第25話 本心

文字数 875文字

 昨日の続きのようなお話です。皆さま、どうぞお付き合いのほど(礼)

 昨日、危うくダイヤの婚約指輪を失くしそうになった私(詳細は1つ前の投稿文で)
結局は出てきて事なきを得たのだが、自分でも不思議なくらいの潜在意識を、短い時間で感じた。

 それは、帰り道で車を運転している(あいだ)のこと。ほぼ諦めの境地にいた私の頭の中では、夫のから指輪をもらってから現在までの印象深いシーンが蘇っていた。

 最初からサイズは左薬指には少し緩かったが、それが幸いして長く身に付けることができた。婚約中のとき、学生時代のサークル仲間と集まる機会があった。私にお祝いの言葉を面白おかしく伝えてくれた中の1人H君が「指輪を見せて」と言ったので、スルリと外して渡した。今、思えば指に付けたまま見せれば良かったものを。照れがあったんだと思う。指輪を持ったH君は、自分の左手小指に付け

「ちょうどいい。ちょうだい!」

もちろん冗談だと分かっていたが、しばらく返してくれなかったのと、安易に外した自分が指輪をオモチャのように軽く扱ったようで、ほろ苦い思い出となった。今では懐かしい話なのだが、その相手をしてくれるH君はこの世にいない。

 子供たちの成長の節目で、ダイヤの指輪はスーツにはもちろん、着物でも活躍してくれた。しばらく付ける機会が無かったが、ママ友とのランチに装飾のつもりで手にとってみたら……第2関節を通過した辺りで、抜けなくなるかも……となり、指輪は主を小指に替えた。

 そんなこんなで、最近ではファッションリングのように使っていた。決していい加減に扱っていたわけではない。アラ還の指には、イミテーションが似合わなくなってきたからだ。

 昨日の紛失がこれらの情景を思い起こさせた。そして、なぜか冷めている夫と離れていくのではないかという気持ちになり、それが悲しいと思う自分がいた。普段はどうでもいいヤツくらいの扱いなのに、私がこんな気持ちを持っていたなんて……空気だとばかり思っていた夫の存在が少しだけ格上げされた。

 コレを書いているのは奇しくも夫の誕生日。平穏無事な関係でいられますように。
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