第59話 正念場

文字数 866文字

 人生のうちで何度か経験する正念場。その大きな波が未来から押し寄せてくる気配がします。

 最近頻繁に書いている両親の様子。今年になって重大局面に入った。ことの起こりは父の病状の進行。外見からは分からないが、前立腺癌の数値が上がってきた。1ヶ月に1度の診察で、3回連続の上昇だ。特に今回は前回の倍。30代半ばほどの担当医は薬を変えて様子を見ようと言った。

 劇薬のため、副作用もハンパない。処方箋をもらうときに薬剤師から直々の説明を受けた。注意事項が多く、薬専用のパンフレットが用意されていた。それを見ながら、飲み方、副作用が出たときの対応、薬を止めるタイミング等々。集中して聞いていないと薬が毒になってしまう。薬剤師は真剣に聞く私の態度を思ってか、終始和やかな雰囲気を作ってくれていた。もちろん父も同席したが、自宅に戻れば記憶に残っていることは少ないだろうと感じた。

 主な副作用は血圧上昇、痙攣(けいれん)、出血、食欲不振。だが、この症状は投薬された人の0.5%と言われた。父は高血圧の薬を飲んでいる。飲まなければ上が160。それ以上、上がったことはないと言っていた。飲んでいる今は正常値だとも。薬を飲み始めて4日目

『お父さんの血圧が高すぎて測れません』

と弟嫁のAさんから電話がきた。父の状態は普通に見えるが血圧だけが異常に高いようだった。指示を仰がれた私は、とりあえず担当医に連絡を入れて指示をしてもらうよう頼んだ。今度はメールで

『今日は担当医が不在だが、別の医師に見せることになったので、今から病院に行きます』と。

その後、薬はドクターストップがかかり、血圧が下がるまで様子を見ることになり現在に至る。

 普段の食事は父が作る。だが、それもままならなくなった。弟嫁はいきなり両親の食事を作ることになった。今日で5日目。弟が『既に嫁が嫌がっている』とこぼした。勘弁してよ。まだ1週間も経っていないじゃん……私が予想している以上に、大きな波は早く来るかもしれない。

 弟嫁の気持ちも分かるつもりです。でも、私にとっては実の親。複雑な気持ちでいっぱいです。

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