第30話 初雪の日に

文字数 915文字

 私の町では、今日初雪が降りました。夜中から午前中にかけて細かい雪がサラサラ。ときには、しんしんと。スタットレスタイヤに変えていないウチの車は、ただただ雪を被るだけの1日になりました。

 ウチの車はスタットレスタイヤを履かせたことがない。雪の日は車を使わない。でも、以前怖い思いをした。家族で焼肉を食べに行ったある冬の夜。会計を済ませて店を出たら、辺りは一面の銀世界。ほんの2時間程度のうちに雪が降り積もっていた。幸い焼肉屋は交通量の多い場所にあったので、近くの道路はまだまだ車が行き交っていた。

 自宅が近づくにつれ交通量は減り、アップダウンの道に差しかかろうとしたとき、目の前に見える道路が完全な雪道に変わっていた。私は助手席にいたが、明らかにタイヤが滑っているのが分かった。夫は

「お〜、滑ってる、滑ってる」

と子どものようにはしゃぎながらのハンドル操作。その様子は、後ろに乗っている子どもたちを怖がらせないためのパフォーマンスか、それとも単純にスリルを味わっていたのか。私には判断がつかなかった。幸い子どもたちは、夫の運転をすっかり信用してるのか、いつも通り座っていた。運転の出来る私だけが、心臓バクバクな思いをした夜。

 昨夜から雪が降り始めていたこともあり、リビングがだんだん冷えてきたことが感じられた。エアコンを点けても良かったが、寝る時間までコタツだけで寒さを凌いでいた。そこへ幼馴染からLINEが。冬の花火を観に行ったと映像が送られてきた。コメントには

『寒かったけど、空気が澄んでいたから、綺麗に見えたよ。楽しんでください』

とあった。外にいるだけでも辛い寒さなのに映像を撮ったなんて……私はリビングのコタツを抜け出し寝室へ移動。暖かくしてある布団の中でイヤホンをつけ、映像を見た。そこにはクリスマスソングに合わせた赤と緑の鮮やかな花火が次から次へと開いては閉じていた。冬の花火。直に見る方が良いだろうが、なかなかどうして、臨場感もあり、綺麗に見れた。私は暖かい中で見る花火の方が好きだ。幼馴染の粋な計らいが、今年のクリスマスプレゼントになった。

 アラ還ともなると、こういうプレゼントの方が響きます。品物も悪くはないけどね。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み