第34話 帰省②

文字数 830文字

 1年ぶりに、家族全員が揃いました。一緒に暮らしていたときには感じなかった、ゆとりある優しい気持ちに包まれました。

 子どもたちは、帰省するたび律儀にも手土産を持ってくる。ほとんどがお菓子なのだが、今回は違った。少し前が夫の誕生日だったこともあり、それぞれがプレゼントを持ってきた。先に着いた上の子からは、サイクリングするときに着られるようにと、誰もが知るスポーツブランドの紺色のアウター。独身貴族とはいえ、大奮発。夫は嬉しさを抑えつつ礼を言った。

新幹線の駅から下の子のLINEがきた。

「お父さんの誕プレ買って行くから、少し遅れる」

 下の子は、上の子が誕生日プレゼントを贈っていることを知らない。ふと、そのことを知らせようかと思ったがやめた。この一瞬の迷いが後で響く。

 下の子は予定よりも1時間ほど遅れて到着した。手にはブランドの大きな紙袋が……最近気に入ってバッグなどを買っているコチラもわりと知られたブランドの袋。

「はい、お父さん。プレゼント」

 その仰々しいほどの大袋を手渡された夫は、中身を取り出して……
手にしていたのは紺色のアウター。
上の子も私も唖然。夫は驚くことなく

「うわ〜、ありがとう」

 連続の紺色アウターを前に、素直に喜んでいた……ように見えた。

 幸い私の見立てでは、同色のアウターはサイクリング用とお出掛け用に使い分けが出来そう。
それにしても、ここまで近い物を買ってくるとは…… 遺伝子の仕業?

 夫と下の子がいないときに、上の子が私に

「買う前に私のプレゼントを知らせることができたら良かったのにね」

 その機会はあった。私がスルーしたことだ。意味もなくスルーしたわけではない。言わなかったのは下の子にプレゼントのグレードを上げさせないため。親の立場のあなたならこんなとき、どちらにする?結果を聞けばもちろん言ったほうがいいのだろうけど。

 お正月は非日常。話のネタがどんどん出てきますように。
*上の子、下の子という読み辛い書き方をお許しください(謝)
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