第8話 いつもの失意

文字数 3,783文字

著者が失意でも我々は出展準備、がんばるのである!
著者さんここ数日、立て続けに嫌なことがあったんですよね。
著者が自身で軟弱なのがいかん。著者が。
そうはいってもさすがにあの件はひどすぎますわ。
あの件ってどの件? ってほどひどいことが連発したもんねー。
にもかかわらず著者が悪い。
そんなー。そんなことにしてると著者さん壊れちゃうよー。
それは自業自得であるから仕方ねいのだ。
でもそれだと著者さんを依代にしてる私たちも壊れちゃいますよ。ヒドイっ。
うっ、そうであった。
「そうであった」じゃないよー。まったくもー。
まあ、斯様なことがあろうとも我が著者の価値など、某所某駅に行って自裁するための片道旅費3000円よりコンビニで買い食い300円のほうが安くて楽だなと思う程度なのだから、その深刻さもたかが知れておるのだ。
著者さんの命の値段3000円……。
もしくはこれまで何度も著者の自宅マンション8階から飛び降りようとも思うたらしいのだが、それだととてつもなくはたメーワクであるのと、辛くて体が動かず8階に行くこともできなくて寝込んでおる程度なのだ。
ひゃー。そりゃメーワク過ぎますよ。
というか電車はメーワクかかんない安楽死装置じゃないです! ヒドイっ。
今はそのまえに個人を特定できるものを全部捨ててしまう「縁切り死」などというものが流行っておるらしいぞ。
どうしてそうなっちゃったんです……。
現代ではそれだけ人々がなにかと肩身狭く生きておって、死ぬことすらも肩身が狭いように追い込まれておるからの。鉄道自殺でもふつうに「鉄道で死ぬのはやめてくれ」と数分の電車の遅れで文句をいう。鉄道でなければ死んでも知らない、目障りでなく死んでくれればなんの問題もない。そういう認識のものがヘーキで可視化されておるからの。
まともな神経持ってたらつきあいきれないよねー。
障害者にたいしても本音だと称してとんでもないことを言うものがおる。あまりの酷さにワタクシも耐え切れずその都度ブロックしておる。

障害者の命の価値などと言っておるのだ。あまりに愚かすぎる。そのような価値判断をしておったら、その判断はいずれ自分の命にも及ぶ。命の価値を判断し、死んだほうが幸せだと他者が判断することのとんでもない愚かさにも気づかない。そこまでナチスの支配するごとき収容所社会にこの社会を貶めたいのであろうか。呆れて話にならぬ。

私もそういうひどいものが可視化されすぎて、SNSでタイムラインを見ないようにしてます。見てると精神的に参っちゃうから。そこでケータイそのものの電源切って寝込んじゃうこともあります。
本音と建前というが、SNS空間では本音が称揚されすぎて、本音で誰かが傷つくことにまったく気が回らない者もおる。かと思えば些細なことでもやたらと「傷つきました」と文句をつける「繊細ヤクザ」もおる。もはや万人の万人に対する闘争の世界、ディストピアそのものであるのだ。
そんな世界なんだもの、異世界に移住したくなるのも当然ですよね。
さふなり。現実世界があまりにもヒドすぎるのだ。政治経済すべてあまりにもとんでもないことの連続で、まともな神経を持っていたら参ってしまうぞよ。そこで正気を保つべく自衛策でミュート・ブロックをせねばならぬ。そうすることでタイムラインは居心地はたしかに良くなっていくのだが、そのかわり自分の偏りについてどんどん無自覚になっていくぞよ。
「フィルタバブル」ですね。でも程度の問題でそうしないと無理ですよ。
世の中は確実に文明の発展で便利になっておる。しかしその便利さの裏返しで苛烈に、酷薄になっておるのだ。そしてこの世で生きる幸せと悲しみのバランスは時代にかかわらずおそらく一定なのであろう。
時代が進んでいくことで、すべてがよくなっていくってことは、もうないのかなあ。
それを昔、皆、無邪気に信じておったのだ。しかしそれは残念ながらおそらく「ない」のであろう。

だが、かつて言われたような「幸せな黄昏」など存在するわけもない。進歩でよくはならないからといって進歩を諦めれば現状維持もできずさらにヒドイことになる。

そもそも自分たちは「黄昏」で世を去れるかもしれぬ。逃げ切れるかもしれぬが、それを引き継ぐ次の世代はたまったものではない!

でも世の中、確実に「自分さえ良ければ」って考えが増えてますね。
そうすれば確実に自分のクビが絞まるのだが、みなじわじわと茹でられるなかで目先の損得でそういう、はなはだ浅はかな判断をせざるをえなくなっておるのだ。誰かのせいにして逃れたい、何かのせいにして逃れたい。そう思うのは仕方ないが、それでは何も解決しないばかりか、さらに状況を悪くするのだ。
EUからの英国の離脱をはじめとした分離独立派はだいたいそうだし、難民問題外国人労働者問題もそうですわねえ。そうすることでよくなるわけがないのに。EUから離脱していいことだけのはずがないし、難民や外国人労働者を劣悪な環境におくことは、普通の人々の生きる環境の基準を押し下げ、みんなそろって不幸せになることとつながってしまいますわね。
すべてがどうしようもなくつながっておるのだ。それゆえ幸せになるには、みんなで幸せになるべくそれぞれが全体の中での立場と使命を自覚しその遂行に専心するしかない。しかしその立場と使命も多くの人々は見失っておるからのう。そしてそれを見失わぬように啓発するのもまた、実に虚しい仕事であるのだ。
そうですわねえ。あまりのむなしさで胸がすっかり潰れてしまいそうですわ。
でもそれが著者さんの作家としての存在意義、使命じゃないかな!
うっ、そうかも知れぬ……しかし我が著者にそんな力はないのだ。それゆえ自分の私事で潰れようとしておるのだ。
それを支えるのがまた私たちの使命じゃないかな!

私は私に関わる人はみんな幸せになる、って信じてる!

奈々センパイの『法則』、ですな。
なんですかそれ。
奈々センパイはものすごくツキが良いのだ。ちょっと出かければ1編成しかないようなレアな電車にばんばん遭遇するのだ。ドクターイエローですらも奈々センパイを追いかけてるんじゃないかと思うほどやってくるのだ。
ホントですか。
たまたまじゃないでしょうか。ドクターイエローの検測ダイヤは殆ど決まってますから、それにちょうど合致しただけでは?
そうかと思うておったのだが、実際ともに行動すると、それどころではないのだ……。ビビるほど合致するのだ。
そんなことありますかねえ。ヒドイっ。
うむ、今年は奈々センパイと行動をともにする。それゆえ、その真価をわれわれはきっと思い知らされるであろうの。
真価……。
ともあれ奈々センパイが出展の前進基地となる宿の手配をしてくれた。ワタクシも出展申込書を間もなく発送する。著者がこんなに失意でも、今年の出展大作戦は敢然と進めていくのだ!


なんですかこれは。『ケムリクサ』のED曲のアートみたいでヒドイっ。
でもアニメ『ケムリクサ』よかったよねー。
我が著者も『ケムリクサ』にハマっておるのだ。あれはじつに佳いアニメであったからのう。
わたくしたちは最後に『水』のふんだんにある『湖』にたどり着けるのでしょうか?
わからぬ。いや、だめかも知れぬ。
そんな……。
しかし、だからこそ、『ケムリクサ』のなかで『目的』を『最初の人』が最後に消したのだ。

目的が達成できないとわかってしまったとしても、目的に向けて努力することは決して無意味ではないのだ。

それが『ねがい』『希望』であり、『すきなこと』『生きる意味』でもあるのだぞ。


だから、それを知ってでも『赤い樹』に傷つきながら立ち向かったりつの戦いに、我々も強く胸を打たれたのだ。

あれ、そういう意味だったんですね。『ケムリクサ』って、ほんとに深いですね!
ミエさんの工作、あいかわらずイイ……ヒドイっ。
この間にケムリクサカフェに行って、レンタルレイアウトでこれを走らせてきました! ぐうぜんツイッターで存じていた腕利きの方とお会いすることもできました。その方、JAMでの我々の展示にいらっしゃるそうです!
ミエくん良かったのう。SNS社会もこういういいところもあるのだ。

これで我々もますます出展に尽力せねばならないぞよ。

でも著者さんが失意で潰れたままですよ。
著者などそのへんの草でも食わせておけばよいのだ。
ヒドイっ、ヒドすぎる!
我が著者はどんなに傷ついて轟沈しても、どうせ蘇ってしまうのだ。そういう諦めの悪さだけで40年間生き続けておるからの。もはやその生き方は『業』そのもの。

そのかかえてしまった『業』の深さを考えると、この程度のことではとうてい、死ぬことはできぬ。

それがまた我々と著者との『契約』であり、『誓い』であり、『運命』なのだ。

運命☆
なんだか、わかったようなわからないような。
著者自身にもきっとそれはよくわかってはおらぬのだ。それゆえこの程度のことで失意に陥るのだ。


あいかわらず総裁、著者にキビシイなあ。
『著者と胡麻の油は絞れば絞るほどよく出る』というのだ。
ひいい! それ百姓です! しかもヒドイ江戸時代の勘定奉行のセリフです! ヒドイっ!
総裁ナチュラルに著者の扱いひどいもんなー。
うっ、こんなことで1話消費してしもうたぞ。これも著者が悪い。

仕切り直して次のエピソードへつづく、なのだ!

つづきますー。
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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