第51話 退職

文字数 837文字

 別れの季節には少し早いですが、下の子は今月、今の会社を去ることになりました。

 あと10日ほど。離れて暮らしているので、どんな毎日を送っているのか分からない。それでも今は私が若いころと違って、LINEというお手軽通信手段があるので助かっている。先週までは、暇に任せてなのか送信があった。今週は……

 昨夜、オミクロン株の感染拡大の話を送り返信を期待した。今思えば、私より情報量があるだろうに、余計なことをしたと反省。だが、律儀なことに返信がきた。スタンプ1個。大丈夫だとひと目で分かるヤツ。それ以上はなかった。充分だ。もう退職する日まで、邪魔はしないようにしなければ。改めて、私は人の親になったのだと実感する。子どもの年齢は関係ない。

 私も転職は経験がある。最初の会社は同期がいない小さな会社。私をサポートしてくれた同僚はひと回りも歳が上だった。周りの上司はおじいちゃんに近い人ばかり。社内恋愛などというのは夢物語。そんな職場だった。今思えば、すごく守られた安心できる会社だった。でも、私は下の子のように、石の上にも三年とはいかず、縁故採用だったにもかかわらず、1年で退社。なんと(こら)え性の無いヤツ……そのときの母の気持ちを思うと、自分のことだが申し訳なく思う。

 私は就職を甘くみていた。と言うよりそもそも学生のときに就活をしなかった。恐ろしく無知なヤツだった。当時は就職氷河期でもあったため、特に女子は縁故採用が一般化していたということもあって、今のようにリクルートスーツを着ての企業回りなどが無かった。周りのみんながどんどん縁故で決まっていく。私が就職先を決めたのは、最後の方だったと思う。

 そんな意思のカケラも無い就職先で続くはずがない。私は就職して初めて自分のやりたいことを模索し始めた。そんないい加減な社会人のスタートだった。

 会社に関する失敗談は数え切れないほどあります。振り返る度、我が子たちには有難い気持ちになります。そして母には心配をかけすぎたなとも思います。

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