第32話 義母の味

文字数 945文字

 2022年。元旦。あけましておめでとうございます。良い初夢は見れたかな?
今年も私のエッセイを軽〜く読んでいただきますよう、宜しくお願い申し上げます。

 今年初のお話。何にしよう……新年の1話目と思うだけで、1年の動向が左右されるんじゃないかと妙な緊張感に襲われる。残念ながら昨日の内容のようなものは、頭に浮かんでこない。めでたい日ではあるが、いつも通り私の身の周りで。

 今はデパートのおせち料理を食べているわが家だが、子どもが中学生くらいまでは、手作りしていた。結婚当初などは、あれやこれやと品数もさることながら、実家でも食べたことのないような物をレシピを見ながら作ったものだ。味は?覚えていない。年々歳々、品数は減り、おせち料理と言うよりはオードブルと言った方がいいような適当な年もあった。

 数年前まで正月2日には、夫の兄姉(きょうだい)がそれぞれの家族を連れて夫の実家に集った。今は亡き義母の作ったおせち料理の中に忘れられない品がある。

くわいチップス

 くわいの芽を惜しげもなく切り落とし、皮剥きスライスして油で素揚げし、塩をパラパラと振りかけて完成させた一品。初めて出されたときは、何か分からなかった。噛むとほのかに甘苦くが感じられるが、気にするほどではない。ポテトチップスよりもあっさりした感じ。

 くわいは日常の物ではない。どちらかと言えば正月にしか、お目にかかれない貴重な野菜。スッと伸びた茎の先に芽が見えることから『芽出たい』と言う縁起物としておせち料理に入っているのだが…… 夫の実家は、実に現実的と言うか大胆と言うか。『美味しい』を優先。この突拍子もないレシピは、子どもたちの大好物になった。そして私が受け継いだ義母の味。

 おせち料理に関係ないが、もう一品、私が好きだった義母の味がある。それは

土筆(つくし)の卵とじ

 土筆のハカマだけ取って、頭から丸ごと使い甘辛く煮て卵でとじた物。春になると冷蔵庫に作り置きしてあって、私が行くとよく食べさせてくれた。優しい味わい。土筆の卵とじは食べるばかりでレシピを聞かなかった。優しかった義母を思い出す味。

 おせち料理は正月に台所仕事をしない為の物でもあると思うのですが、私は当たり前のように正月も台所に立っています。今年は家事がもっともっと楽になりますように。
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