第8話 いつもの失意
文字数 3,783文字
障害者の命の価値などと言っておるのだ。あまりに愚かすぎる。そのような価値判断をしておったら、その判断はいずれ自分の命にも及ぶ。命の価値を判断し、死んだほうが幸せだと他者が判断することのとんでもない愚かさにも気づかない。そこまでナチスの支配するごとき収容所社会にこの社会を貶めたいのであろうか。呆れて話にならぬ。
だが、かつて言われたような「幸せな黄昏」など存在するわけもない。進歩でよくはならないからといって進歩を諦めれば現状維持もできずさらにヒドイことになる。
そもそも自分たちは「黄昏」で世を去れるかもしれぬ。逃げ切れるかもしれぬが、それを引き継ぐ次の世代はたまったものではない!
目的が達成できないとわかってしまったとしても、目的に向けて努力することは決して無意味ではないのだ。
それが『ねがい』『希望』であり、『すきなこと』『生きる意味』でもあるのだぞ。
だから、それを知ってでも『赤い樹』に傷つきながら立ち向かったりつの戦いに、我々も強く胸を打たれたのだ。
そのかかえてしまった『業』の深さを考えると、この程度のことではとうてい、死ぬことはできぬ。
それがまた我々と著者との『契約』であり、『誓い』であり、『運命』なのだ。