第53話 枕話

文字数 850文字

 あ、たたたたた。寝違えました。首が思うように動かせません。

 原因は2つ。布団に潜りすぎたのか、枕が高すぎたのか。今日のは枕が濃厚。もう一般的な高さの枕は使えなくなったかも……

 今、私が使っている枕は2つ。40✖️60✖️10(㎝) と40✖️25✖️4(㎝)
一般的なのは前者。それが合わなくなった。寝る前はキチンと頭にフィットしているのだが、このところ首の寝違えが増えた。もともとは2段に重ねても眠れるほどの高い枕を使っていたのだが、あるときを境に高い枕が苦手になった。

 8年ほど前、私は腎臓癌の手術をした。発見したときは数㎝に成長し、病巣だけ取るのは再発の危険性が高くなると言われた。腎臓は1つだけでも機能する臓器だとも言われたので、丸ごと1個切除した。余談だが、保険のCMに出ている

さんの「癌だけ取って……」と言っているのを聞くたびに、なぜか胸がキュッとする。

 術後、直ぐの病室のベッドでは、過酷な体勢を強いられた。それは

『頭を動かしてはいけない』

と言うこと。枕は敷いてあったかどうか分からないほどの薄さ。とにかく決められた時間がくるまでは、仰向けのまま寝ていてくれと言われた。頭がベッドマットとほぼ水平の状態は、首に違和感もあり、目を閉じても眠りに就けず、少し記憶が無い感じで眠れたと思っても、時間は10分ほどしか進んでいなかった。そのうち、頭の中で自分の声が幻聴で聞こえて

『わ〜〜〜』

と叫び始めたときには、気が狂うとは、こういうことかもと変に冷めた感覚を持ちながら寝ていた。夕方に手術が終わってから翌朝までの一晩が長かったこと、長かったこと。闘い疲れたのか、気を失ってしまったのか、まともに寝たのは明け方近くだったと思う。

 一晩の強制的仰向け体勢を経験してから私は枕が苦手になった。一応、今でも一般的な枕も置いてはいるが、使うのはもっぱら後者のペチャンコのヤツ。もしくは使わないのが私の寝方だ。

 高い枕は首のシワの元だとか。そう聞いたら、ますます枕離れになってしまいました。
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