第55話 頂を越えて

文字数 2,258文字

箱根女子会の続きであるのだ。
総裁、でも今度のYouTube Liveの準備もできてないし、クローズドでやる地元の鉄道模型運転会も迫ってますよ。大丈夫なんですか?
感染者増えるなかで運転会するのはなかなか際どい判断ですよね。開催を決定しちゃったけど心配になります。
心配してもしなくても、やることはただただ感染対策の徹底しかないことはおなじであると思うぞよ。会食を伴わず、密を避け、消毒マスクの徹底をする運転会、ここまで配慮してダメなら、もう家にこもっていても同じであろう、という域まで検討と工夫を重ねたのだ。
それでもだめなときはダメだけど……。
同じダメならやることをやってダメな方がまだ納得ができると思うぞ。
そういうところまで追い詰められてしまいましたわねえ。
それはともかく、箱根女子会、電書ちゃんと雫さんをエスコートして箱根の山を登山電車などで登っていく。小田急グループの誇る箱根ゴールデンコースの半周分をトレースしたコースをゆくのだ。
行き違う登山電車の方向幕、ハロウィンになってますね。LED方向幕にもこういういいところがあるんですね。
箱根登山電車、昨年の豪雨で受けた被害を乗り越えて運転再開しておるのだ。真新しいPC枕木など、補修跡が痛々しいのだが、地域の人々が復活を願い、協力したと言うから、それはそれでアツい鉄道ドラマであるのだ。
オリンピック中止で人材資材の手配が急に容易になったのもその回復を加速したと聞きました。ひどいっ。
それはぜんぜんひどくないよー。
途中の強羅駅前でこれを所望したのだ。焼き竹輪。暖かくで実に美味だったのだが、食べたらこの皮のかけらが喉に引っかかってゲホゲホ言う羽目にっ!
ひいい! 誤解を招きますよっ! このご時世だと! ヒドイっ!
これはヒドイかも―。総裁、ちゃんとマスクはしてたんですよねー。
マスクに「これは喉のチクワです!」と書いておきたくなったぞ!
もー。なにポンコツしてるんですか―。
そうなりながらも強羅からケーブルカー、ロープウェイで頂を目指すぞ。
これがケーブルカーの山頂側の駅から見下ろしたケーブルカーであるのだ。車内は密にならぬよういろいろ工夫されておったぞ。
そういやこのケーブルカー「各停」って表示されてますね。ということは「急行」とか「快速」もあるんでしょうか。
調べたら、多客期の増発時に途中駅無停車の「直通」って種別が運転されるらしい。
そうなの。でもこのケーブルカー、途中駅があるのも面白いし、駅ナンバリングが新宿のOH01からずーっとつながってるんですね。小田原線はOH47が小田原、箱根湯本がOH51。江ノ島線はOE、多摩線はOTで別。
さふなり。OHは元箱根港のOH67まであるぞ。
芦ノ湖渡っちゃうんですね!
小田急の箱根ゴールデンコースを誇示するものでもあるのだ。
いつも使う海老名駅(OH32)や厚木駅(OH33)、本厚木駅(OH34)も箱根ゴールデンコースの途中駅ってことですね。ひどいっ。
ひどくありませんわ……。でも往年の獅子文六「箱根山」の猛烈な競合関係時代の商売敵・西武グループから見ればひどいことになるのかもしれませんわね。いまでは箱根観光の振興において協力関係にあるのですが。
これがケーブルカーの機械室内部であるのだ。きれいに使われておったぞ。
エスコートしてるのにテツな観察は怠らないですね総裁。
ロープウェイに乗って一気に大涌谷へ、山頂へ駆け上がるのだ。
うわ、高いですね! 高所恐怖症にはきついですね。
このぐいっという上昇感はまた格別であるぞよ。
すれ違うロープウェイのゴンドラであるのだ。
えばんげりおんに出てきたのよりずっとモダンで大きくて洗練されてるねー。
あれから長い年月が現実世界では過ぎておるからのう。
さらにぐいっと上昇し、稜線を越えるとこのような荒涼とした風景の大涌谷上空に出るのだ。
この場面転換が素晴らしくドラマティックですわね。
箱根ゴールデンコースは乗り物が全て遊園地のライドのように乗って楽しくドラマティックなのである!
ゴールデンコースたる所以ですね。
温泉の取水設備っていうのかな。そういうのがはるか下に望めますね。
箱根の温泉はここを源泉としておるのだ。ここから温泉街やリゾートマンションにお湯を供給しておるとのことであった。
この上を超えると、山頂の大涌谷駅ですね。
ここでロープウェイのゴンドラを乗り換えるのだ。
頭上のゴンドラを運ぶ装置がすごくメカニカルで面白いねー!
うむ、なかなか興味深かったぞ。
あれ、これはなんですか? なにかモニタリング装置みたいなものがある。
うむ、有毒ガスの警戒装置であるのだ。大涌谷は今も有毒ガスを噴出しておる危険地域であるからの。
活きた山なんですね。今も。
さふなり。
この駅の詰め所の中をチラリ拝見。
ロマンスカーカレンダーが中に貼ってありますね。
こういう生活感も興味深いのだ。
そして乗り換えスペースの窓には。
富士山だ!!
雲海から顔を覗かせる富士山、じつに神々しいですわね。ステキですわ。
富士山はほんとうに、独特な感覚を抱かせる、日本の心の中心の山であるのだ。
ここからまだ先に行くんですか?
さふなり。我らはロープウェイの終点までゆき、そこから更に先を目指すのだ。
つづきます。
***CM***
「鉄研でいず!」ボイスドラマ、2話と3話も公開中です。見てね!
第3話、連覇のワタクシがまさかの……。
わーっ、ネタバレしちゃダメ! ヒドイっ!
***CMおわり***


引き続き、チャットノベル「鉄研でいず!」もお楽しみ下さい。


では。

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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。


葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。

中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。


田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

小谷奈々 おたりなな


総裁の友人。凄腕のBトレ自動運転の模型鉄。地下アイドルをしているらしい。ウサミン星がどうとか言っていたが詳細不明。

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