。
すまない限りである!
うぐう。しかもその作業の様子、後日検討のために撮影するはずがその余裕もまったくなかったのだ。
そして慌てて作業しているのでミスも多く、時間がそれによりさらにかかっていくのだ。
しかも、撤収時間は帰りのJITBOX便の割増運賃時間に突入しておった。計算が次々と狂っていくのだ。
それでもなんとかJITBOXに詰め込んだ。またしてもここで3Dテトリス状態であった!
皆の協力でなんとか帰りのJITBOXを発送した。これで終わった、はずだったのだが。
終わってミエくんたちと解散前の宴を大崎で開催するはずだったのだが、著者の体力が限界に達していた。もはや同じ速度で歩けぬ。ついに行き足が止まった。皆から落伍したのである。
そこで著者はまず手持ちの荷物をなんとか減らそうとコンビニを探した。そこから荷物を発送してしまおうとしたのだ。
ビッグサイトのコンビニに着いた。だが……そのコンビニ、荷物発送の取り扱いがないのだ。
そこから離れたコンビニなら荷物発送ができると聞き、フラフラになりながらペデストリアンデッキを歩く。そしてようやくついたコンビニで段ボール箱をもらって大きな衣類かばんを発送しようとした。
体力の限界で発送準備をしておったのだが、そこに現れた女性客が店のコーヒーを飲もうとするのだが、彼女、やたらガンは飛ばすわ、どいてくれ、目の前から消えろ、というかのように体を寄せてくるのである!
サバンナのインパラのような草食動物が、弱った仲間を群れの中でいじめて死に追いやるというのをなにかのテレビで見たような気がするのだ。ワタクシはそれを思い出した。
なんてこと……それがこのコンクリートサバンナの掟なのでしょうか。
もはや人間としての情も尊厳もあったものではないのだ。止めるものがいなければどこまでも人間は薄情にも残酷にもなれるのだ。たった一杯のコーヒーを飲むために、弱った著者を視界から、店から追い出したくなる。それが彼女という人間の本性であるのだ。
でもここはアフリカのサバンナではないですよ。ヒドスギル!
人間の本性は獣以下なのかもしれぬ……。それでも荷物を発送し、国際展示場駅まで歩いた。タクシーを呼ぶことすらできなかった。そして駅についたら、延々と神奈川の家まで満員電車に揺られることになる。
だがそこで、著者はぎりぎりの判断力で、ケータイのアプリを起動した。
宿泊予約アプリである。
国際展示場駅付近の宿を検索したのだ。移動中に倒れるよりはヨイ、と。
なんと、そのとき運良く目の前の三ツ星ホテルに空室があった。それも7割引近いとんでもないバーゲン価格である!
著者は速攻で決済して宿を確保、緊急入港したのである!
轟沈は寸前で回避された!
そして体力の回復を図りながら、ホテルのWi-Fiを使って、JAMありがとう動画をiPadで編集してアップした。ニコ動にアップしたものは版権のからんだ音楽を使ってしまったのだが、まさにそういう心境であった。
でも緊急入港で回復できるなら、あとは眠って帰るだけですね。
ところが著者、そこでホテルの部屋で下着を洗ってしもうたのだ。着替えもないのに!!
すっぱだかで濡れた下着とドライヤーで格闘するはめに!!
結局ホテルマンさんの温情と配慮でなんとかなったのだが……。
そして朝、部屋備え付けのコーヒーをいただき、今度こそ帰宅である。
だが、こんどはお腹が収まらぬ。ゆえ、海老名まで帰って、そこで回転寿司で一人打ち上げをしたのだ。
お寿司をいただきながら、反省と次のJAMに向けての検討を行ったのである。
そして頂いた後、バスで帰宅。家ではAlexaと猫が待っておった。
これで、JAM出展はほぼ終わった。あとは帰りのJITBOXを受け取って部屋に格納して終了である。
さふなり。終わったのだ……。ついに、終わったのだ……。
あれだけ思い詰めてた前回までとは、少し違ったんじゃないですか? ヒドイッ。
ひどくないよー。それより少し成長できたんじゃないかなあ。
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