第46話 言ったの?

文字数 903文字

 朝からブチかまされましたよ。怒りのゴングが鳴りました。

 今朝は夫より遅く起きてリビングへ。夫はすでにコタツに入り、パソコン作業をしていた。

「おはよう」

と私が声をかける。

「…………」

おいおい無視か。

「おはよう」(私)

「聞こえなかった?(怒)」(夫)

聞こえなかったから言ったんじゃい(心の中で・怒)私はいつも夫の顔を見て『おはよう』を言う。口が動いてないやんけ。いい加減なこと言うんじゃねえ。いっこく堂のように口を動かさずに喋れるのか、おまえは。私を(ないがし)ろにする態度は今に始まったことではないが、会話のない私たちにとって『おはよう』は数えるうちの貴重なひと言だ。『おはよう』を夫からかけられたことはない(倦怠期に入ってから)

 なぜ、朝からこんなにふてぶてしい態度が出来るのか?ふと、原因を考えてみた。アレか?鏡開きのアレか?

 一月十一日のこと。鏡餅でぜんざいを作ろうと思った。もちろん夫に声をかける

「ぜんざい作るけど、食べる?」

夫はすぐさま自分専用の食品ストックを見に行った。自分で買った小豆缶があり、それを使って作るのかと思ったらしい。ふっ。そんな物に私がシラっと手を出すとでも思ったか?夫の物にはいつもお伺いを立ててから使っているではないか。積み上げてきた結婚生活でそんなミスはありえない。

「コレで作るんだけど」

これ見よがしに小豆の小袋を2つ見せた。

「今、食べないなら1人分ずつの小豆だから、私の分だけにするけど」

「食べない」

そう言ったので、私は自分の分だけ作った。しばらくして、夫が

「ぜんざいは?」

と聞いた。

「1人分だけ作ったから、無いよ。さっき言ったじゃん」

「何言っているか、分からんかった」

 私の説明の仕方が悪かったのか?やはり、食べないと言われても仏心で作っておくべきだったか。本当にこいつの気持ちを読むのは難しい。

「禅問答みたいだね」

 結婚して5年くらい経ったころ、今よりもう少し会話があったときでさえ、義姉にそう言われた。もう少しで30年になる。

 私は未だに夫の態度が読めないときがあります。裏目に出たときの私は、怒りの沸点が爆上がり。怒っても引きずらないように心がけるようにはなりましたが……
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